名古屋市中区のマンションの一室、KENJIさんのレンタルスペースのひとつ

「コロナ禍」という言葉が登場してすでに半年。新型コロナウイルスとの戦いにいまだ終わりは見えない。観光業や飲食業と比べると不動産賃貸業への影響は小さいといえるが、投資手法によっては大きな打撃を受けているものもある。観光業と直結する、宿泊業や民泊だ。

一方、貸会議室やパーティースペースといったレンタルスペース投資はどうだろうか。自粛要請によって一時は収入がゼロになった投資家もいるようだが、現在の状況は。実情を探った。

「最短で規模を拡大できた」

「レンタルスペースをやっている人は、みんな大打撃を食らっています。私のレンタルスペースでいうと、4月は休業要請があったのでそもそも収入がゼロになりました」

そう話すのは、名古屋市を拠点に複数のレンタルスペースを運営するKENJIさん。2016年に会社員の副業として不動産投資を始めて規模を拡大していった。

新型コロナウイルスによる収入減を受け、周囲ではレンタルスペース投資から撤退する人も多い。そもそも、なぜKENJIさんはこの投資を始めたのだろうか。

2018年5月にセミナーをきっかけに、転貸によるレンタルスペース運営に関心を抱いた。スペースのレイアウトから利用者とのやりとりまで運営のほとんどを自分で行うため、厳密に言えば投資というよりは事業だが、「自己資金が少ない状態でも手軽に始められることが魅力でした。上手にやれば回収スピードも早いのです」と、振り返る。

特に名古屋では当時、パーティースペースとしてのレンタルスペースはほとんどなく、ライバルの少ないニッチな市場を狙っていくことができたことも成功の一因だった。次々と運営物件を増やし、現在は13室で事業を展開している。

KENJIさんのレンタルスペース投資の方針は、他よりも狭い部屋を狙っていくことだ。駅徒歩5分以内にある20平米前後のワンルーム。普通の居住用賃貸の部屋を、4万~6万円の家賃で借りている。入居にかかる初期費用と設備代・インテリア装飾などを合わせた30万~50万円が、1部屋あたりの初期投資額だ。この金額はおおよそ1年で回収できるという。

椅子とテーブル、ホワイトボードも用意され、会議室の利用も可能だ

壁をレコードで装飾した。近所の中古レコード店で1枚100円のものを購入

レンタルスペースは1時間あたり800~2000円程度で貸し出しており、手軽に利用してもらいやすいのが特徴。少人数での会議として使用されることもあれば、パーティー、女子会やママ会などに使われることも。さらには面接、コスプレイヤーやアイドルのオフ会、ポートレート撮影、YouTube撮影などの用途もあった。

コロナ前は1部屋あたり月間100時間程度の利用があり、13室合わせて月約170万円を売り上げていた。そこから集客サイトの手数料と家賃、光熱費、インターネット費、清掃費を差し引いた額の、約50万円が手残りとなる。

コロナの大きな影響、休業で売り上げゼロも

2年たらずで13室まで拡大し、順調に事業を行っていたKENJIさん。ところが今年の春、新型コロナウイルスがもたらした影響は甚大だった。

4月は休業のため収入ゼロ。5、6月も通常の半分以下の売り上げしかなく、赤字だった。小規模事業者持続化給付金や休業協力金、家賃支援給付金を活用することでなんとか乗り越え、日本政策金融公庫の融資なども受けたという。だが、周囲では事業撤退する人が相次いでいる。

「そこそこ規模を拡大した人でも、僕の知っているだけで10人以上はこの事業から撤退しています。『もうレンタルスペースを閉めるので、テーブルや椅子をもらってほしい』と言われ、今、僕の家の中はテーブルと椅子だらけですよ」と語るほど、レンタルスペース投資も暗雲が垂れ込めていた。

「外出自粛」や「3つの密を避ける」という認識が社会に浸透してきたため、家の外での活動自体が全体的に縮小していったのだろう。

7月から見え始めた、意外な変化

KENJIさんは固定費をとにかく安く抑えることを重視してレンタルスペースを運営してきた。前述の通り4万~6万円の家賃で借りられる面積の狭い場所であるため、損益分岐点を低く設定できている。撤退していった投資家たちは、広いスペースで高い家賃を払い続けることができず、それ以上続けることはできなくなったのだが、固定費が低いため持ち堪えたのだ。

とは言え、6月も赤字を出してしまったことから、レンタルスペース運営の対応に苦慮し、今後のあり方を考えていた。ところが、7月には1部屋平均60時間、キャッシュフローは10万円の黒字に転じる。8月はさらに伸び、コロナ前に迫るほどの売り上げが戻ってきたという。

7月といえばコロナ感染者数が再び増え始めてきた時期だ。そんな状況にもかかわらず、利用者が戻ってきた理由はなんだろうか。KENJIさんは特にやり方を変えたわけではないと説明する。

だが、全室に光インターネットのWi-Fiを引いていたことが功を奏し、「リモートワーク」に最適な環境であることをそのまま謳うことができたのが、要因の1つではないかと分析する。

「飲食店ではクラスターが怖いし、人目につきます。その点、レンタルスペースなら人目にもつかず、他人のいない静かな環境で作業をすることができます。あとは、3~6名でのパーティー利用も多いですね。若年層の女性が中心で、YouTubeを映しておしゃべりしながら食事する、といった利用が大半です。人はずっと自宅に閉じこもっているわけにもいかないだろうと思っていましたが、そのとおりになりましたね」

パーティー目的なら4~6人ぐらいが最適な、小さめのスペース

7月末には大阪府で5人以上の飲み会や宴会を自粛する要請が出たように、複数人での飲食があまり歓迎される状況ではなかった。こうした状況から、飲食店では人目や感染のリスクが気になり、思う存分話し込めない。少人数でパーティーをするのに最適なレンタルスペースの存在は、そんなニーズにもマッチしたのかもしれない。

「新型コロナによって、社会にリモートワークなどの考え方が浸透してきました。必ずしもオフィスで働かなくてもいいんだ、という意識改革です。これはコロナが収まってからも、特に大企業などはリスク分散の考え方からリモートワークを推進するでしょう。場合によっては、会社の経費を使ってレンタルスペースを借りてくれるかもしれません。僕は、こういう認知が進んだということで追い風を感じています」(KENJIさん)