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コロナ禍で多くの観光地が壊滅的な状況となっている。

観光庁が8月31日に発表した観光統計によると、7月の延べ宿泊者数は2258万人、前年同月比マイナス56.4%となった。また外国人の延べ宿泊者数は32万人、前年同月比ではマイナス97%と、インバウンド需要も回復の傾向が見られない。

ところが、こうした先行き不透明な状況下でも、ホテルの開発工事が着々と進んでいる場所があるという。世界的なスキーリゾート地として知られ、ここ数年、海外から投資マネーを引き寄せてきたニセコだ。

コロナ禍にあって、なぜニセコの開発は止まらないのか。その理由を、金融コンサルタントの高橋克英氏に考察してもらった。

コロナショック、ニセコも例外ではない

国税庁が2020年7月に発表した路線価(2020年1月1日時点)によると、全国約32万地点の標準宅地における上昇率で、ニセコは6年連続で全国1位となった。

全国の平均上昇率が1.6%であるのに対し、ニセコリゾートの中心地である「ひらふ坂」(倶知安町山田)の上昇率はなんと50%。1平方メートルあたりの評価額も72万円と、2014年の評価額5万円から14.4倍に跳ね上がっている。


ニセコは北海道の南西に位置し、札幌からは約100キロメートルほどの場所にある

ニセコは、今や世界的なスキーリゾートだ。パウダースノーを求めて「外国人による外国人のための楽園」ができている。5つ星ホテルの「パークハイアット」があるのは、日本では東京と京都、そしてニセコだけ。さらに「ザ・リッツ・カールトン」が今年12月にはニセコに開業するほか、同じく高級ホテルチェーン「アマン」の建設も進行中。アマンのホテルに併設される戸建て別荘は20億円で予約販売中だ。

こうした高級ホテルやコンドミニアムの開発に加え、高速道路の開通、さらには2030年の北海道新幹線の新駅開業も控えている。2度目の札幌冬季オリンピックの開催が決まれば、アルペン競技の会場となる予定であり、ニセコの未来はこの先も輝いている…はずだった。

足元ではコロナ禍が続いており、観光・レジャー産業を中心に実体経済は大打撃を受けている。ニセコも例外ではない。日本政府観光局によると、7月のインバウンド(訪日外国人数)は3800人と、前年同月比99.9%の落ち込みが4カ月続いている。

コロナ禍でも不動産投資は継続

しかし、コロナ禍に関わらず、ニセコでは先述した最高級ホテルの建設や公共事業は継続、そればかりか、中国や韓国資本による新たな開発計画も明らかになっている。また、国内外の富裕層による億円単位の不動産投資も引き続き活発だという。

例えば、韓国の財閥である「ハンファグループ」による100室規模となる高級コンドミニアムの建設計画が始動していたり(2020年5月30日、北海道新聞)、中国系不動産開発会社が総投資額100億円を超える大型リゾートの開発を計画している(2020年8月5日、北海道新聞)という。

ニセコに拠点を持つ不動産会社によれば、「リーマンショックの時と違い、今年3月以降のコロナ禍でも投げ売りは無論、売却の動きもほとんどみられない。逆に華僑など海外投資家からはコンスタントに新規の不動産取得への問い合わせが続いており、他社でも成約がいくつかあるようだ」という。

国内の投資家からの問い合わせも増加している。「4、5月は営業自粛や外出自粛の影響もあり、ほとんど動きはなかった。しかし緊急事態宣言が解除された6月以降は首都圏の富裕層からの問い合わせも増え、7月以降は実際に現地にてアテンドすることも増えてきている」という。

なぜニセコだけ活発なのか、3つの理由

なぜ、ニセコではコロナ禍でも不動産投資が継続しているのだろうか。理由としては、「外資系大手や公共事業の計画」「世界的な金融緩和」「海外富裕層とホテルコンドミニアムの存在」3つが挙げられるだろう。

1.「外資系大手や公共事業の計画」
冒頭に述べた通り、ザ・リッツ・カールトンやアマンの建設が進んでいるほか、2027年には高速道路が開通しニセコにICができる予定もある。さらに2030年には、北海道新幹線の新駅がニセコに誕生することも決まっている。札幌や東京からのアクセスの大幅な改善が見込まれているのである。

こうした大手外資系企業や公共事業が、コロナ禍でも開発や建設を継続しているため、地元や中小の事業者などにとっては安心材料となり、コロナ禍でも営業や投資活動を行うことができているのだろう。

2.「世界的な金融緩和」
コロナショックにより、日本だけでなく米国、欧州の政府と中央銀行が史上最大規模の金融緩和策と財政出動策をとっている。この結果、今まで以上に株式や不動産市場などにマネーが流れることになる。実際、コロナ禍で実体経済が苦戦するなか、日米の株式市場は堅調であり、今年8月末の世界の株式時価総額は約9400兆円強と過去最高を更新している。

3.「海外富裕層とホテルコンドミニアムの存在」
金融緩和の恩恵を最も受けるのは、すでに十分な資産を持ち、それを元手に投資や開発を行うことができる国内外の事業者や富裕層である。

ニセコの場合、その投資対象となるのが高級コンドミニアム(ホテルコンドミニアム)だ。ホテルコンドミニアムは分譲マンションのように部屋ごとに販売され、不動産開発会社または不動産仲介会社から、一部屋の所有権を購入しオーナーとなる。

その際、別途管理契約を結び、一般客にホテルのように貸し出し、経費を差し引いた宿泊料金をインカムゲインとして得ることができる仕組みだ。日本において、ニセコ以外では京都や沖縄の一部などにしかないものの、海外の高級リゾート物件投資では一般的な仕組みとされる。

ニセコの場合、インカムゲインはコロナ禍前でも実質1~3%程度。オーナー自身が利用できるメリットはあるものの、それほど魅力があるようには思えない。それもそのはず、投資家が狙っているのは、インカムゲインではなくキャピタルゲインなのだ。

ニセコの地価は6年連続で上昇率が全国1位。過去5年間で10倍以上に跳ね上がった不動産も少なくない。デフレ下の日本の不動産市場において、ニセコほどキャピタルゲインが期待できるエリアはそうそうないということなのだろう。

海外富裕層により好循環が続く

ニセコは他の国内リゾートとは違い、海外観光客ではなく海外投資家つまり、海外富裕層を惹きつけてきた。そのため、コロナ禍でインバウンド需要が激減しても活気を失っていない。ニセコに不動産を所有する富裕層の多くは耐久力があり、長期・安定保有が目的であるため、売り急ぐこともない。

北海道の雪はパウダースノーと呼ばれ、良質な雪を求めるスキーヤー・スノーボーダーから人気が高い。彼らがニセコに集まり楽しむことで良質なホテルコンドミニアムなどが供給され、それによってブランド化が進み資産価値が上昇、さらなる開発投資が行われる、という、投資が投資を呼ぶ好循環が続いている。コロナ禍はヒトの流れを止めることができても、マネーの流れを止めることはできないということだ。

在宅勤務やテレワークの普及により、国内の富裕層や高所得者が伊豆や箱根、軽井沢や房総、那須といったリゾート地の不動産を取得する動きもある。国内投資家だけでなく、キャピタルゲイン狙いの海外の富裕層や投資家からの動きがメインなのが、他の国内リゾート地とは違うニセコの強みの1つといえよう。

特に華僑などアジアの富裕層にすれば、香港の政情不安もあり、分散投資の一環として円建て資産を持つ意義は増してきている。彼らにとって過去の取引実績も豊富なニセコの不動産はリターンもいいことから、円建て不動産投資における一番手の候補になるはずだ。

不動産投資ローンがない世界でも

ニセコでは、アジアの富裕層に交じって日本人富裕層も増しており、物件によっては日本人が半数を占めるコンドミニアムも出てきている。

しかしながら、邦銀からいわゆる不動産投資ローンが供給されることはない。なぜならニセコの高級コンドミニアムや別荘は割高過ぎて、積算法ではもちろん、収益還元法でも行内規定上貸出ができないのだ。それだけプレミアムが付いており、だからこそ将来的にキャピタルゲインも狙えるとも言えるのだが。

銀行からみれば、実体以上の価格評価がされており、プレミアム分が大きく下落するリスクがあるという判断となる。かつてバブル崩壊により、ニセコも含め日本中のリゾート地が不良債権となり、多くの銀行が業績不振となって破綻した苦い過去の経験と反省があるためだが、せっかく目の前に大きなニーズがあるのに杓子定規な対応では至極もったいないと思う次第だ。

ニセコでは、ホテル従業員や工事作業員などの増加を見込んだアパート建設や宅地需要もあるものの、日本有数の豪雪地帯における特殊性(除雪費用や駐車場確保、耐雪設計)や、賃貸アパートにおいてもプレミアムが付いている場合が多い。かつ足元ではインバウンドがゼロに近い状態で、こうした従業員向けの需要が不透明である。したがってこちらも事実上、邦銀によるローン供給はほとんどなく、投資妙味もないとみられる。

このように、ニセコにおける海外富裕層による不動産投資が活況だからといって、国内の不動産投資家が直ちに参入できる市場ではなさそうだ。しかし、コロナ禍下、なぜニセコには海外から投資が集まるのか、そのからくりを知ることが、何らかの投資の参考になれば幸いだ。

(高橋克英)

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