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不動産を使った相続税の節税をめぐり、行き過ぎた節税に待ったをかけた国税当局が勝訴した今月19日の最高裁判決。節税スキームを使って相続税を大幅に圧縮し「ゼロ」と申告した相続人は、追徴課税など約3億円の納税義務を負った。

この裁判では、伝家の宝刀と呼ばれる例外規定「財産評価基本通達(総則6項)」の適用の是非が争点となった。最高裁が異例の弁論を開いたことで、一時は相続人が逆転勝訴するのではとの憶測も飛んだが、結果は敗訴。

では、相続税の申告で通常認められている路線価を、国税当局が例外的に否認できるのはどのような場合なのか―。最高裁が明示しなかった「基準」をどう捉えればよいのか、専門家に独自の見解を聞いた。不動産会社や金融機関にも取材し、判決が今後の不動産節税に与える影響を探った。

【裁判概要はこちら】国税が抜いた「伝家の宝刀」、路線価否定の判決を最高裁が覆す?

【判決記事はこちら】「伝家の宝刀」は適法、不動産相続巡る裁判で相続人側が敗訴

路線価否認、その「基準」は

路線価での相続税申告を認めない例外規定「財産評価通達総則6項」がどんな場合に適用されるのか―。この点について、納税者らからは「国税当局が路線価を否認する基準が分からず不安」といった困惑の声が上がる。

相続税の申告業務の依頼を受ける税理士などの専門家からは、節税目的だけの不動産取引に警鐘を鳴らす意見が相次ぐ。では、専門家はどのようなケースで路線価が否認されるリスクが高いと考えるのか。それぞれが考える独自の「基準」について聞いた。

 

■相続専門の角田壮平税理士 「路線価が50%以下の場合は要注意」

―今後の相続税評価に影響は

今回の訴訟のような過度な節税を目的とした相続案件でなければ、相続税の申告は今まで通りの路線価による評価でよいと考えている。今後も基本的に時価で評価することはないが、将来的に路線価が否定される可能性があるということは今まで以上に強く顧客に伝えなければならない。

―路線価と実勢価格のかい離の許容範囲は

(実勢価格に対する路線価は)何%以下であれば危ないという明確な規定はないが、他の税法の規定を鑑みると実勢価格の半額を下回るような路線価評価だと否認されるリスクは高まるだろう。タワマンの場合、20~25%ということはよくあるが、それは通達評価(路線価)の欠陥だと考える。

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