「日本人は投資を誤解しているよ。投資は危険、投資はギャンブル―。それは間違ってる。投資は自分でコントロールできる最高の副業なのに」

ウォール街出身の投資家で、人気YouTuberでもある高橋ダンさん(34)。ニューヨークの名門・コーネル大学を成績上位で卒業し、21歳で米投資銀大手のモルガン・スタンレーに入社、その後26歳の若さで自らヘッジファンドを立ち上げるという華々しい経歴の持ち主だ。ビジネス系YouTuberとしての人気も現在急上昇中で、チャンネル開設からわずか7カ月で登録者数18万人を突破。Twitterでも約5万人のフォロワーを持ち、最近はテレビ東京の経済番組に出演するなど活動の幅を広げている。

そんなダンさんのエネルギーの源泉は「日本を変えたい」という思い。アメリカ人の父と日本人の母を持ち、また世界を渡り歩いてきたからこそ、今の日本の状況に強烈な危機感を募らせている。

編集部は今回、そんなダンさんの1日に密着。日々のルーティーンや、投資への思い、そして自ら「大好きだ」と語る不動産について聞いた。

 

「10万より20万の方がいいじゃん」

ダンさんの1日は、日課のマーケットチェックから始まる。株式市場はもちろん、FX、金属やエネルギーなどのコモディティ、デリバティブ、個別株までチェックし、世界の主要なニュースにもざっと目を通す。ウォール街にいたころからのルーティーンだという。

自宅で日課のチャートチェック。「ヘッジファンドにいたころは、自分のポジションが常に気になって仕方ない毎日。今日は稼げたのかどうか、そればっかり考えてしまってストレスでしたね(笑)」と振り返る

そんなダンさんが投資を始めたのは、なんと12歳のころ。現在34歳にしてすでに投資歴22年ということになるが、初めての投資は父親の「ある一言」がきっかけだった。

「12歳のとき、おじいちゃんから10万円という高額のお年玉を初めてもらったんです。僕も年頃の男の子でしたから、ゲームとかそういうものに使おうかなと思ってました。でも、そこで父が言ったんです。『使う前に少し考えてみなよ。10万円より20万円のほうがいいじゃん?』って。つまり『投資しろ』ってことなんですが、そのときはやけに納得させられましたね(笑)」

父のアドバイスに従い、ダンさんはお年玉の10万円を米国債に投資した。このとき「目先のお金より、未来のお金のために投資する」ことの大切さを知ったという。

「それからはお金のことを考える機会が増えて、いつも『1円より2円のほうがいいじゃん』みたいなことばかり考えていました。当時、近所の家の芝刈りをやってお小遣いをもらっていたんですが、お駄賃の値上げ交渉をしたりしてね(笑)」

10分で7億円の損失、慢心が招いた失敗

高校卒業後、アイビーリーグ(アメリカの名門私立大学8校の総称)の一角であるコーネル大学に進学したダンさん。父から「稼ぎたいならウォール街へ行け」と教えられていたこともあり、卒業後は金融の世界へ進みたいという思いはすでに持っていた。そうした中、19歳の時のインターン先だったウォール街での経験が、その思いをさらに強くした。

「大手投資銀行のトレーディングフロアに行ったんです。初めての経験でしたが、その場に充満するものすごいエネルギーに圧倒されたのを強烈に覚えています。同時に、この場所は僕に向いている、とも思いました。立っていただけで『お前邪魔だよ、どっか行けよ!』って怒鳴られたりしたんですが、そのエネルギッシュな感じが良くて(笑)」

大学卒業後はモルガン・スタンレーに入社し、セールス部門に配属。リーマンショックの荒波に揉まれながら1年間を過ごした後、新天地を求めて同じウォール街のヘッジファンドへ身を投じ、トレーダーとなる。

その後、26歳という若さで、メンターとともに新たなヘッジファンドを立ち上げる。ファンドは最初の1~2年でいきなり成功を収め、莫大な利益を上げた。しかしダンさんが28歳になった年、投資人生最大の危機が訪れる。

「ある取引で、会社のお金を10分で7億円も失ってしまったんです。あれは僕の自信過剰が招いた失敗でした。自分で決めていたルールを守らず、周りの声にも聞く耳を持たなかった。26歳でファンドを立ち上げて成功していたから、自分を神のような存在だと勘違いしていたんでしょうね」

この事件を通じ、自信過剰にならないよう、自分をコントロールすることの大切さを学んだというダンさん。「どんな本を読むより貴重なレッスンだった」と当時を振り返る。このエピソードは、ダンさんのチャンネルでも動画として公開されており、現在15万回以上再生されている。

YouTuberとしての目標は

人気YouTuberでもあるダンさんが「デビュー」したのは今年1月のこと。現在、チャンネル開設から7カ月ほどだが、登録者数はすでに18万人を超えている。

自宅での撮影風景。撮影した動画は編集せず、そのままアップしている。タイトルやサムネイルにもこだわりはなく「とにかく質を重視している」という。YouTubeに使う時間は1日2~4時間ほどだ

ダンさんがYouTubeに投稿するのは、いわゆるビジネス系、投資系のコンテンツ。世界の最新ニュースからマーケットの影響を独自に分析・解説した動画などを日々公開、英語バージョンの動画も同時に制作している。

「YouTubeも、最初はお試しのつもりで1カ月だけやってみようと思ってたんですよ。まだ日本にきたばかりで知り合いがいなかったので、いろんな人とつながりたいと思っていました。それにはやっぱりソーシャルメディアでしょ!って。日本語の勉強にもなるし、少しだけどお金も稼げるしね」

ダンさんの投資仲間、「Zeppy投資ちゃんねる」の井村俊哉さんと

ダンさんは当初、投資・ビジネス系YouTuberプロダクション「Zeppy」に所属していた。日本に来たばかりのダンさんが直接、CEOの井村さんにメッセージを送ったのがきっかけだ。当時のことを井村さんはこう振り返る。

「たどたどしい日本語でいきなりメッセージが届いたので、最初は怪しい詐欺師か何かかと思いましたよ(笑)。でも会って話してみたらすごく面白くて。当時1500ドルくらいだった金の価格が『そのうち1万ドルになる』って持論をぶち上げてきたりして。事務所の社長としては、スターを見つけたぞって感じでしたね」

YouTuberとして活動する以上、やはり1つの目標となるのがチャンネル登録者数だろう。これについてダン氏は「理想としてはチャンネル登録者数100万人。でも、変なことをして登録者数を稼ぐようなことはしたくないです。だからいいイメージを保ったまま、登録者100万人を達成したい(笑)。これは早い内にかなえたいなと思ってますよ」と話してくれた。

日本の「クレイジーな現状」を変えたい

取材中、ダンさんがしばしば言及していたのが、「日本の金融リテラシーの低さ」だ。世界60カ国以上を遊歴した経験があるからこそ、現在の日本に強い危機感を禁じ得ないのだという。

「日本って不思議な国ですよね。1990年ぐらいから経済が成長していなくて、賃金も上がらないし、物価指数も上がらない。それなのに、投資をしている人が少ないんですよ。この前、日本の現預金が1000兆円だっていうニュースを見ましたが、これは日本のGDPの約2倍です。はっきり言ってクレイジーですよ。日本人はすごく勤勉で、よく働く。こんな状況じゃかわいそうです」

そんな日本の現状を憂うダンさん。年金に頼らず、投資で経済的な自由を手に入れる方法を、自身のYouTubeチャンネルなどを通じて多くの日本人に知ってほしいのだという。「今の状況は本当に変えないといけない。自分の未来、自分のこどもの未来のために。そういう思いは強いですね」

日本の不動産は「すごく変」

自身の動画で、たびたび「不動産が好き」だと語るダンさん。海外で不動産投資の経験も持つ。現在はすべて売却したものの、23歳の頃、アメリカのコネチカット州に物件を買ったのが最初で、その後もいくつかの国でいろいろ物件を見て回ったという。

「アメリカに買った最初の物件は、利回りが12%ぐらいでした。投資用の戸建てで、日本円にして2500万円くらい。もちろんレバレッジで(融資を使って)買いましたよ。金利は3%だったかな。日本人から見たら高いかもしれませんが、アメリカではかなり低いほうですよ」

ダンさんによると、アメリカの不動産向けローンは審査がスムーズで、1週間程度で融資が完了したという。売却時には8割ほどのキャピタルゲインが得られたという。

「不動産のいいところは、パッシブインカム(不労所得)が得られるところ。何もしなくてもお金が入ってきますからね。それに(アメリカでは)待っているだけで価値が上がっていく。でも一番いいのは、毎日時価総額をマーケットでチェックしなくてもいいところ(笑)。株の取引は波が激しいから、不動産みたいな安定した投資は魅力でしたね」

一方、日本の不動産については「すごく変だと思う」と話す。

「世界的に見たことも聞いたこともないようなルールが多い。例えば礼金。いろんな国でアパートを借りたけど、こんなの聞いたことない。今住んでいるこのアパートも、礼金が必要なら住みたくないとはっきり言いました。それから日本の不動産は価格が下がる傾向ですよね。私が今まで投資してきたアメリカやベトナム、マレーシアの不動産は、待てば上がるイメージ。だから日本の不動産はすごく不思議です」

取材の最後に、ダンさんはこれから投資を始めたいと考える初心者に向けて次のように話してくれた。

「投資について、日本にはすごく大きな誤解があると思います。あなたの人生にお金が重要なら、お金を増やしたいと思うなら、絶対に投資をするべき。毎月1万円ずつでもいいんです。25年続ければ、そのお金が1000万円になるような投資はある。投資は自分でコントロールできる最高の副業。失敗を恐れずにスタートしてほしいですね」

(楽待新聞編集部)

 

高橋ダン(たかはし・だん)
東京生まれ。10歳までのほとんどを日本で育つ。その後アメリカに移り、12歳のときに投資を始める。コーネル大学を首席グループ(magna cum laude)で卒業。ウォール街で12年間働き、投資銀行業務、取引を行う。26歳でヘッジファンドを設立し、30歳で会社を売却。その後シンガポールに移住。現在はインドネシアでの金属鉱山やベトナムでの不動産投資、シンガポールでの希土類金属取引、オーストラリアでの生分解性の環境に優しいバッグの製作など、さまざまな会社のアドバイザーを行う。2020年1月にYouTubeでの動画投稿を本格始動。納豆と筋トレをこよなく愛する。