外階段が崩落した八王子市のアパート(4月、編集部撮影)

今年4月17日、東京都八王子市のアパートで発生した外階段の崩落事故は、住人の女性が死亡するという最悪の結末となった。

木でつくられた踊り場が腐食していたことが事故の原因とされており、当該物件の施工を請け負っていた則武地所(神奈川県相模原市)は5月13日に自己破産を申請、同19日には横浜地裁から破産手続き開始の決定を受けている。

多くのアパートオーナーに衝撃を与えた事故から2カ月が経過した。いま、「則武物件」を所有するオーナーはどんな状況に置かれているのか。そして投資家は今後、こうした欠陥アパートを掴まないためにどう備えるべきなのか。複数のオーナーや専門家に取材した。

「安すぎて怖い」購入見送った投資家も

楽待新聞編集部は今月7日~10日にかけ、楽待会員向けに「八王子市で起きたアパート外階段崩落事故に関するアンケート」を実施、644件の回答を得た。まずはその結果を一部紹介しておこう。

最初に、今回の事故を知っていたかどうかという質問。これには全体の約93%が「知っていた」と回答した。

続いて「則武地所が施工した物件の購入を検討したことがあるか」という質問では、「検討したことはあるが、購入はしなかった」が約15%(95人)、「検討した結果、購入した」が約2%(12人)、「検討したことはない、分からない」が約83%(537人)であった。

n=644

「検討したが、購入はしなかった」と回答した人に、購入を見送った理由を聞いたところ、95人中48人が「安すぎて怖かった」「建物があまりに安っぽかった」「知り合いの業者から悪評を聞いた」といった、施工会社の評判や建物の品質を挙げていた。以下に回答の一部を抜粋する。

「検討したことはあるが、購入はしなかった」人の回答理由

・高利回りに惹かれてマイソクを取り寄せたが、狭小過ぎたり駅力に不安を覚えて面談まではせず。希望に叶う物件があれば購入していたかもしれないと思うとゾッとする

利回りが良すぎて、手抜き工事などが容易に想像できた。築浅なのに外壁などがボロボロになっている則武地所物件を、馴染みの不動産業者から見せてもらっていたので、ニュースを見て特に驚きもありませんでした。

・建築中の現場を見学したことがあるが、素人でもわかるくらいの杜撰な現場だった。起こるべくして起こった事故だが、このような事故がいつか起こるだろうと分かっていた人はかなりいたはず。

・新規物件の事業計画書をもらったが、銀行提出用に数字がふかされたものと、実際のものとに分かれて送られてきて、信用できない会社だと感じた。前社長と直接面談をしましたが、『年収1000万以上ならいくらでも金融機関を回してやる』とか、具体的な銀行名を挙げて『A銀行は自分の思い通りになる』といった発言をしていました。

他にも「購入寸前で値上げを求めてきた」「事務所でのスタッフの態度が良くなかった」など、対応の悪さを理由として挙げる人もいた。いずれも事前に調査をしたり、周囲から悪評を聞いたことで購入を回避したケースである。また則武地所は昨年、廃棄物処理法に基づく行政処分を受けており、その履歴を確認して購入を見送った投資家もいた。

こうした否定的な意見の一方で「ここまで安価な新築アパートを提供する会社は他になく、倒産は残念」「実際の建物や建築途中の現場を見学したことがあるが、問題があるようには見えなかった。レスポンスもほかの会社より早く、動きの良い会社といった印象だった」などの回答も数件あった。

「築3カ月」でも不安な階段

一方、今回のアンケートで「検討した結果、購入した」と回答した人は12人いた。現在、則武物件のオーナーはどのような状況に置かれているのだろうか。オーナーのヒロトさん(仮名)に実際の所有物件を見せてもらい、現状と今後について聞いた。

ヒロトさんは昨年の秋頃に土地を購入、全12戸の新築木造アパートの建築を則武地所に依頼し、今年3月に引き渡しを受けた。価格は土地と建物合計で約9000万円。家賃6万円台で現在も満室稼働している。

調査に同行してくれた一級建築士の大川照夫さん(左)の話に、真剣に耳を傾けるオーナーのヒロトさん

築3カ月と新しいだけあり、外壁や共用部はかなり綺麗だ。設備などにも今のところ大きな不具合は出ておらず「入居者からのクレームもない」とヒロトさん。しかし「階段」についてだけはやはり不安が拭えない。

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