アパートやマンション「以外」の物件オーナーを楽待スタッフが直撃し、投資額や収支などを調査するこの企画。
今回取り上げるのは、「ラブホテル投資」。主にカップルなどに向け、休憩や宿泊のための部屋を提供するビジネスだ。コロナの影響が続く中、ラブホテルの経営状況はどうなっているのだろうか? そして気になる収支は? 記事と動画で紹介する。
5つのラブホテルを経営するオーナーを直撃!
取材したのは、千葉県千葉市にあるこちらのホテル。この物件を含め、市内に5つのラブホテルを所有・経営するグループのオーナー、トミタさんに話を聞いた。

今回取材したホテルの外観。すぐ目の前には蘇我インターチェンジがある。この建物の後ろには、トミタさんのグループが経営する別のラブホテルも建っている
大きな通り沿いに建つこのホテル。すぐそばには、京葉道路の「蘇我インターチェンジ」がある。今から18年ほど前、ここにインターチェンジが作られることが決まった際に、トミタさんの両親が利用客の需要を見込み、ラブホテルを新築したそうだ。

以前はマンガ家を目指していたというトミタさん。現在はホテルの経営を引き継いでいる
売上げは順調に伸び、すぐ隣にもう1軒ホテルを新築することに。それが今回取材したこのホテルだ。現在は両親に代わり、トミタさんが主な運営業務を行っている。トミタさんによると「この業界には私のような二世、三世の経営者は多いみたいです」という。
ラブホテルならではの高額な設備投資も
ラブホテルの場合、アパートやマンション、テナントビルにはない特殊な設備への投資も必要だ。中でも特に特徴的なのが、客室の管理を行うこちらのシステム。

客室の稼働状況が表示された画面。どのようなコースで入室したか、また食事の注文の有無なども分かる。清掃を担当する従業員もこの画面を見てベッドメイクなどを行う
ラブホテル業界では広く知られた管理システムだそうで、トミタさん曰く「ラブホテルの経営をするなら(導入は)ほぼ必須」とのこと。稼働状況や売上げの管理、客室に設置された食事などの注文システムなどがすべてパッケージ化されている。このホテルの場合、導入費は一式で約3000万円ほどだ。

端末の操作はこの特殊なキーボードで行う

客室に設置されたモニター。ここから食事の注文や料金の確認などが行える。これも管理システムにパッケージ化されているそうだ
都心は「異次元」? 気になる売上げを公開!
続いて、気になるラブホテルの売上げについて聞いた。
トミタさんによると、業界では1部屋あたりの1カ月の売上げを「ルーム」という単位で表現するそう。トミタさんが経営するホテルは、平均で「ルーム30万~40万円」ほどだという。
「もちろん一概には言えませんが、ルーム10万円を切るようになると経営はかなり厳しくなるんじゃないでしょうか。逆に都心の繁華街で駅近の好立地ホテルでは、ルーム100万円を超えるところもあると聞きます。もはや異次元ですよね」(トミタさん)

差別化のため、ラブホテルとしては珍しい露天風呂も設置。人気YouTuberが訪れ、動画のロケを行ったこともあるそう
トミタさんが経営する、あるホテルの1カ月の平均的な収支を教えてもらった。下表のとおり、1カ月あたりの手残りは約50万円ほどになるそうだ。
「コロナの影響で赤字になった月もありましたが、今はだいぶ持ち直しています。ラブホテル業界は、外国人観光客がターゲットの一般のホテルに比べると影響は少ないと思います」(トミタさん)
ラブホテルの購入、融資は受けられる?
現在5つのラブホテルを運営しているトミタさん。そのうちの1つは、最近新たに購入したものなのだという。ラブホテルを専門に扱う不動産会社からの紹介、あるいはラブホテルの経営者向けのイベントなどで、売り出し物件を探すのだそうだ。
「最近は後継者不足で、物件やホテル事業を売却するオーナーも増えていると聞きますので、探せば見つかると思いますよ」(トミタさん)

最近、新たにラブホテルを購入したというトミタさん
中古のラブホテルを買い取って稼働率を上げ、売却する買い取り再販のようなことを行っている業者もあるそうだが、「見かけの稼働率が高くても、設備の老朽化などが深刻な場合、購入後に思わず大きな出費が必要になるケースもある」とトミタさんは話す。
なお、ラブホテルの購入にあたり、ネックになるのはやはり「融資」。トミタさんによれば「都市銀行からの融資は基本的に難しい」ため、信金やノンバンクなどから融資を受けることになるのだそう。
「4号営業ホテル」と「新法営業ホテル」の違いって?
ところで一口にラブホテルと言っても、営業形態によって適用される法律が異なることをご存知だろうか。
そもそもラブホテルを含め、料金を受け取って客を宿泊させる施設には「旅館業法」が適用される。そしてラブホテルの場合、旅館業法に加えて「風営法」が適用されるケースもあるのだ。
例えばタッチパネルによる入室システム、あるいは客室内に販売機などを設置する場合、風営法上の許可が必要になる。こうした風営法に則って営業するラブホテルは、俗に「4号営業ホテル」、旅館業法の適用の下運営されるラブホテルは「新法ホテル」と呼ばれている。

客室内に設置されたアダルトグッズの販売機。こうした設備を設置できるのは、風営法の許可を得た4号営業ホテルのみだ
トミタさんは「今から新規に4号営業の許可を取るのは難しいと聞きます。4号営業のホテルは物件ではなく、法人ごと売買されることが多いのもそのせいかもしれません」と話す。
なお4号営業のホテルは設置できる設備も多い一方、さまざまな規制もかかる。例えば、集客のための野立て看板などは設置できない。またコロナの影響を受けた事業者を対象とした「持続化給付金」は、新法ホテルでは受給対象となるケースがあるが、4号営業ホテルは対象外だ。こうした規制について、一部のオーナーや業界団体からは「不公平だ」という声も挙がっている。トミタさんも「仕方がないのかなと思う一方、どうにかならないかという思いもある」と話していた。
このようにラブホテルは、見た目は同じでも運営形態によってその内実が大きく異なることがある。ラブホテル事業に参入する場合は、4号営業ホテルと新法ホテル、ぞれぞれのメリットやデメリットは把握しておきたいところだ。
おまけ
今回、トミタさんが経営する別のホテルで、ラブホテルならではの設備「エアシューター」を見学させてもらった。事務所と客室がパイプでつながっており、専用カプセルを使って料金のやりとりができるというものだ。

ラブホテルならではの施設「エアシューター」。どういう仕組みなのか? 詳しくは動画で紹介
現在は使われていないそうだが、今回は特別に動かしてもらうことに! 果たしてちゃんと動いたのか? 検証の様子は動画で!
取材協力:トミーホテルグループ
(楽待新聞編集部)
この連載について
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