2014年に永住権を得て米国に移住、現在は日米で不動産投資をおこなっている石原博光さん。

新型コロナウイルスの影響は米国の市況にもさまざまな影響があるようですが、その現状をリポートしていただきました。今回は、その中でも特に米国の生活や経済に大きな影響を与える「クレジットスコア」を解説いただいています。

米国世帯の32%が住宅支払いを遅延

こんにちは、石原博光です。

コロナ禍が続く中、米国の不動産や経済、そして私たちの生活にもさまざまな動きがあります。2回にわたって米国経済や不動産市況の現状をお伝えできればと思いますが、今回は米国の金融にも大きな影響を与える、「クレジットスコア」を中心にお話をいたしましょう。

先日、CNBCのニュースを見ていると、こんな報道が目に入りました。「コロナの影響で、米国世帯の32%が、7月初めの住宅費支払いを遅延している」というトピックです。ここでいう住宅費の支払いとは、住宅ローンや家賃を指します。

また、米国の大手信用調査機関である「Trans Union」の発表によると、6月時点でクレジットカードの支払い遅延をしている人は1500万人。住宅ローンの支払い遅延は475万人だそうです。この475万人というのは、住宅ローンを借りている人全体の約9%にあたります。

こうした支払い遅延は、米国では「クレジットスコア」に大きく影響を与えます。そして、クレジットスコアは米国民のさまざまな生活に密接に関係しています。

「支払い遅延」は3つに分類される

そんなクレジットスコアについてお話をする前に、「支払い遅延」とはどういう状態なのかをちょっと解説しますね。いわゆる「支払いが遅れる」という事象は、米国では3つに分類されます。

1つ目はGrace period(グレースピリオド、猶予期間)。期限から1~14日未満程度、支払いが遅れることを指します。支払い履歴を示すクレジットレポートには記録されませんので、この期間内に支払えば問題はありません。「誰しも、少しぐらい遅れることはあるよね」ということです。ちなみに、必ず14日までというわけではなく、会社によっては1カ月未満ということもあるようです。

2つ目はLate payment(レイトペイメント、支払い遅延)。14~60日未満程度の遅れがある状態です。1回だけの遅延、かつ次回の期限までに支払えば影響は小さいですが、複数回の遅延を繰り返すと、クレジットスコアに大きな影響を与えます。たった5ドルでもレポートには記録され、その履歴は2年間消去されません。

60日以上の遅延は、3つ目のDefaults(デフォルト、債務不履行)となります。当然クレジットスコアに大きな影響を与えます。ただし、Defaultsと扱われるのは150ドル以上の支払いが遅れている場合で、それ以下であればlate paymentの繰り返しとされる可能性があるようです(確実ではないですが)。なお、Defaultsの情報は5年間消去されません。

「スコア620以下はお断りに」、入居の判断基準にも

これまで述べてきた通り、こうした支払いの遅れは、「信用情報=クレジットスコア」に反映されます。Trans UnionやExperian、Equifaxなどの信用調査機関が有名で、こうした会社が独自の算定基準で利用者のクレジットスコアを算出しています。

クレジットスコアは住宅ローンや融資の可否や金利決定のほか、自動車保険料や、就職にまで影響します。賃貸物件を借りる時の入居審査においても、クレジットスコアは指標の1つです。実際、僕の物件でも管理会社と話し合い、「クレジットスコアが620以下の方はお断りしようか」などのように決めています。ちなみに、クレジットスコアは300から840くらいまでの幅がありますが、一般的には600前後が平均とされています。

算出されたクレジットスコア(Trans Union社より)

こんな風に、就職にまでクレジットスコアがかかわっている米国。僕も渡米した直後は、クレジットヒストリーがなかったため、米国のクレジットカードを持つことすらハードルが高かったです。ましてや住宅ローンの申し込みは、適格者となるまで3年を要するなど、信用を築くためには本当に苦労させられました。

クレジットスコアはどんな風に決まる?

クレジットスコアは、定期的に変動します。Trans Unionの場合、遅延や滞納の有無、クレジットカードの所有期間の長さ(長い方がベターです)、カードの使用量、信用履歴の照会数、クレジットカードの口座数(少ない方がベター、理想は3つとも言われています)、カードを利用できる最大信用枠の6つが公表されている算出基準です。 

基準ごとにクレジットスコアへの影響が示されている(Trans Union社より)

信用履歴の照会数というのは、住宅ローンを申し込んだり、入居審査だったり、さまざまな状況で問い合わせ(照会)された回数がカウントされていきます。1年に2~3件であれば影響も少ないようです。僕はこの仕組みを知らず、渡米した翌年、住宅ローンを引こうと片っ端から金融機関を訪ね歩いたら、10件近くの問い合わせが記録されてしまいました。「照会回数が多い=融資を断られ続けた」という不名誉なレッテルが貼られ、2年間住宅ローンが組めなくなったという苦い過去があります。

また、信用枠に対して限度いっぱいまで使ってしまうのもスコアには悪影響らしいです。理想としては、信用枠の30%以内の使用量で、かつ遅滞なく支払いをしていくのが良いそう。

よく誤解されるのですが(僕自身も最初はそう思っていたのですが)、クレジットスコアはクレジットカードだけで算出されているわけではありません。カードがなくても、利用する信用調査機関によってさまざまな方法でクレジットスコアを算出されているようです。