解決の鍵はご近所コミュニケーション

――解決しない場合は、どういうことになっていくのでしょうか。

穂積さん 訴訟や解約にいたることもあります。もちろんそれは避けたいところで、大きなトラブルに発展しないように努力するのがオーナーの仕事でもあります。

騒音が頻繁で我慢ならない場合は、依頼主に、「騒音の状況を記録」してもらうようにします。「発生した日時」、「継続時間」、「どのような音か」、「音の大きさ、程度」などを記してもらいます。後に話し合うときの参考にする、また、後々に大きなトラブルに発展したとき、訴訟や事件に備えるという意味合いがあります。最悪、「訴訟の用意もある」という態度を示す材料にもなります。

また、契約書にはたいてい、「集合住宅のため、生活の音など、ほかの住民の方の迷惑にならないよう、十分に配慮する」という条項があるはずです。あまりに騒音がひどい場合、契約違反として、解約、つまり退去してもらうことも可能になります。

――トラブルにならないよう、予防策はあるのでしょうか。

穂積さん 「ご近所との挨拶」を促すようにしています。トラブルになった人たちに話を聞くと、「相手とは入居以来一度も挨拶をしていない」という人がほとんどでした。ここにトラブルになる要因があると思います。

同じ音でも、例えば自分の子ども、妻、夫、親、ペット、彼氏、彼女、友人ら自分がよく知っている大切な人たちが出す音であれば、人は「騒音」だとは感じないでしょう。注意もできます。

ところが、まったく知らない人が発する上下両隣からの突然の音には、誰しも警戒心を抱くのではないでしょうか。「今のは何の音?」とすぐに尋ねることもできません。それが断続的に続くと、近隣の人の生活を脅かす騒音となってしまいます。

オーナー自ら、積極的に入居者に声をかけよう

――入居者の方に、ご近所への挨拶を促すような機会はありますか。

穂積さん 自分が直接入居者と接触しない場合は、仲介会社や管理会社に依頼し、重要事項説明をするとき、鍵を渡すときなどに、「後々のご近所トラブルを避けるためにも、移転時に、上下階や両隣の入居者の方へのご挨拶はなさってください」と伝えてもらいましょう。家族ともども、またペットも連れて伺って挨拶をすると、お互いに相手の状況が分かり、理解にもつながると思います。

ただ、セキュリティの関係で、女性の一人暮らしではご近所への挨拶を避けたほうがよいことがありますのでそこは適宜判断してください。

いずれにしろ、同じマンションの人と顔を合わしたときには、挨拶程度はしてほしいものです。道で入居者の方と会ったときなどは、オーナーの方から積極的に挨拶をし、快適に暮らせているかどうかなどを尋ねるようにしましょう。「寒くなりましたねえ」といった天気の話や、「お元気そうですね」、「阪神、弱いですねえ」などちょっとした世間話がコミュニケーションにつながると思います。

トラブルが発生したとき、日頃少しでも会話をしたことがある人ならば、仲介や話し合いもしやすくなるでしょう。

――小さな子どもがいるファミリーの入居者に、アドバイスはありますか。

穂積さん 先日、双子の赤ちゃんが生まれることが分かったご夫婦に、2階へ移転してもらいました。1階は駐車場です。家賃を少々値下げして敷金は現在のままスライドという条件でオーナーからご提案したところ、ご夫婦も、「やがて騒音源になるのでは」と懸念されていたとのことで移転に合意され、実現しました。

――騒音トラブルを防ぐのは、オーナー自らが、入居者とのコミュニケーションを率先するということなのですね。

穂積さん お隣と顔見知りなら、暮らしぶりが伺えて、多少の音がしても気にならないものです。今日は夜中にまた騒いでいるな、と思っても、翌日に軽く謝罪があれば許すこともできるはずです。

騒音への対処だけではなく、火事が起こった、事件があった、地震だ、水害が発生したなど有事に力を発揮するのは、ご近所コミュニケーションではないでしょうか。私は、「オーナーが笑顔で入居者に声をかける物件は、ご近所同士もコミュニケーションが良好でトラブルが少ない」ということを体感しています。

――相手の家族構成などが分かっていて日頃から会話があれば、怒鳴り込むこともないかもしれませんね。ありがとうございました。

日々の爽やかな挨拶が騒音トラブルを予防する……。入居者にできるだけ快適な生活を送ってもらうためにオーナーがするべきことは、弁護士への依頼や訴訟に関する知識を得る前に、「入居者とコミュニケーションをとろう」ということです。

セキュリティばかりが取りざたされる昨今であるからこそ、コミュニケーションが生きるのでしょう。「許容する」、「寛容でいる」ことへの意識、「お互いさま」という感覚が大切なのではないでしょうか。そういう思いや姿勢を相手に見せ合うことからトラブル予防が始まるといえそうです。

 

~ 不動産アドバイザー・穂積さんの教え! ~

1.マンションやアパートで起こるトラブルのナンバーワンは、「騒音」。
2.小さな子どもがいる家族に苦情が多いことを知っておく。
3.フロア対策、移転依頼も解決策の一つ。
4.トラブルを未然に防ぐ最強策は、ご近所コミュニケーションにあり。
5.オーナー自ら入居者とコミュニケーションをはかろう。