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最低でも1室1泊5万円前後の宿泊料がかかる、外資系ラグジュアリーブランドホテル(外資系最高級ホテル)。こうしたホテルが、日本全国で続々と誕生している。

例えば京都では、2014年に「ザ・リッツ・カールトン京都」が開業して以降、「翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル京都」(2015年)、「フォーシーズンズホテルアンドレジデンス京都」(2016年)、「パークハイアット京都」(2019年)、「アマン京都」(2019年)と、インバウンドに比例するように増加していった。

コロナ以降もこの流れに変化はなく、2021年3月には「フォションホテル京都」が開業、2021年9月には「ROKU KYOTO, LXRホテルズ&リゾート」が開業している。

なぜ、コロナ下にも関わらず、こうした外資系最高級ホテルの新規開業が続いているのか。今回はその背景を考えていく。

東京、京都をはじめ、福岡、札幌でも

冒頭で述べたように、京都ではコロナ以降も外資系最高級ホテルの開業が相次いだ。そしてコロナ後のインバウンド需要回復を見越し、この先も「デュシタニ京都」(2023年予定)、「京都東山SIX SENSES」(2024年予定)、「京都東山バイヤンツリー」(2024年予定)、「シャングリ・ラ京都二条城」(2024年予定)など開業ラッシュを控える。

首都・東京も負けてはいない。日本初進出となる「ブルガリホテル東京」や「東京エディション銀座」、「ジャヌ東京」が2023年に開業予定である。また2025年春には、「JWマリオット・ホテル東京」の開業も予定されている。「品川開発プロジェクト」の一環で進められているもので、JR高輪ゲートウェイ駅前に誕生する高層ビルの23階~30階に、スイートルームを含めた約200室の客室を備える予定だ。また2026年には、「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」が開業する予定となっている。

「虎ノ門・麻布台プロジェクト」では、ラグジュアリーホテル「ジャヌ東京」が2023年に開業予定(森ビル ニュースリリースより)

福岡では、積水ハウスや西日本鉄道などが主体となって、再開発事業である「天神ビックバン」最大級の複合ビル(25階建て高さ約111メートル)が建設中であり、上層階には、「ザ・リッツ・カールトン福岡」が2023年3月に開業予定である。

札幌はこうした外資系高級ホテル不毛の地だった。しかし2031年春までに、JR北海道などが、米国のマリオット・インターナショナルと提携し高級ホテルの開業を予定している。北海道新幹線の札幌延伸、そして2030年冬季五輪招致を見据え、札幌駅前に建設する高さ約250mの複合ビルに開業となる予定だ。客室は約200室、2029年秋の開業予定だという。

世界3大ブランドが日本に進出

ここでは、日本にもなじみがある米国系の3大ホテルチェーンである、「マリオット」、「ヒルトン」、「ハイアット」の特徴と、各々の最高級ホテルブランドを紹介したい。

・マリオット
マリオット・インターナショナル(マリオット)は、米国に本拠を置く世界最大のホテルチェーングループ。米国ナスダック市場に上場している。「マリオット」、「シェラトン」、「ウェスティン」、「ルネッサンス」など、138の国や地域に30のブランド、合計7900以上の施設を擁している。世界で約1億5500万人の会員を持ち、国内の会員は300万人。宿泊者のうち6~7割は会員が占めており、強固な会員組織により安定した稼働率を誇っている。

ザ・リッツ・カールトン東京(公式Webサイトより

ラグジュアリーブランド(最高級ブランド)ホテルとして、「ザ・リッツ・カールトン」、「セントレジス」、「JWマリオット」、「リッツ・カールトン・リザーブ」、「ラグジュアリーコレクション」、「Wホテル」、「エディション・ホテル」、「ブルガリホテルズ & リゾーツ」の8ブランドを有する。

・ヒルトン
ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス(ヒルトン)は、米国に本拠を置く世界大手のホテルチェーングループであり、米国NY証券取引所(NYSE)に上場している。ヒルトンは、日本でも特に有名な外資系ホテルブランド名だろう。創業者はコンラッド・ヒルトン。「ヒルトン・ホテル」、「ダブルツリー」、「キュリオ・コレクション by ヒルトン」など18ブランドを119カ国に、約6500軒のホテルやリゾートにて展開している。

最高級ブランドホテルとしては、「ウォルドーフ・アストリア」、「コンラッド・ホテル」、「LXRホテルズ&リゾーツ」の3ブランドを有する。

コンラッド東京(公式Webサイトより)

・ハイアット
ハイアット・ホテルズ(ハイアット)は、米国に本拠を置く高級ホテルグループで、米国NYSEに上場。創設者はシカゴの大資産家であるプリツカー家。「ハイアット」、「ハイアットリージェンシー」、「ハイアットセントリック」など19ブランドで展開。70カ国に1150軒以上のホテルおよびオールインクルーシブ施設を擁する。最高級ブランドは、「パークアイアット」、「グランドハイアット」、「アンダース」の3ブランドだ。

パークハイアット東京(公式Webサイトより)

・フォーシーズンズやアマンも
その他の外資系ラグジュアリーブランドホテルでは、「フォーシーズンズ」、「シャングリ・ラ」、「マンダリンオリエンタル」、「アマン」、「ペニンシュラ」、「シックスセンス」などが挙げられる。これらホテルも含めると、日本においては開業予定も含め、東京、京都、沖縄、ニセコに加え、札幌、日光、横浜、箱根、名古屋、志摩、奈良、大阪、福岡に55施設を確認できる(マリブジャパン調べ)。

なお、こうした「外資系ラグジュアリーブランドホテル」に加え、「ヒルトン」や「シェラトン」、「インターコンチネンタル」や「ウェスティン」など、最高級ブランドホテルではないものの、最低でも1室1泊2万円前後からとされる「外資系ブランドホテル」では、日本国内に78施設存在している(マリブジャパン調べ)。

なぜ、外資系高級ホテルが増えているのか?

新型コロナウイルスによりインバウンドも望めないなか、なぜ、外資系高級ホテルが増えているのだろうか。コロナ後の需要回復を見込み、準備を進めているのだ。

実際、コロナ前までは年間3000万人のインバウンドがあり、政府は2030年に6000万人のインバウンドを獲得する目標も変更していない。国際的な知名度と安心感があるマリオットやヒルトンブランドの最高級ホテルがあれば、安心して訪れ泊まろうとする富裕層を中心とした外国人観光客は多いだろう。

また、再開発や国際化を進める地元自治体などの思惑もある。世界的な国際会議や見本市にスポーツイベントなどの誘致活動において、外資系最高級ホテルの存在は切り札になる。

運営委託方式で、保有と運営を分離

こうした外資系ラグジュアリーブランドホテルでは、保有と運営を分離した運営委託方式(MC方式)が採られているケースが多い。

例えば、「ザ・リッツ・カールトン日光」は、東武鉄道グループが保有し、マリオットグループが運営を担う、という形だ。他にも、西武ホールディングスがプリンスホテルの大部分の保有を手放し、運営に特化すると発表した。このように「運営受託」方式に切り替える事例は増えてきている。

ザ・リッツ・カールトン日光(公式Webサイトより)

不動産を所有する「ホテル所有企業」と「ホテル運営企業」が分離されることで、不動産下落リスクや空室リスクは、一義的には「ホテル保有企業」が負うことになる。運営を担うマリオットやヒルトンなど外資系ホテルチェーン企業(ホテル運営企業)の損失は限定的となる。

国内外の大手デベロッパー、大企業や不動産投資ファンドなどの「ホテル所有企業」は、概して資金力豊富である程度の耐久力はある。一方で、ホテル運営スキルやホテルブランド力がなく、「ホテル運営企業」であるマリオットやヒルトンなどが持つ世界的なブランド力と強固な会員組織により高い稼働が見込めることや、経験豊富なホテル運営能力が期待できることになる。

ブランド化を推し進めることが好循環を生む

東京、京都、ニセコなど、外資系高級ホテルがある都市・リゾート地は、この先も魅力を放ち生き残る可能性が高いと筆者は考える。

こうしたホテルは、上述した運営委託方式により、合理的な観点から立地や投資が選ばれているからだ。単純にビジネスとして採算がとれるのか、成長性はあるのか、自社ブランドに貢献するのか、といった点が開業の基準となっている。

実際、マリオットなど米系大手3社は、世界最大のニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している。売上高、最終利益はもちろん、客室稼働率、客室価格、客室平均単価、収益力の目安となる「1部屋あたりの売上高」を重視して、日々株価を意識した経営がなされている。

外資系最高級ホテル進出、というシンボリックな大型開発が、コロナ下でも進行中であることー。これは、国内外の多くの事業者・投資家が安心して事業継続や不動産投資を行うことができるエリアであることを示していると言える。

一般に、外資系ラグジュアリーブランドホテルがある地は、別荘やコンドミニアム、セカンドハウスのニーズも高く、かつ地価の上昇も続いている。国内外の富裕層などから投資対象として売買されるケースも多いだろう。

こうした状況がさらなる不動産価値の上昇を生み、ブランド化を推し進めるという好循環を生むことにもなる。このことから、外資系最高級ホテルの進出は、日本各地の都市・リゾート地のブランド価値をもう一段高めることになるはずだ。

(高橋克英)