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新型コロナウイルスによる景気悪化やテレワーク普及により、オフィスビルや商業ビルの需要が減りつつある。富士通グループは、2022年までにオフィス面積を半減することを公表。飲食店情報サイトを運営する「ぐるなび」も、2021年に本社のオフィス面積を4割減らす見通しだという。

オフィスの賃貸仲介を行う「株式会社三鬼商事」の調査によると、8月の都心ビル平均空室率は3.07%で、6カ月連続の上昇となった。空室率が3%台に乗るのは2018年2月以来だ。

所有するビルで空室が増え、収益悪化に苦しむ投資家もいる一方、一部のビルでは逆に新規入居や問合せが増えるケースも見られる。テレワーク普及などを背景に「オフィス不要論」も囁かれる中、空室が少ないのはどのような物件なのだろうか。ビルを持つ投資家に聞いた。

空室率上昇で「5年半ぶり」に賃料下落

2019年8月以降の、平均空室率の推移。今年2月以降、平均空室率は上昇傾向にあり、8月には2年半ぶりの3%台を記録した

今年8月の株式会社三鬼商事の調査によると、都心5区の平均空室率は3.07%となった。調査対象となっているのは「基準階面積」100坪以上の大型ビル。都心では3月以降空室率の上昇が続いていたが、3%台を記録するのは2年半ぶりとなる。

[基準階面積]
ビルの中で最もスタンダードな階(基準階)の面積のこと。例えば7階建てのビルの場合、3~5階あたりの1フロアの賃貸借面積が基準階面積とされる。

一般的に、都心では空室率3%程度が需給均衡状態とされており、3%を超えると平均賃料が下落し始めると言われている。実際に、都心における坪ごとの平均賃料は7月まで上昇傾向にあったが、8月の調査では下落に転じ、2.2万円となった。

都心における、坪ごとの平均賃料の推移。2014年1月以降は上昇傾向が続いていたが、8月は下落に転じた

平均賃料に下落傾向が見られるのは2014年1月以来で、5年半ぶり。空室率が上昇し続けていることから、平均賃料もこのまま下落し続ける可能性がありそうだ。

オフィス需要は「玉突き現象」の傾向

オフィスの平均空室率は上昇傾向にあるが、中には新規入居の問合せが増えている物件もあるようだ。

「大規模ビルのテナントは中規模ビルへと移り、中規模ビルから小規模ビルへと移る。オフィスビルには今、『玉突き』状態の傾向が見られ始めています」

このように話すのは、都内オフィスビルの賃貸仲介を行う「株式会社オービーエル」代表の金子広行氏だ。緊急事態宣言発令前は増床やオフィス拡張の問合せが多かったものの、緊急事態宣言以降需要が反転。「床面積を小さくして、賃料負担の少ないオフィスに移転したい」という問合せが増えたと話す。

現在のところ、移転する企業は大企業よりも、50~200坪前後のオフィスを構える非上場の中小企業が多い。このような企業は、50~100坪のオフィスに移転して契約面積を半分近く減らすことが多いという。

テナントの要望として多いのは「売り上げ減少によるコストカット」と「テレワーク導入によるオフィスの小型化」。例えば、150~200坪のオフィスを東京駅前に構える場合、坪単価は少なくとも3万円ほどになることが多い。そのようなテナントからすると、茅場町や人形町など、多少駅のステータスを落としても、坪単価2万円前後で借りられるオフィスは割安に感じられるため、人気が集まってきているようだ。

投資家の持つオフィスにも変化が

実際に、投資家の所有する物件にも、床面積の大きいオフィスからテナントが移転してくるケースが見られている。

都内在住の川崎良一さん(仮名)は、杉並区の駅徒歩圏内に5000万円のオフィスビルを所有している。全4室の1室を5万円で貸していたが、1月にテナントが退去。6月から「事業縮小により賃料負担を軽くしたい」というコンサルティング会社が入居することになった。

もともと相場よりも賃料が安かったため、今回は6万円で募集をかけたという川崎さん。それにも関わらずテナント付けができたのは、敷金を60万円(10カ月分)から12万円(2カ月分)に下げたことが大きいのではと予測する。

「私の物件は20坪前後。小規模ですが、駅から近い割に借りやすいことが武器になります。だから、初期費用を抑えれば賃料を上げても勝負できるのではと思ったんです。どんなテナントが入居するか、ターゲットを整理した上で空室対策を取ることがポイントではないでしょうか」(川崎さん)

商業系も退去相次ぎ「空室率5割に」

一方、商業系のテナントでは売り上げ減少により退去が相次いでいるケースも多い。

「コロナショック以降、空室率が5割まで上がりました」

このように話すのは、茨城県内に1億円のビルを所有する、投資家の大島正道さん(仮名)。全15室のうち、コロナショック以前から5室が空室。入居しているテナントは飲食店がメインだったという。

さらに7月、テナントの業績が悪化し、退去が発生。3件が立て続けに空室となった。要因は外出自粛の影響と、周辺繁華街でのクラスター発生による風評被害ではないかと大島さんは予測する。3室が退去したことで、空室率は約5割まで上昇。この物件はたまたま返済比率が低かったため持ち出しは発生していないものの、退去があった7月以降、空室率は5割のままだという。