あくどいやり方で家を売りまくり、No.1営業マンとして人生を謳歌していた主人公・永瀬財地。しかしある日突然、嘘がつけない体になり、正直な営業しかできなくなってしまう。家が売れず、タワマンも高級車も手放すハメになった永瀬。「千の言葉の中に真実は三つ」と言われる不動産業界で生き残っていけるのか─。

そんなユニークな設定で不動産業界の闇に切り込む、漫画『正直不動産』(小学館)。既刊12巻の累計発行部数は160万部(2021年10月末時点)を突破し、「面白くて勉強になる」と業界の内外から人気を集めている。今回は、本作の原案者・夏原武氏に、『正直不動産』の誕生秘話や、取材を通じて見えてきた不動産業界の裏側、そして夏原氏から見た「不動産投資家像」などについて聞いた。

徹底したリアルと、1つの嘘

―なぜ、不動産をテーマにした作品を書こうと思ったのでしょうか。

夏原氏 正直不動産』を担当してくれている編集の田中潤さんとは、以前にも『クロサギ』という作品を一緒に作っていました。クロサギは、詐欺師が詐欺師を騙すという話で、「人間とお金」を扱った作品です。

クロサギはドラマ化・映画化もされましたが、やっぱりお金が絡む話は、人間の本音が出て面白いと思うんです。だから今度は詐欺ではない別のテーマで、お金に関連する作品を書きたいと思っていました。それで行き着いたのが、不動産です。不動産は生活に密接に関わっていて、全く無縁の人はいませんから、多くの読者が身近に感じてくれると思ったんです。

―主人公の永瀬は、嘘をついて契約を取りまくるエース営業マンでした。それが急に嘘をつけなくなった、という設定は斬新です。

不動産業界は、どうしても顧客に情報を隠そうとするところがあると思います。口八丁手八丁の営業マンが活躍しているイメージがありますよね。「もし、そんな営業マンが本当のことしか言えなくなってしまったらどうなるんだろう?」と考えたのが最初です。

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