PHOTO : 風待人 / PIXTA

このところ、築30年前後の一棟RCマンションで利回りのよい物件が増えている、という声が投資家の間で聞かれるようになった。楽待の掲載物件でも、1都3県で利回り10%を超すようなRCを見かけることが珍しくなくなっている。

耐用年数が長いため融資期間を取りやすく、入居付けも比較的安定し、まとまったキャッシュフローが得やすいRC物件。一方で、数千万円に上ることもある大規模修繕の費用負担や、高額な解体費を踏まえた出口戦略の取り方など注意すべき点も多く、億単位の投資で失敗した場合のリスクは計り知れない。

この記事では、中古RC物件の購入時や運用時に、投資家が注意すべき点をあらためて考えていく。いま、市場に出ている築30年前後のRCは「買っていい物件」なのか? 今年に入って築30年前後のRCを2棟購入した楽待コラムニスト・地主の婿養子大家さんをはじめ、RC物件のオーナーに意見を聞いた。

バブル期に大量供給されたRC

下のグラフは、楽待に掲載された築30年の一棟SRC・RC物件の平均利回りの推移だ。2018、19年は7%台後半だったが、今年2月には8%に乗り、8月は8.3%という数字になっている。このグラフだけで一概に判断することはできないが、データ上は徐々に利回りが上昇傾向を示していることが窺える。

「築30年前後で利回りのよいRCが増えている理由。僕は2つあると考えています」

そう語るのは、総投資額30億円、家賃年収2億5000万円に上る楽待コラムニスト・地主の婿養子大家さん。1つ目の理由として、「バブル期にRC物件が大量供給されたこと」を挙げる。当時新たに建てられたRCがここにきて、売却のタイミングを迎えているという見方だ。

実際に、国交省の住宅着工統計で貸家(マンション、アパートなど)の着工件数を見ると、2019年が34万戸なのに対し、1987年から90年にかけては80万戸を超えている。この大量供給期に新築されたRCがちょうど今、築30年を過ぎるタイミングなのだ。

「当時の新築RCの多くはかなり高い価格で建てられているので、20年、30年かけてようやく元を取り、利益確定のために売りに出しているオーナーが多いのではないかと思います。供給量が多いということは築35年になっても同じような競合物件がたくさんあるわけで、市況がよくなければ必然的に価格はどんどん下がっていってしまいますから」

社宅物件の落とし穴とは

2つ目の理由については、「もともと社宅や社員寮として建てられた物件が、社内的な事情によって賃貸用で売りに出されるケースが近年増えている」という分析だ。前出の住宅着工統計では、社宅や官舎など「給与住宅」の着工件数もバブル期は今より4、5倍も多く、1991年にピークを迎えている。

地主の婿養子大家さんが4月に4億5000万円で購入したRCも社宅だった。築30年ほどで、全35室のファミリータイプ。表面利回りは9%程度だったが、賃料が相場よりかなり安く、最低でも利回りを12%まで上げられると判断して購入した。実際に6室空きの状態で購入したが、空室の賃料を2万5000円ほど上げて募集した結果、1カ月で満室を実現したという。

「今まではこういった社宅物件は業者が買い取って業者が運用するというケースが多かったんですが、近年はエンドに売る業者が出てきています。業者の融資が厳しくなり、業者から業者への転売が減ったことなどが影響しているのかもしれない。最近市場に流れている利回りのよいRCを見ていると、社宅物件がかなり多くなっているという印象です」

ただ、社宅物件を購入する際には注意すべき点も多いという。

「僕がこの物件を買った理由の1つは、ファミリータイプで学区が良かったからです。社宅で気をつけないといけないのは単身者用。そもそも供給量が多いうえに、1棟あたりの部屋数が多いので、賃貸市場に出るとエリアの需給バランスが崩壊しやすい。部屋が極端に狭かったり、3点ユニットや共同洗濯場など設備的に問題があったりする物件も多く、利回りにつられて買ってしまうと非常に危険です」

地主の婿養子大家さんによると、4月に購入した物件と同じエリアで、さらに駅近で70室ほどの単身者用社宅物件が1年ほど前に売りに出た。ただ、購入した業者はかなり安い賃料で募集しているものの、いまだ満室になっておらず苦しんでいるという。

利回りが上がっている理由

タイミング的に多くのRCが市場に出回る時期であることが分かってきたが、ここにきて利回りが上がっている理由についても考えてみたい。

地主の婿養子大家さんは「築30年のRCなら残存耐用年数17年なので、以前はある程度長めの融資も引けたんですが、融資情勢が厳しい今は25年以上の融資を引ける投資家は多くない。業者も以前ほど積極的に仕入れていませんし、ロットの張るRCはコロナの影響で中国資本が入らなくなったことも影響している。さまざまな要因で買い手が絞られた結果、徐々に価格が下がっているのが現状だと思います」とみている。

静岡県で一棟物件を中心に投資している白川幸治さん(仮名・50代)は「30年ほど前に40、50歳ぐらいでRCを新築した人が、70、80歳あたりで相続時期を迎えたものの、相続人が大家業に興味がなく売りに出しているケースも多いのではないでしょうか」と指摘。「そういう物件は管理もそれほど行き届かず空室が多いので価格が安くなるし、売主も相場が分かっていないから安く買いやすい面がある」と語る。

実際に白川さんは今年6月、地元で築28年のRCを3400万、表面利回り16%で購入した。「16戸中8室空きで、地主から相続した奥さんと息子さんが売りに出していた物件でした。積算が4400万だったのでオーバーローンを引くことができ、エリアが良かったので家賃を上げても埋まりました。土地が広いので、20年後ぐらいに解体して区画分譲で売れたらと考えています」 

別の理由を挙げる声もある。神奈川県の福丸正巳さん(仮名・50代)は「8月に水害リスク情報の重要事項説明が義務化されたことで、その少し前から江東5区のような水害エリアのRCが安く売りに出ている印象があります。そういった物件は価格を下げてもなかなか売れないケースも多いようで、思いきって積算以下まで指値をして12%ぐらいで買っている知人もいますよ」と明かした。