近年、「観測史上初」「過去最大級」などと形容される、大規模な自然災害が増えている。こうした災害に伴い、市区町村による各種「ハザードマップ」も充実してきおり、災害リスクについて情報を得る機会は増えた。
不動産投資においては、こうした災害リスクの伴う物件は避けるのが基本と言われることが多い。最悪の場合、建物が全損してしまい、建て替えなどの出費がかさむ恐れがあるからだ。しかし、中には災害リスクを承知で物件を購入する投資家もいる。
実際のところ、融資や物件の鑑定評価に、災害リスクはどの程度影響するのだろうか。また、災害リスクの高いエリアに物件を購入する投資家は、万が一の対策をどのように考えているのか。金融機関の融資担当者や不動産鑑定士、複数の投資家に話を聞いた。
「修繕費用は300万では済まない」
災害は、津波や地震、洪水、土砂崩れなどさまざまなものがある。ニュースでは被災状況を画面越しに見ることはあるが、不動産のオーナーは実際にどの程度の被害を受けているのだろうか。
自営業をしながら、関西を中心に不動産投資を行うHさん。約5年前に和歌山県紀美野町にある、築23年の中古戸建てを250万円で購入した。物件は、一級河川である紀の川の最大支流、「貴志川」の真横に位置する。ハザードマップでは、最大規模の水害があった場合、10~20メートル浸水すると予想されているエリアだ。Hさんは、物件価格の安さとオーナーチェンジ物件ですぐに家賃が入ることを理由に購入を決断。
しかし、購入から1年後の2017年10月、台風21号が関西を直撃し、貴志川が決壊。Hさんの物件は2メートル近く浸水し、戸建ての1階部分は完全に水没した。
水没により、物件は1階部分の床や天井のクロス、畳やドアの交換、キッチン周りの設備一新が必要な状態になった。Hさんは売却も検討したというが、当時家賃4万円で住んでいた入居者から「仕事の都合上、このまま住み続けたい」と要望があったためリフォームを実施することに。近隣のリフォーム業者に見積もりを依頼すると「300万円では済まないだろう」との回答があった。
Hさんは知り合いの業者に300万円以内に収まるように交渉を行い、床や畳、壁紙の張り替え、キッチン一式の交換と床下の泥水の撤去などの修繕を実施してもらったという。
保険会社から保険金が下りたため、結果的に自費負担がなかったHさんだが、「物件を安く購入でき、リフォームを格安で頼めた分今回は問題なかったが、また浸水被害があった際は、最悪売却や取り壊しも視野に入れる必要があるだろう」と未だ不安は拭えない。
融資担当者に聞く、融資への影響は?
前出のHさんのように、ハザードマップで危険とされるエリアの物件は、融資の際、銀行からの評価にも影響が出るのだろうか。
ある金融機関で不動産融資を担当している現役銀行員のNさんは、
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