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12月15日、アメリカの中央銀行に当たるFRB(米連邦準備理事会)は、金融政策を決定するFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催した。FRBは金利や市場への資金供給量を調節することで、雇用の最大化と物価の安定を保っている。FRBの金融政策の方針を決定する会合が、FOMCだ。

今回のFOMCでは、米国債などの資産を購入する量的緩和策の終了時期の想定を、22年6月から同3月へ前倒しすることを決めた。また、FOMCのメンバーによる中期の経済・政策見通しでは、22年に政策金利のゼロ金利を解除し、年3回の利上げ予想が中央値となった。米国が金融緩和策の量的緩和策縮小(テーパリング)を加速させることを決め、22年中の利上げ実施に舵を切った。

なぜ、米国は利上げに踏み切ったのだろうか。米国の利上げに向けた動きは、日本の経済や不動産投資にどのような影響を与えると考えられるのだろうか。考察していく。

インフレーションとスタグフレーション

現在の米国経済は、新型コロナ禍から力強い立ち直りを見せており、賃金上昇とともに、急激な物価上昇が始まっている。

そもそもコロナショック以降の経済を振り返ると、20年に世界経済は大混乱に陥っていた。米国でも株価が暴落し、失業者が急増した。FRBは景気の混乱を解決して経済を支えるため、金利引き下げや資金の供給を増やす金融緩和を行った。

強力な金融緩和や経済対策の効果もあり、20年後半から経済は回復に向かう。現在では株価も史上最高値を更新し続けてきたことや、雇用が安定してきたことから経済が元に戻ったという見方が強くなっている。

経済が急激に回復した一方で、金融緩和を行ったことによって、現在の米国経済は賃金上昇やサプライチェーンの乱れが生じ、急激な物価上昇が始まっているのだ。

米国の11月の消費者物価指数(CPI)は、日本が0%前後である一方で、前年同月比6.8%上昇と約39年ぶりの高水準に達した。アメリカの物価上昇は、バイデン政権の支持率の低下につながるほど、国民に不満を与えている。

こうしたインフレ圧力の上昇に対応するため、市場への資金供給量を少しずつ減らす「テーパリング」の加速と22年の利上げを決めた。パウエルFRB議長は記者会見で、「インフレ率が目標の2%を大きく上回っている」とし、物価安定と雇用の最大化への姿勢を強く打ち出した。

新型コロナウイルス禍の中、米国の一部の経済学者やエコノミストの間では、「スタグフレーション」を懸念する声が聞かれた。スタグフレーション(stagflation)とは、停滞を意味するスタグネーション(stagnation)と物価の上昇を意味するインフレーション(inflation)を組み合わせた造語だ。

景気が良ければ、消費活動が活発化し、物価(インフレ率)が上昇し、同時に金利も上昇基調となる。半面、景気が悪化すると消費活動は停滞し、物価が下落、金利も低下基調となる。

ところが、スタグフレーションは景気が停滞しているにもかかわらず、物価(インフレ率)が上昇する状態が続く。「悪い物価上昇」と言われているスタグフレーションは、実質的な購買力が低下し、預貯金の実質的な価値も低下するため、国民生活に大きなダメージを与える。

アメリカは利上げを実施、日本も利上げするのか

しかし、米国は物価上昇が経済成長を伴うものだったため、スタグフレーションに陥る危険は一応回避され、物価安定化のための利上げを計画するまでになった。

一方、日本は依然、テーパリングや利上げを見込める状況にはないと考える。新型コロナ禍からの経済回復は徐々に進んでいるものの、賃金が上昇しない中で物価が上昇する「悪い物価上昇」が続いているためだ。むしろ、日本の方がスタグフレーションに陥る可能性が高まっているのではないだろうか。

日銀が「物価上昇率2%」という政策目標を掲げている限り、利上げに舵を切ることはないだろう。

米国が利上げの方向を打ち出しても、日本の金利が上昇しないことは、資金・金利負担が大きな重荷になる不動産投資にとって、現在の超低金利という好環境が継続するということだ。

米利上げによって円安が加速、輸入高で木材が高騰か

しかし、日本の不動産市場の先行きには大きな懸念材料がある。それは円安の問題だ。

ドル・円為替相場は21年1月の1ドル=104円台から急激なドル高・円安が進み、11月には1ドル=115円台半ばまで円安が進んだ。

これには、日米の金利差がある。

一般的に、為替は2国間の金利の関係によって価格が決まる。アメリカの金利が上昇すれば、日本より金利が高いドルに資金が流れ、ドル高・円安が進行する。

現在は、米国が利上げに向かって舵を切った一方で、日本は利上げできる状況ではないため、一段と円安が進む可能性が強まったのだ。

実際に、FOMCの結果が発表される前に1ドル=113円台半ばだった為替水準は、結果の発表を受け、日米の金利差拡大を織り込むように、1ドル=114円台前半に跳ね上がった。

17日現在は113円台半ばに戻りつつあるが、状況が変わらなければ円安傾向に進むのではないだろうか。

そこで引き起こされるのは、日本の物価上昇だ。年初からの円安進行は、輸入物価を10%以上も上昇させる要因になっている。加えて、新型コロナ禍からの経済活動の再開が、世界を巻き込んでのエネルギーと資源の争奪戦につながっている。

原油価格の上昇によるガソリン小売価格の上昇は、多くのニュースになったことでご存じの方も多いだろう。日本では、このエネルギーと資源の争奪戦と円安進行が相まって、「悪い物価上昇」が進んでいる。

日銀が企業間で売買する物品の価格水準を数値化した、物価関連の経済指標で、企業物価指数を見ると、国内企業物価指数は21年2月までは前年比でマイナスだったが、3月以降上昇を続けている。

特に、円ベースでは輸入物価指数が急激に上昇している。輸入物価指数は21年1月には前年比7.2%減だったが、11月には同44.3%増にもなった。オイルショックが影響していた1980年12月以来およそ41年ぶりの上昇幅だ。

日本は資源も、エネルギーも、食料すらも輸入に頼っている。日本では、いくら円安が進み、輸入物価が上昇しても、輸入数量を減らすのは難しい。企業間の物価指数上昇は、やがて製品価格に転嫁されて物価上昇に結び付く。

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