給湯器の在庫不足が深刻化している。部品の製造工場があるベトナムで、新型コロナウイルスの感染者数が急増、ロックダウンが実施されたことで、部品が日本に輸入できなくなったことなどが要因だ。
本格的な冬が近づく中、消費者やリフォーム業者の間で不安の声が広がりだしている。
在庫が通常の「半分以下」も
給湯器で国内シェアトップのリンナイは、自社サイトで給湯器の「生産に支障が出ている」と発表。新型コロナの感染拡大の影響を受け、11月5日時点で入荷の目途が立っていないという。
給湯器は住宅に必須の設備だ。給湯器がなければお湯を使うことができず、入居者の募集はままならない。実際、住宅の新築やリフォームの現場には大きな影響が生じている。
「自社で保有する在庫が減る一方で、品薄でメーカーからの入荷もできない。かなり苦しい状況です」
こう話すのは、神奈川県を中心に、賃貸住宅設備の修理や施工を行っている、株式会社ライフエイドの小笠原弘宜代表だ。
小笠原さんによると、給湯器の故障で交換の需要が高まるのは、気温が低くなってくる11月ごろ。冬場は水温が低くなることから、お湯を沸かすために給湯器により大きな負荷がかかるため、故障も増えるのだという。この時期、給湯器の交換依頼は「多い月で100件以上にもなる」と小笠原さんは説明する。
会社には現在、20~30台の在庫があるが、「(在庫数は)これで例年の半分ぐらい。需要を考えるととても足りません」と悲鳴を上げる。
また現在抱えている在庫も、物件によってはそのまま使えないこともあるのだという。
「給湯器は同じように見えてさまざまなタイプがあります。設置方法や給湯方式、給湯能力などによって使用できるタイプも異なるので、在庫がどんな物件にも使用できるわけではありません」(小笠原さん)
適した給湯器が在庫にない場合は、メーカーに発注することになる。通常であれば発注後1~2日程度で入荷されるが、現在は入荷の時期が見通せない状態だ。「メーカーに問い合わせても明確な回答が得られず、少なくとも年内の入荷は難しそうです。この状態がいつまで続くのか、まったくわかりません」と、小笠原さんは頭を抱える。現在、給湯器の交換を待っている顧客が50組ほどいるという。
一方、業者によっては在庫を持っている場合もあるため、故障などで交換が必要な場合は問い合わせてみるとよいだろう。通常、問い合わせを受けてから現地で調査を行い、設置状況などを確認、設置してある給湯器と同じタイプの在庫があれば、在庫の給湯器を使って交換工事を実施、という流れになるという。
なお、給湯器の寿命は一般的に10年程度が目安とされる。「大家さんは、設置されている給湯器の製造年を確認し、壊れる前に交換工事を進めておくなど、先回りした行動を取ることが重要だと思います」と小笠原さんは話す。
なお小笠原さんの会社では、緊急の対応として、一時的に給湯器を貸し出すレンタルサービスを行っているという。
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