2001年、浦和・大宮・与野の3市が合併し、埼玉県に「さいたま市」が誕生しました。このさいたま市のうち旧浦和市に当たるエリアには、「浦和」と名のつく駅が8つもあります。

駅名は似ていますが、それぞれの駅は歴史もバラバラで、特徴も異なります。そこで今回は「浦和」の名がつく駅周辺のまちの様子を紹介し、どの「浦和」が投資対象としてアリなまちなのかを考えていきたいと思います。

中心的存在はやはり「浦和駅」

まず、「浦和」と名前のつく8つの駅を整理しておきましょう。8つの駅は、さいたま市内を走る7つの路線に分散して存在しています。開業年順で並べると以下の通りです。

1. 浦和駅(1883年/JR宇都宮・高崎線、JR京浜東北線)
2. 北浦和駅(1936年/JR京浜東北線)
3. 南浦和駅(1961年開業/JR京浜東北線、JR武蔵野線)
4. 西浦和駅(1973年開業/JR武蔵野線)
5. 東浦和駅(1973年開業/JR武蔵野線)
6. 武蔵浦和駅(1985年開業/JR埼京線、JR武蔵野線)
7. 中浦和駅(1985年開業/JR埼京線)
8. 浦和美園駅(2001年開業/埼玉高速鉄道線)

8駅ともに東京方面への列車が通っています。ただし、JR武蔵野線は千葉県方面を大きく迂回して東京へ直通するため、東京へのアクセス列車としては実用的とは言えないでしょう。また、浦和美園駅のある埼玉高速鉄道は、運賃が高額で都心まで時間もかかります。

8つの浦和の位置関係

東京都心へのアクセスでは、運行本数の多い京浜東北線、また赤羽駅で乗り換えることで都心各地へ向かうことができるJR埼京線の利便性が高いと言えます。

それらの沿線駅の中でも特に便利なのが、浦和駅です。JR京浜東北線に加えてJR宇都宮・高崎線、JR湘南新宿ラインが停車し、JR山手線の東側と西側双方に行くことができます。

浦和エリアで最も栄えているのも、この浦和駅周辺のまちです。このまちは明治時代から栄え始めました。その要因はなんといっても県庁が置かれたことにあります。

埼玉県庁舎(PHOTO:げら/PIXTA)

浦和駅西口から埼玉県庁へ向かう道の様子(著者撮影)

当時の浦和駅周辺は小さい宿場町だったこともあり、埼玉北部の熊谷に県庁移転をするという議論も何度かありました。しかしその間、浦和には県庁の他に県の重要施設が次々と建設され、浦和は県庁所在地としての立場を確固たるものとしていきます。そして関東大震災が起こると、台地上にある浦和のまちは好適な住宅地とされ、東京から移転してくる人が徐々に増えていきました。

一方で、鉄道の利便性という点では少し難もありました。1883年には東北本線(現在のJR宇都宮線・高崎線)の浦和駅が開設されましたが、運行本数が少なかったのです。

その後人口増加に伴い、より高頻度で運行する都市内電車の京浜線(現在のJR京浜東北線)が、1932年に赤羽~大宮間で延伸され、浦和駅を通るようになります。これにより、浦和駅周辺から東京への利便性は格段に向上し、人口が大幅に増加していきました。1934年には47都道府県の県庁所在地としては最も遅く「市」となりました。

ところで、この時期の浦和には文化人も多く移り住みました。特に画家が多かったことから、文学者が多く住んでいた鎌倉市と並べて「鎌倉文士と浦和画家」という言葉も生まれました。浦和の中心市街地を見るとあまりそういった雰囲気はありませんが、少し中心市街地を離れた中浦和駅近くの別所沼のあたりを歩くと、雰囲気だけでも画家が親しんだ風景を感じとれるかもしれません。

中浦和駅近くの別所沼公園。この近くに多くの画家が住んだという(著者撮影)

浦和8駅、続々誕生

先述した京浜線の延伸後、1936年には北浦和駅が、1961年には南浦和駅が開業し、それぞれの駅周辺も大いに発展していきます。

そして1973年にはJR武蔵野線が開通、これにより西浦和駅と東浦和駅が開業しました。さらに1985年のJR埼京線開通で武蔵浦和駅と中浦和駅が開業、2001年の埼玉高速鉄道線開通で浦和美園駅が開業します。このように鉄道網の発達とともに「浦和」のつく駅は増えていき、市街地が広がっていきました。

8つの駅の中では最も新しい浦和美園駅(PHOTO:工場長/PIXTA)

それでも地域の中心は浦和駅周辺から変わらず、現在も大型商業施設を中心とした集積が見られます。

浦和駅西口には、市街地再開発で1981年に生まれた「浦和CORSO」と「伊勢丹浦和店」が、東口にも再開発で生まれたビルに入居する「浦和PARCO」があり、東西は自由通路で結ばれ行き来もしやすいです。また、百貨店やファッションビルの他にも駅構内に「アトレ浦和」が、また浦和CORSOの北側に総合スーパーのイトーヨーカドーがあり、生活で使うにも便利な店は多くあります。

浦和駅東口の再開発で誕生した、公共施設と複合商業施設となっている「浦和パルコ」

住宅地としても浦和駅周辺はとてもよい場所です。浦和駅西側の台地上に広がる住宅街は一軒家が中心で、埼玉県庁に近い岸町や常盤といった場所の一部は利便性や住宅地としての質がいいこともあり、高級住宅街にもなっています。

浦和駅西側の住宅地(著者撮影)

浦和以外のオススメ駅は?

では、浦和駅周辺以外の7つの「浦和」の中でほかにいいところはどこでしょうか。これは東京都心からのアクセスのよさで見るか、駅周辺の充実度で見るかによって大きく異なります。

アクセスの良さなら「武蔵浦和」「南浦和」
まず、東京都心からのアクセスのよさでは、武蔵浦和駅と南浦和駅が有利と言えます。武蔵浦和駅はJR埼京線の全ての電車が停車するうえに、池袋・新宿方面から武蔵浦和駅で折り返す電車も多く、武蔵浦和駅が始発駅となる池袋・新宿方面行き電車も多く発着します。

蔵浦和駅周辺は再開発で高層マンションが多く、大型店も立地する(著者撮影)

また、南浦和駅も武蔵浦和駅と同じく東京方面から来た電車の一部が折り返す駅で、JR京浜東北線では南浦和駅始発の東京方面行き電車が多く設定されています。

南浦和駅東側の様子(著者撮影)

駅周辺の環境なら「北浦和」「武蔵浦和」
では、駅周辺の環境ではどうでしょうか。単身者向けであれば北浦和駅周辺、ファミリー向けであれば武蔵浦和駅周辺が有利です。

北浦和駅周辺は飲食店が多いほか、東口にコンパクトに商店街が形成されており、日常の買い物は大抵そこで完結してしまいます。また、バスターミナルに隣接して高級スーパーのクイーンズ伊勢丹があり、大型スーパーとしては西側にイオン北浦和店があります。

北浦和駅東口の商店街。駅前と駅東側を南北に通る中山道沿いに広がる(著者撮影)

少し足を伸ばすにしても、浦和駅周辺を南端とする台地が北浦和駅方向に延びており、北浦和駅周辺から浦和駅まで自転車で容易にアクセス可能です。台地は一般に地盤が良好とされ、防災の面でも1つの安心材料となります。

北浦和駅と同じように駅周辺で買い物が完結するのは、武蔵浦和駅周辺です。こちらは高架下に専門店街の「武蔵浦和マーレー」があるほか、大型店が駅周辺にいくつか立地しています。また、駅周辺は再開発で誕生した高層マンションが多く、マンションの下層階に商業施設が多くあります。そのため、特にファミリー層にはおすすめできるエリアです。

しかしながら、これらの駅にはそれぞれ不利なポイントもあります。

まず武蔵浦和は、アクセスの良さと駅周辺の環境がどちらも揃っていますが、ここは台地の下にあたります。そのため、水害など防災の面で浦和や北浦和と比較すると不利です。また、沿線の1つであるJR埼京線は、一般に混雑路線であるとか、痴漢が多いといったイメージがあるので、その点から避けられる可能性もあります。

南浦和駅は東京方面へのアクセス性はよく、駅周辺にはスーパーがあり大型店としては地場百貨店の「丸広」がありますが、駅周辺の飲食店の集積が弱く、また武蔵浦和と同じく台地の下にあたります。

北浦和駅の場合、東京方面から見た場合に手前に当たる南浦和駅での折り返し電車が多いため、アクセス性に少し難があります。また大型店の集積もやや弱いと言えます。ただしアクセス性が不利な分、南浦和や武蔵浦和に比べて注目されづらい点はお得な物件を探す上では有利ではありますが、知名度で不利な部分も出てきてしまうかもしれません。

同じ「浦和」の付く駅でも大きく駅周辺の状況が異なります。もちろん一番のおすすめは「浦和」駅周辺ではありますが、物件取得価格が高くなるとなかなか投資額の回収も大変です。そこで一長一短な面はありますが、「北浦和」、「南浦和」、「武蔵浦和」も選択肢に入れてみると案外お得な物件があるかもしれません。

(鳴海侑)