不動産投資歴20年の不動産投資家「テリー隊長」全面協力のもと、「初心者が必ず知っておきたいシミュレーションのすべて」をテーマに基礎知識を学んでいくこの連載。

第10話では、実際にシミュレーションシートに数字を打ち込みながら、物件を購入した1年目の収支を確認していく。

<登場人物紹介>

 テリーさん
50代半ばの不動産投資家。IT企業A社の元社員。20年前に不動産投資を始めた。50歳で会社を早期退社し、不動産賃貸経営を行いながら、悠々自適の生活を送っている。

 楽太君
30歳のサラリーマン。A社に勤務し、以前テリーさんの下で働いていた。素直で好奇心旺盛な性格。将来になんとなく不安を覚えて、不動産投資に興味を持ち始めた。数字は少し苦手。

第9話から続く)

不動産投資に興味を持ち始めたものの、どうにも知識が乏しいサラリーマン・楽太。そこで、会社の大先輩で、不動産投資家のテリーさんに教えを請いながら、不動産投資で失敗をしないためのシミュレーションを学ぶことになった。

前回から、ようやくシミュレーションの実践に移った。シミュレーションを行うための条件を設定した楽太は、いよいよ、物件を購入したらどのくらい儲かるのか、を計算し始める…。

★前回のおさらい★

・シミュレーションをする目的の1つは、物件のポテンシャルを図ること
・物件や自分自身の状況にあわせて、条件を設定する

★今回の目標★

・1年目のシミュレーションシートを完成させる
・完成したシミュレーションシートについて理解する


「前回、僕が大学で「シミュレーションを研究していた」と話したね。何のシミュレーションだと思う?」

 


「えー、全然わかりません! 教えてください!」

 


「実はね、気象のシミュレーションだよ。天気予報や台風の進路とかをコンピューターで予想するんだ」

PHOTO: takahashi / PIXTA

 


「へー! すごいけど…なんか難しそう」

 


「ところで楽太君。天気予報や台風の進路予測って、結構外れるときも多いと思わない?」

 


「確かに、台風の上陸地点が違ったりしますね」

 


「現在の最先端の科学技術と最高速のコンピューターを使っても、すべてを予測することはできないからね。不動産投資シミュレーションだって、同じことが言えると思うよ」

 


「え! テリーさん、表計算アプリでシミュレーションできるって言ってたじゃないですか」

 


「あのね、楽太君。シミュレーションで、すべてをピッタリ予測する必要はないんだ。この先30年で不動産賃貸業がどうなるかなんて、誰にも正確には予想できないだろう?」

 


「じゃあ、シミュレーションなんて役に立たないってことですか?」

 


「そうも言ってないよ。重要なことは、プラス幅とマイナス幅を持って予測すると言うことだよ。特にマイナス、つまり、利益が出ないケースは重点的に注目したほうがいいね」

 


「なんでですか?」

 


「それはそうだろう。マイナスということは、赤字と言うことで、将来的に資産を減らすということじゃないか。そんなの投資とは言えないよ!」

 


「それはそうですね。プラスなら成功、マイナスは退場ってことだから、マイナスにならないかどうかは特に重要なんですね」

 


「取らぬ狸の皮算用も楽しいけど、シミュレーションの重要な目的は、どんなときでも赤字にならないかどうか確認することなんだよ」

ステップ1:「収入」を計算する

前回まででシミュレーションの仕組み、そして条件を確認してきました。

今回から、いよいよ実際にシミュレーションを行います。

シミュレーションシートは、以下のようなものを用意しました。

こちらは表計算ソフトで作ったものですが、右欄の「シミュレーション結果」の空白を、上から順に計算をしていって埋めていくイメージとなります。

なお、今回シミュレーションする物件の購入条件は以下の通りです。

では、もう一度、シミュレーションの2つのステップを確認してみましょう。

不動産所得を求め、そこから税金を算出し、その税金を使って「手残り=キャッシュフロー(CF)を計算する、といった流れになります。

では、1つずつ、欲しい数値を求めていきましょう。まずは購入した1年目の計算です。

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