不動産投資歴20年の不動産投資家「テリー隊長」全面協力のもと、「初心者が必ず知っておきたいシミュレーションのすべて」をテーマに基礎知識を学んでいくこの連載。
第11話では、シミュレーションシートの数値を変化させ、「30年後」に物件の収支はどうなるのかを確認する。
<登場人物紹介>
テリーさん
50代半ばの不動産投資家。IT企業A社の元社員。20年前に不動産投資を始めた。50歳で会社を早期退社し、不動産賃貸経営を行いながら、悠々自適の生活を送っている。
楽太君
30歳のサラリーマン。A社に勤務し、以前テリーさんの下で働いていた。素直で好奇心旺盛な性格。将来になんとなく不安を覚えて、不動産投資に興味を持ち始めた。数字は少し苦手。
不動産投資に興味を持ち始めたものの、どうにも知識が乏しいサラリーマン・楽太。そこで、会社の大先輩で、不動産投資家のテリーさんに教えを請いながら、不動産投資で失敗をしないためのシミュレーションを学ぶことになった。
前回から、ようやくシミュレーションの実践に移った。シミュレーションを行うための条件を設定した楽太は、いよいよ、物件を購入したらどのくらい儲かるのか、を計算し始める…。
★前回のおさらい★
・1つずつ計算して、所得とCFを導き出す
・返済比率にも注目する
★今回の目標★
・購入年以外のシミュレーションを行えるようにする
・月日が経つと数字がどのように変化するかを理解する
◇
「楽太君! 今回はいよいよシミュレーションシートが完成するけど、準備はいいかな?」
「そうだ! 30年後の物件の様子を見に行くんですね」
「その通り!30年後、この物件が一体どうなっているか、数字で確認していこう」
30年後をシミュレーションすると…?
「楽太君。前回作ったのは、どんなシミュレーションだったっけ?」
「前回は、購入した1年目のシミュレーションを作りました!」
「その通り。そして、シミュレーションでは『タイムトラベル』…つまり、数値条件をそれぞれ変化させて、ほかの年も見ていくのが重要だったね」
「はい! 大規模修繕をする年、減価償却が終わった年とか、それぞれでCFを見ていくんですね」
「そうだね。今回は、ローン完済直前である30年後を見てみよう。まずは、設定するシミュレーション条件を考えるよ」
その時の経済状況や物件の仕様などで違いはありますが、30年も経てばどんな物件でも家賃はそれなりに下がってくると考えていた方が良いでしょう。
家賃下落率は1年目の想定家賃と比較して15%とします。年間0.5%ずつ下落する計算です。
空室率は、ここでは5%としました。築35年で空室率5%なら、まあまあの運用をしている感じですね。
その他の経費は、入退去に伴うリフォーム代や給湯器、エアコンといった機器の交換が発生するので、20%を見積っておきます。ただし、固定資産税の建物部分は、年を追うごと減少し、経費としては減少しますのでそれを加味した数字と理解してください。
所得税の税率は、楽太君の給与所得が上がり、税率が累進課税で次のステップに入ったとして、所得税率20%とします。住民税を合わせると30%になります。
なお、今回は金利は2%に固定して計算しました。ただし、金利も変動する可能性がありますので、十分注意してください。
「家賃も下がるし、空室も増えるって、いいことないですね…。でも、僕のお給料が増えるのはちょっとうれしいかな?」
「いやいや、あとで説明するけど、喜んではいられないぞ」
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