「実質30%の高利回りも可能」「初期投資金平均回収年数は3年以内が90%」といった謳い文句で宣伝されていたホステル物件投資をめぐり、一部のホステルで業者側のシミュレーションとかけ離れた多額の赤字が発生し、投資家が自己破産寸前に追い込まれていることが分かった。

 

業者の資料には「初期投資金の平均回収年数は3年以内が90%」という記載がある

宿泊単価が当初の想定を大きく下回り、稼働率も2、3割にとどまっているため、賃料の支払いやローン返済を賄えず毎月40〜50万円の赤字を垂れ流している投資家もいる。物件の「購入」ではなく「転貸」による投資のため、売却で負債を穴埋めすることもできず、さらに新型コロナウイルスも追い打ちをかけて八方ふさがりの状態だ。

このホステル投資の実態は、どのようなものなのだろうか。実際に参入した投資家に話を聞いた。

 

「実質利回り44.5%」

「すでに初期投資と運営で総額3500万円ほどの損失が発生し、毎月40~50万の赤字が膨らみ続けている状態。撤退するのにも数百万かかるので、このままでは自己破産も遠くないと思っています」

東京都の会社員・袴田俊光さん(仮名、40代)は2018年夏、「実質利回り40%の実績も」という広告に興味を持ち、ある不動産業者のセミナーに参加した。投資家が空き家や空きビルをオーナーから賃貸し、業者が必要な設備を施工することで、旅館業の営業許可を得て簡易宿所(ホステル)を運営する―という内容。「低コスト・高利回りの新しいビジネス」「五輪前で宿泊需要が高まる今がチャンス」との触れ込みだった。

セミナーの最後には、目白や四谷、神田など都心の立地で利回り38〜44%といった複数の案件の紹介があったという。「五輪前でインバウンド需要が見込めて、投資額を2年半で回収できるという高利回りビジネスに魅力を感じた」という袴田さんは後日、実際に稼働している四谷のホステルの見学会に参加。「狭いながらも洒落た内装で、外国人を中心にしっかり埋まっているなと感じて投資することを決断しました」

袴田さんが紹介物件の中から選んだのは、城東エリアの駅徒歩5分のビルの1フロア。賃料が30万円弱と紹介された中では比較的安く、利回りの高さに惹かれたという。

業者側が提示したシミュレーションを見ると、施工や諸費用などの初期投資は約2500万円。全20室の宿泊単価は平日3000円、土日祝4000円という想定で、稼働率100%の場合の月間売上が228万円という試算になっている。そこから賃料や運営委託費、経費などを差し引いた月の収益は93万円で、実質利回りは「44.5%」という内容だった。

業者側が提示したシミュレーションでは、満室稼働時の利回りが44.5%という想定になっている

袴田さんは「業者は『年間を通じて8割の稼働は固く、東京五輪を控えて外国人も増えているので9割も狙えます』と言われました」と主張する。「このシミュレーション上は、仮に稼働率が5割まで下がってもローン返済は賄える計算なので、大丈夫だろうと判断してしまいました」

最終的な工事請負金額は2400万円で、諸費用を含めた総投資額は2700万円。日本政策金融公庫から金利2%台前半・15年、2000万円の融資を引き、残りは自己資金を入れた。投資用不動産向けの融資ではなく、旅館業の許認可を得た事業性融資であったため、審査はスムーズに進んだと袴田さんは振り返る。

待っていた悪夢

無事に内装工事が完了し、その業者のグループ会社に運営を委託。昨年5月、ホステルとしての運営が始まったが、袴田さんを待っていたのは当初の想定とはかけ離れた惨状だった。

「昨年6月から12月までの稼働率はわずか20、30%台で、8〜9割という数字とは程遠いものでした。宿泊単価は想定より低い平日1000円台、土日2000円程度。月間売上は60万〜70万円ほどしかない状況だったんです」

運営委託費は売上の3割という契約だが、最低金額が設定されている(稼働当初は43万2000円)。つまり、稼働率がどれだけ低くてもその金額は毎月払い続けることになる。さらにシステム利用料10万8000円と経費15万円を差し引くと、毎月の収益はわずか数万円。この状態で賃料30万円弱とローン返済約20万円の支払いがのしかかるため、毎月40~50万円の赤字が発生することになる。

業者の月次報告書に基づいて袴田さんが作成した収支表。毎月の入金額はわずか数万円で、ここから賃料とローン返済で50万円弱が引かれる

複数の宿泊予約サイトを通じて集客するものの、周辺には競合も多く、稼働率が思うように上がらない状況が続いた。

このような中でコロナの問題が発生し、宿泊需要はさらに激減。4、5月はほぼ閉鎖状態となり、その間は売上ゼロで賃料と一部経費の支払い、ローン返済だけを続けた。「建物の完成からこれまでに800万円弱の手出しが発生しているので、最初の投資額と合わせると3500万円近い損害。貯蓄を取り崩して何とか耐えていますが、いつまで持つか…」

袴田さんは、2400万円という工事請負金額にも疑問を感じているという。見積書を見ると、申請・許認可取得、旅行サイト登録、スタッフ募集にそれぞれ100万円が計上されている。「相場を調べてみても、こんなにかかると思えず、個人的にはかなり金額が割高だと思っています」と語る。

見積書では、申請・許認可取得や旅行サイト登録、スタッフ募集などに100万円が計上されている ※クリックで拡大

今は強い後悔の念に苛まれている。

「稼働率8、9割という説明だったにもかかわらず、実際は2、3割で宿泊単価も想定より低い。もう少ししっかりと調べておけばという反省はありますが、彼らが提示したシミュレーションとは程遠く、毎月マイナスが発生していることについては、『もともとリスクが高いことが分かっていたのでは』という憤りを感じています」