建物のプロに実際に物件を見てもらい、物件でチェックすべき点を解説する連載企画。投資家が最低限知っておきたい建物に関する知識をわかりやすくお伝えする。

実際に物件を見学していただくのは、一級建築士の資格を持ち、「NPO法人建築Gメンの会」の理事長を務める大川照夫さん。

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大川さんが見学するのは、1979年築の木造の2階建てアパートだ。こちらの物件は、1階と2階でメゾネットタイプになっており、間取りは3Kだ。築42年ということで、旧耐震基準の物件となる。物件の劣化具合や室内の設備の状態が気になるところだが、一級建築士の大川さんはどう見るのだろうか?

外観チェック

〇建物全体

まずは建物全体を目視で確認してもらった。「建物が傾いているとか、どこかがゆがんでいるといった不具合はみつからない」という。しかし、軒天や壁の一部が剥がれているなど、劣化が気になる箇所もある。

壁の塗装が一部剥がれている

戸袋にはなぜかガムテープが貼られている。これでは雨戸を収納できないが、一体どういうことなのだろうか。 大川さんによると、雨戸を開閉せず、戸袋に収納しないままの状態が長期間続くと、戸袋内に鳥が巣を作ることがあるのだという。それを防ぐために、住人がガムテープで戸袋を塞いだのでは、ということだった。

黄色のガムテープが貼られ、戸袋の穴を塞いでいた痕跡が確認できる

○基礎

続いては、基礎の床下換気口をチェック。床下換気口は、300平方センチメートル以上のものを5メートル以内ごとに1つ設置するという基準がある。この物件では、その基準は満たしているようだった。

しかし、一部の床下換気口を見ると、大きなヒビが入っていることが確認できた。

3~4ミリ程度の大きなヒビが確認できた

○外壁

外壁の劣化状態を確認する。この物件の外壁には、鉄の波板、いわゆる「トタン」が張られている。最近の木造建物ではあまり見られないタイプの外壁だ。一部では釘が浮いて鉄板が剥がれかかっている箇所が見られた。

大川さんによると、建物の正面から風が吹いたり建物と平行に風が吹いたりした際に、鉄板が風に引っ張られて釘が浮き、それが繰り返されることで現在の状態になっているのだという。

この状態を放置していると、台風で強風が吹いた際などに外壁が一気に剥がれる恐れもある。また、建物内に水が浸み込み、雨漏りの原因となることもあるという。その他に外壁全体にサビが出ていたり、チョーキングを起こしていたりする場合も注意が必要だ。

上記のような状態が見られた場合、外壁全体を塗装するなどの対応が必要になるため、物件チェックの際は購入後に修繕費がいくらかかるかといったことも考えておきたい。

釘が抜けかけ、鉄板の一部が浮いている

○軒天

軒天の一部ではベニヤ板が剥がれ、屋根の野地板が見えている箇所も確認できた。

大川さんによると、ベニヤ板は何枚かの薄い板を張り合わせているため、雨風を受けることで仕上げ面の一番上の板から順に劣化して剥がれてくるのだという。

ベニヤ板が剥がれ、屋根の野地板がむき出しになっているのが確認できる

こうした状態をそのままにしておくと、軒天が剥がれた部分から雨水が入り込み、小屋裏内に水が溜まり雨漏りの原因になることもあるという。

○小屋裏換気口

小屋裏換気口を確認する。小屋裏換気口がないと、屋根面で熱せられた空気で小屋裏が熱くなり、湿度の変化によって木材が暴れる(変形する)。また、室内の温度も暑くなる。

これを防ぐために、対称の壁に小屋裏換気口を設けて、外気を小屋裏に取り込み換気をする必要があるという。

木製の格子奥にある穴が小屋裏換気の役目を果たしている。寒冷地では小屋裏の熱が逃げるのを防ぐため小屋裏換気口を設けずに屋根断熱として使用することもある

室内チェック

室内に入り大川さんがまず確認したのはトイレだ。

外観チェックの際に「臭突(しゅうとつ)」と呼ばれる臭気を外に排出する煙突が設置されていたのが確認できたのだが、こちらの物件では汲み取り式のトイレが使用されていた。

外に設置されていた「臭突(しゅうとつ)」

今回の物件の汲み取り式のトイレは、一定の水が便器の中に溜まると、底に設置されたフタが下がって水や排泄物が下に落ちるという仕組みになっていた。

汲み取り式トイレ

汲み取り式のトイレの場合、水洗トイレと比べて室内に臭いが上がってきやすく、衛生面でも劣ってしまう。今後の運営を考えると水洗トイレへの変更も検討したいところだが、家賃との関係も踏まえてリフォーム計画を立てたい。

○風呂場

次に確認したのは風呂場だ。一般的なユニットバスではなく、コンクリートの床にそのまま浴槽が置かれている。壁もモルタル塗りで、配管類はむき出しになっていた。

風呂場。床はコンクリートが敷き詰められ、壁にはモルタルが塗られている

浴槽の奥には、穴を塞いだような形跡があったことから、大川さんは「以前まではバランス釜の風呂が設置されていたのではないか」と推測する。

○戸袋

続いて、外観チェックの際に黄色のガムテープが貼られていた戸袋の部分だ。戸袋内を見てみると木や葉が溜まっていて、鳥の巣が作られた形跡が確認できた。

戸袋の中の様子。木くずや葉などが確認できる

野鳥などは雑菌を持っていることが多いので、まずは戸袋内を掃除して殺菌をすることも必要だという。また、戸袋が傷んだまま放置しておくと、戸袋内に雨水が溜まり雨漏りの原因になることもあるというので、傷み切る前に適切な処理をしておきたい。

○小屋裏

最後に大川さんが確認したのは小屋裏だ。小屋裏を覗くと、隣の部屋との境界である界壁が確認できた。

小屋裏で確認できた界壁。漆喰が塗られている

その他には、外壁チェックの際に確認した小屋裏換気口からは外の光が漏れていた。

妻壁側の小屋裏の様子。奥に見えるのが妻壁で小屋裏換気口からは光が漏れている

しかし、隣地との界壁がきちんと設けられているため、こちらの小屋裏換気口は、この部屋の小屋裏のみの換気口となってしまっている。

対称の壁に小屋裏換気口があるが、隣地との界壁がきちんと設けられているため、両端の区画のみ小屋裏換気ができている

また、小屋裏には断熱材が設けられていなかった。小屋裏内に断熱材や換気口がないと、屋根面が太陽光で照らされて小屋裏内に熱い空気が溜まる。そのため夏は室内でもとても暑い状態が続く。なくても違法ではないが、小屋裏にはぜひ断熱材がほしいところだ。

小屋裏内では「垂木(たるき)」や「母屋(もや)」、「小屋梁」といった屋根の骨組み(小屋組)が確認できた。

小屋裏の様子。垂木、母屋、小屋梁などが確認できる

しかし、「小屋筋交い」や「桁行筋交い」といった垂直の柱を斜めに支える柱が設置されていなかった。大川さんによると「建築当時から不足した状態で建設された可能性がある」という。

築42年と古いこともあり、軒天や戸袋、外壁などに傷みが見られた。しかし、木造の骨組み自体には致命的な傷みは見られなかった。また、基礎の床下換気口付近にはひび割れが見られたが、不同沈下による建物の傾きなどは見られなかった。

大川さんによると、この物件をさらに持たせるということであれば、上記のような傷んだ箇所が傷み切らないうちに適切な修繕をする必要があるという。

また、トイレや風呂場といった、修繕すると高額になるものについては、家賃との兼ね合いを考えて、新しいものに取り換えるか、現状のまま管理をして使用していくかなどについてしっかり計画しておきたい。

 

 

※本物件情報は一部編集しています。
※物件所有者に許可を得て撮影しています。

 (楽待新聞編集部)