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前回の記事『人口の「東京一極集中」、コロナ下で変わったのか?』では、新型コロナによって東京の人口が減少しているのかを検証した。

結果、新型コロナ感染拡大の中にあっても、東京の人口は増加を続けていることが分かった。一方、その増加ペースには歯止めがかかっており、増加基調は非常に弱いものだとも指摘した。さらには、多くの人が東京から転出しているという事実も述べた。

では、東京を転出した人たちは、いったいどこに行ったのだろうか? 今回はこれについて紐解いていきたい。なお、前回同様、以降に掲載する図表は、すべて「住民基本台帳人口移動報告」をベースに筆者が作成したものだ。

東京からの転出者数は

まずは新型コロナ感染拡大の中で、東京からどの程度の人が転出したのかを見ておこう。2019年の東京都からの転出者数は、34万732人だった。これが新型コロナの感染拡大が本格化した2020年には、前年比で2万2062人(6.5%)増加し36万2794人に、21年にはさらに同1万4688人(4.0%)増加し37万7482人となった。

(総務省『住民基本台帳人口移動報告』を基に著者作成)

23区からの転出者数は、19年の30万1233人から20年には前年比2万5398人(8.4%)増の32万6631人となった。21年は同1万6902人(5.2%)増の34万3533人と増加傾向を辿っている。20年と21年の2年間の合計で、東京都からは74万276人が、23区からは67万164人が転出したことになる。

もちろん、東京を転出する理由はさまざまであり、転出先も全国に広がっている。しかし、転出先として圧倒的に多いのは、東京都近隣3県(埼玉県、千葉県、神奈川県)だ。

東京からの転出先、1位は神奈川県

東京都を転出した74万超の人たちが最も多く移り住んだのは、神奈川県だ。東京都から神奈川県への転入者数は、19年は7万6118人だったが、20年には8万2999人と前年比6881人(9.0%)増加、21年には8万8607人と同5608人(6.8%)増加した。20年、21年の2年間で、東京都の転出者数の23.2%に当たる17万1606人が神奈川県に転入している。

(総務省『住民基本台帳人口移動報告』を基に著者作成)

次いで多いのが埼玉県だ。東京都からの転入者数は19年には6万859人だったが、20年には6万4050人と前年比3191人(5.2%)増加、21年には6万8146人と同4096人(6.4%)増加した。20年、21年の2年間で、東京都の転出者数の17.9%の13万2196人が埼玉県に転入している。

千葉県は神奈川県の半分程度だが、それでも東京都からの転入者数は19年には4万6216人、20年に4万9287人、21年には5万2081人と前年比2794人(5.7%)増加し、5万人台に乗せた。20年、21年の2年間で東京都の転出者数の13.7%の10万1368人が千葉県に転入している。

東京からの移転先としての「人気投票」は、神奈川県、埼玉県、千葉県の順、ということのようだ。なお、20年と21年の2年間で、東京都を転出した74万276人のうち54.7%に当たる40万5170人が、これら近隣3県に移り住んだことになる。

なお、住民基本台帳人口移動報告には、政令指定都市の転入・転出者の統計も含まれる。東京都からさいたま市、千葉市、そして神奈川県横浜市、川崎市への転出者数を見ると、20年、21年の2年間で東京都から横浜市には6万3287人、川崎市には5万2879人が転入している。

20年、21年の2年間で東京都から神奈川県に転入した17万606人のうち、67.6%が横浜市と川崎市に移り住んだことになる。さいたま市には20年、21年の2年間で2万7395人が東京都から移り住んでいる一方で、千葉市への転入者数は1万3351人にとどまっている。

ここで、東京からの転入者数が多かった神奈川、埼玉、千葉の3県について、今度は転出者数を見てみよう。

下図を見ると、埼玉県と千葉県では20年、21年とも転出者数が減少しているが、神奈川県では21年に転出者数が増加に転じていることが分かる。埼玉県は19年に14万7406人だった転出者数が20年には14万5147人と前年比2259人(1.5%)減少、21年も14万3434人と同1713人(1.2%)減少した。

(総務省『住民基本台帳人口移動報告』を基に著者作成)

千葉県は19年に12万9053人だった転出者数が、20年には12万6407人と同2646人(2.1%)減少、21年も12万4979人と同1428人(1.1%)減少した。一方、神奈川県は19年に19万875人だった転出者数が20年には2334人(1.2%)減少したものの、21年は18万8727人と同186人(0.1%)増加と、わずかながら増加に転じている。

近隣3県から東京への転入者数は

20年と21年の2年間で東京都から転出した74万276人のうち、54.7%が近隣3県に移り住んだことは先に述べた。では、近隣3県からはどの程度の人が東京都に移り住んでいるのだろうか。

20年、21年の2年間で埼玉県から転出したのは28万8581人。そのうち東京都に移り住んだのは38.0%で、20年、21年の合計で10万9909人だ。1年ごとに見ると、20年には前年比1961人(3.4%)減、21年は2457人(4.4%)減と減少数が拡大している。

千葉県では20年、21年の2年間における転出者数は25万1386人。そのうち東京都に移り住んだのは35.7%で、20年、21年の合計で8万9776人だ。こちらも埼玉県同様に、東京都への転出者数は20年には同1861人(3.9%)減、21年は2166人(4.7%)減と減少数が拡大している。

(総務省『住民基本台帳人口移動報告』を基に著者作成)

これに対して、神奈川県から20年、21年の2年間で転出した人は37万7268人。このうち、東京都に移り住んだのは40.8%で、2年間の合計が15万4064人。神奈川県が唯一40%を超えている。東京都への転出者数は20年には同2515人(3.1%)減、21年にも2020人(2.6%)減少したが、減少数は縮小している。

ここで、東京都と近隣3県の転入・転出者数の関係を整理しておこう。

・20年と21年の2年間の合計で、東京都からは約74万人、23区からは約67万人が転出している

・東京都の転出者の23.2%が神奈川県17.9%が埼玉県13.7%が千葉県に転入。全体の54.7%がこの近隣3県に転入

・近隣3県の2年間の転出者のうち、東京都への転入者は埼玉県で全体の38.0%、千葉県で同35.7%、神奈川県で同40.8%

これを実数で見ると、20年、21年の2年間で、東京都への転出者より東京都からの転入者が多かったことが分かる。埼玉県では2万2287人、千葉県では1万1592人、神奈川県では1万7542人多かった。

(総務省『住民基本台帳人口移動報告』を基に著者作成)

20年と21年の2年間で、東京都では近隣3県からの転入者数よりも、5万1421人多い転出者が近隣3県に移り住んだことになる。

もちろん、転出者のすべてが、新型コロナが理由で東京から転出したわけではない。さまざまな理由がある。

筆者の2人の子どもも、各々が結婚して家庭を持っているが、両方とも子どもが生まれたことを機に、奇しくも21年、両方の家庭が東京から埼玉県の駅近にマンションを購入して引っ越した。

子ども達に聞くと、「埼玉県を選んだのは価格などによるが、東京都以外にしたのは新型コロナも理由の1つ」という。

今回の検証でわかったのは、東京都には地方から人が流入する傾向が続いているものの、少なくとも新型コロナの感染拡大が本格化した20年以降は、東京都から近隣3県に住居を移す人が明らかに増加しているということだ。

新型コロナによって、働く場所と住む場所を近づける「職住近接」という東京に住まいを構えるという流れから、住居を近隣3県に移すという新たなドーナツ化現象に変化が起きているのかもしれない。

(鷲尾 香一)