この企画では、不動産投資から遠いようで近い、さまざまな業界の第一線で活躍するプロや専門家にインタビュー。その道のプロならではの経験談、不動産業界の現状、問題点などについて独自の見解を聞いていく。普段はなかなか交わることがないプロフェッショナルたちの言葉から、投資判断に役立つヒントを探していく。

今回は、約15年間、住み込みのマンション管理員として働いてきた南野苑生(みなみの・そのお)さん(73)に、「マンション管理員のリアル」を聞いた。

PHOTO:MASANORI SEIYA / PIXTA

南野さんはこれまで3つのマンションで管理員を経験。住民や理事会が巻き起こすさまざまなトラブルを目の当たりにしてきたベテラン管理員だ。2020年には、クレーマーとのやりとりや、私欲にまみれた理事長との確執など、これまでの奮闘を書き綴った『マンション管理員オロオロ日記』(三五館シンシャ)を出版している。

マンション管理員は、住民の暮らしを支えながら、所有者の代わりに物件管理を担っている。不動産投資家にとっては、植栽の水やりや共用部の清掃など、物件価値の維持に寄与している貴重な存在だろう。

マンション管理員は毎日どのような仕事をしているのだろうか。また南野さんはどのようなトラブルや苦悩を経験してきたのだろうか。現場で長く働き、さまざまなドラマを目の当たりにしてきた南野さんに話を聞いた。

ホームレス寸前で出会った「住み込み管理員」という仕事

―これまで15年ほど、マンション管理員をされているそうですね。

大阪にある管理会社の管理物件で、夫婦2人で住み込みの管理員をしています。管理員室は2DKで、6畳のダイニングキッチンと4畳半の寝室の2部屋となっています。家賃はタダ、水道代と電気代は管理組合の経費となるので、助かっています。

このマンションは総戸数約140戸、バブルの終わりころに建設されました。大手デベロッパーが開発し、大手ゼネコンが施工した物件だけあって造りがよく、1番安い住戸でも分譲当時3000万円以上で売りに出されたと聞いています。

私の勤務は9時から17時までが定時となっており、家内は9時から12時までが勤務時間です。

ただし、われわれの住居である管理員室は管理事務所と部屋続きとなっているので、住民さんからのクレームなどは昼夜を問わず来ます。就寝時間にもかかわらず、「無断駐車している車をどかしてほしい」「ケンカの仲裁をしてほしい」「救急車を呼んでほしい」などの要望は日常茶飯事です。住民さんからはまるでおまわりさんのような扱いを受けることもあるので、苦労が多いですね。

―管理員のお給料や待遇について教えていただけますか。

収入はお世辞にも多いとは言えません。マンション管理員と言えば、エントランス横の事務所でちょこんと座っている年配男性をイメージする人が多いと思います。管理員はなぜ老人ばかりなのかというと、ずばり賃金が安いからです。

私の月収は、手当てを含めて約17万円くらいです。所得税や社会保険などを天引きされて、手取りは15万円程度になります。

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