病気や障害などで働けなくなった人や、身寄りのない高齢者など、自力で家を借りることができない人たちがいる。こうした「住宅弱者」の支援を行う団体の1つが、静岡県で活動するNPO法人「POPOLO」(ポポロ)だ。仕事も住まいもなく、生活に困窮した人たちに住居や食事を提供し、就職の支援も行う「POPOLOハウス」を県内で運営している。

同法人の事務局長を務める鈴木和樹さんは、幼い頃に両親が離婚、生活保護を受けながら育った。福祉に生活保護以外の選択肢がないことに疑問を抱き、NPO法人を立ち上げて支援活動をスタートしたという。今回は、そんな鈴木さんの支援活動に密着した。

条件付きで「衣食住」を無償提供

「POPOLOハウス」に入居するのは、働く意欲を持ちながらも、何らかの理由により自立生活を送ることが難しい人たちだ。POPOLOハウスでは、「3カ月間で仕事を見つける」という条件で、無料で衣食住を提供する。現在の入居者は5〜6人で、共同生活を行いながら自立を目指す。

鈴木さんのNPO法人が運営するPOPOLOハウスのキッチンスペース

この日、鈴木さんは50代の入居者・Aさんと面談を行っていた。Aさんはまもなく入居から3カ月を迎えるが、仕事は見つかっていない。退去しても自力で部屋を借りられるだけの金銭的な余裕はなく、今後の暮らしに不安を感じ、鈴木さんに相談を持ちかけたという。

POPOLOハウスに入居するAさんと面談する鈴木さん

プレッシャーからか、時折声が詰まるAさんに対して、鈴木さんは穏やかな口調で応じる。引き続き就職活動に努力してもらいつつ、もし結果が伴わなかった場合、入居の延長申請に向けて動こうとし、Aさんを安心させていた。

入居者と接する際に鈴木さんが大切にしているのが、「本人の考えを尊重すること」だという。「本人が頑張って仕事を探していると主張しているのだから、それを受け止める」のだそうだ。

「樹海が近いからか、過去に入居した人の中には所持品がロープのみ、という人もいました。その後、その方は無事退去になり、『ロープはもういらない』と話してくれました。そのときは嬉しかったですね」(鈴木さん)

「休眠預金」制度活用で物件取得

POPOLOハウスは、お金も住まいもなく、生活支援の緊急性が特に高い人たちの自立支援を目的としている。入居期間は原則3カ月と決められている。

しかし、たとえ就職できたとしてもすぐに経済状況が改

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