楽待新聞編集部が金融機関担当者に取材を行い、投資用不動産ローンに関する歴史から、融資姿勢、不動産投資市場に対する見解について話を聞くこの企画。

2回目となる今回は、「三井住友トラスト・ローン&ファイナンス株式会社」(以下、三井住友トラストL&F)、営業企画部長の松下良一さんに話を聞いた。松下さんはこれまで営業現場や融資審査部などの業務を担当。昨年から営業企画部の部長に就任し、商品の枠組み設定から融資諸条件の調整、広報宣伝活動など、アパートローンに関する企画業務を行っている。

三井住友トラストL&Fは、投資用不動産ローンの取り扱いを始めてから2020年までの約25年間、融資件数と融資残高ともに純増を続けてきている。現在、投資用不動産ローンに対して、どのような融資姿勢なのだろうか。融資条件や借入人に求めることなどについて聞いた。

住宅から投資用まで、ワンストップで対応

-三井住友トラストL&Fの成り立ちについて教えてください。

もともと同じ住友信託銀行(現:三井住友信託銀行)のグループ会社であった、住宅ローン専門の「ライフ住宅ローン株式会社(1996年創業)」と、不動産担保ローン専門の「ファーストクレジット株式会社(1981年創業)」が、2010年9月に統合してできた会社です。

住宅や投資用不動産の購入資金、さらに所有物件を活用した建物改修資金・各種事業資金や相続関連資金など、不動産を担保にさまざまな資金ニーズに対応しています。現在、貸付金全体に占める投資用不動産ローンの割合は5割弱になります。

-投資用不動産ローンを始めた当初と現在とを比較して、状況はどのように変わっていますか。

投資用不動産ローンは統合以前の1996年から取り扱いを始めています。当時、世間一般では、投資用不動産の購入のために銀行融資を受けるのは、地主の方や一部の富裕層の方が多かったと思います。しかし当社では、ワンルームマンションなどの小口案件やセミプロの個人投資家の方からの融資相談が大半を占めていました。

最近は、いわゆるサラリーマン大家の方が徐々に増えている印象ですが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う不動産市況の不透明感などの影響から、金融機関全体で融資のハードルが高くなっており、私たちも若干目線を上げている部分があるのが実情です。

-個人投資家の動きはこれまでどのように変わってきていますか。

一般的に不動産投資に求めるものとして、私的年金や生命保険代わりなどが挙げられ、そのようなニーズや考え方は今も昔もあるのだと思います。

当社のお客様の変化としては、以前だと、1000~2000万円前後のワンルームマンションを投資用に購入する方が多かったのですが、近年では、インターネット上でさまざまな不動産情報が見られるようになったことなど、不動産投資への間口が広がったこともあり、購入を希望する物件のバリエーションが増えてきたように思います。

例えば、個人の方が比較的規模の大きい物件を購入したり、木造物件だけでなくRC物件を検討したりするケースも見られます。また、リスク分散を目的にあえて地方の物件を購入したりするケースなど、投資手法も多様化しているように思います。

融資相談に来られる方の年齢層は、40~50代の方が最も多いですが、20~30代の若い方がSNSなどの情報で興味を持ち、不動産投資に取り組まれるという事例も増えてきています。

-どのような組織体制で、融資の対応をしていますか。

住宅ローンと投資用不動産ローンは、基本的に不動産会社から案件のご相談をいただくことが多くなっています。案件獲得ルートが同一であるという理由から、住宅ローンの部署が投資用不動産ローンにも対応しています。営業担当者も、営業拠点の規模に合わせて各店舗に配置し、住宅用と投資用の両方を担当しています。

-住宅ローンと投資用不動産ローンの両方を同じ担当者が取り扱うことは珍しいと思います。

住宅用と投資用で、多少審査の違いはありますが、人と物件を見るという意味では全く違うわけではありません。また当社には、「営業担当者は全ての商品を販売できるようになりましょう」という方針があります。物件の購入から、その後の運転資金や事業資金など、幅広い知識を習得するようにしています。

-不動産会社の対応や審査はどのように行っていますか。

当社で取り扱う融資案件の大半は不動産会社経由です。不動産会社から案件を紹介いただく際は、営業担当が営業活動から審査業務まで一貫して対応しています。

融資の審査はあくまで「借り入れされるエンドのお客様に対して」という認識ですが、案件を紹介いただく不動産会社が信頼できるかという見方も重要になります。営業活動におけるやり取りを通して得られる販売実績や賃貸管理実績などの情報、また個別案件におけるお客様への説明内容や購入計画など、不動産取引全体を通じて問題がない先かどうか総合的に判断しています。

中古でも最長30年、融資評価の考え方とは

-三井住友トラストL&Fの強みはありますか。

他社では取り扱いが難しい融資案件にも積極的に取り組んでいる点が強みだと思います。借入される方の属性や融資対象の物件について、明確な融資基準を設けているわけではなく、基本的に、門前払いという対応はしていません。

不動産投資をする場合、私たちのようなノンバンクではなく、多くの方はまず銀行で借入を検討するかと思います。ただ、お客様の年収基準や対象物件の基準などによって対応出来ないケースがあると思います。そういったケースでも当社では、対応することができます。

また、融資期間については、新築物件は最長35年。中古物件の場合でも最長30年の融資が可能な点も強みです。

-具体的に、どのような融資審査をされていますか。

あらゆる要素を総合的に判断して、

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