住宅ローン仲介大手のアルヒ(ARUHI、東京都)と新生銀行系の信販会社アプラス(大阪府)が手掛ける投資用マンションの融資をめぐり、源泉徴収票など審査資料が改ざんされていた問題。オーナー13人が5月にローン返済を停止したことを報じたが、2カ月分の返済を延滞したオーナーに対し、アプラスが「この書面到着から5日以内に延滞分を支払わない場合、残債の一括返済を求める」と文書で通知したことが分かった。

通知が4連休直前だったこともあり、オーナーの多くは延滞分の支払いをしておらず、一括返済もできず物件は競売にかかる可能性が高い。オーナーからの相談を受けている加藤博太郎弁護士は「さまざまな金融機関の案件を担当してきたが、ここまで強硬な手段を取ってくるケースはあまりない。この問題ではすでに私の相談者だけで5人が自己破産を申し立てているが、今回の対応でさらに増える可能性がある」と指摘する。

「不正に関する調査が十分にされておらず、納得できる説明があるまで返済を停止する」と主張するオーナーらは、アプラス東京本部前で抗議デモを実施。アプラス側は一貫して「特別調査委員会の調査で役職員の不正関与は認められなかったという結果が出ており、支払いを猶予する理由はない」と説明し、両者の議論は平行線をたどっている。

■アルヒ・アプラス投資用マンションローンの不正疑惑に関する経緯
マンション融資不正、販売会社「アルヒの担当に指示された」
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アルヒ、マンション融資書類改ざん「関与はなかった」
アルヒ・アプラス不正融資疑惑、オーナー13人が返済停止

 

改ざん24件認定も「役職員の関与はなかった」

今回の問題では、主に年収200万〜300万円の若年層がアルヒ経由でアプラスから融資を受けて中古マンションを購入。融資審査の過程で、販売会社がオーナーの収入証明書を改ざんして年収を水増ししていた疑いが浮上した。オーナーの多くは実勢価格を大きく上回る金額で物件を購入しており、サブリース賃料の減額や停止などで毎月の赤字に耐え切れず、すでに一部のオーナーは自己破産を申し立てている。

アプラスは4月1日、社外弁護士を委員長とする特別調査委員会の調査結果を公表。2014年7月から2020年1月までに実行された投資用マンションローン約1万3000件のうち、収入証明書が改ざんされた案件が24件あったと認定したが、「アプラスの役職員が不正に関与した事実は認められなかった」と結論付けた。

この調査報告書に対し、オーナーらは「改ざんの主体が特定できていない段階で、役職員の関与がなかったという結論は納得できない」などと主張。5月26日、「不正問題が解決するまで返済を一時停止する」という内容の通知書をアプラス側の顧問弁護士に提出した。

オーナーによると、7月下旬にアプラス側から「この書面到着から5日以内に2カ月分の延滞金の返済がない場合、残債の一括返済を求める」という内容の文書が届いたという。

アプラスから届いた書面には、支払期限に「5日以内」の文字

オーナーら15人が本社前で抗議デモ

この対応を受け、オーナーとその家族、賛同者ら15人ほどが8月4日、東京都千代田区のアプラス東京本部前で抗議デモを実施。拡声器を使って「調査報告書でもアプラスの責任が指摘されている」「不正ありきの商品開発をしていたようにしか思えない」などと訴えた。

デモに参加した東京都の会社員飯島英人さん(仮名、30代)は2017年12月、知人から紹介されたブローカー経由で、都内にある築30年のワンルームを1590万円で購入。サブリースの保証賃料7万5000円に対し、返済と管理費が約10万円で、毎月2万5000円ほどの持ち出しが発生する試算だったが、「当時は体調不良で転職した時期で不安を感じていたこともあり、将来的に利益が得られるならと購入を決めました」と振り返る。

節約しながら毎月の持ち出しに耐えていたが、昨年8月に保証賃料の支払いがストップし、毎月10万円の返済だけがのしかかることになった。昨年11月からは別のサブリース会社に切り替わり、当初より減額された賃料が入るようになったが、月6万円程度の赤字が発生している状態だ。

飯島さんは昨年12月、知人の紹介で加藤弁護士に相談。アプラスに申込書類の開示請求をしたところ、業者に提出した課税証明書と源泉徴収票が改ざんされ、年収が246万円から546万円に水増しされていたことが明らかになった。

改ざん前後の課税証明書。246万円が546万円に水増しされている

その後、ローン返済の停止をアプラス側に通知し、5月分と6月分の支払いを延滞した。すると7月21日、アプラスの代理人弁護士から「期限の利益の喪失予告のご連絡」と題した文書が届いた。

アプラスは飯島さんに対し、「期限内に延滞金の全額が支払われない場合、期限の利益(一定期限までは債務の履行を請求されない債務者側の利益)を喪失し、一括返済を請求する」と通告。支払期限は、いわゆる本体ローンが書面到達から5日以内、諸費用ローンが書面到達から20日以内という内容で、「期限の利益喪失後は担保不動産を強制的に競売にかける手続きを進める」と記されていた。

期限内に未払金の支払いがない場合、一括返済を請求することを通知する内容

飯島さんは「この書面は7月20日月曜付で、私の手元に届いたのは21日火曜でした。23日木曜から4連休なので、5日以内という期限は26日日曜。銀行営業日を考えれば実質1日か2日で払わなければいけない状況だったので、あまりにも一方的すぎる通知に驚きました」と振り返る。