国税庁は1日、2022年の路線価を発表した。前年の下落から上昇に転じ、全国平均で0.5%上昇する結果となった。三大都市圏(東京、大阪、名古屋)でもそろって上昇した。
今回は、公表された路線価のデータを紹介する。相続税や贈与税における土地評価額の判断に使用される路線価は、毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格水準の80%程度になるよう設定されている。
コロナの影響ゆるみ、20都道府県で上昇
前回2021年の路線価は、全国平均値が6年ぶりに下落する結果となった。2020年と比較して0.5%下がり、特に観光地や繁華街などで大きくマイナスに転じた。
そして今回の2022年の発表では、新型コロナウイルスの影響が弱まり、2年ぶりに路線価価格が上昇した。国税庁が発表したデータによると、全国平均は前年と比較して0.5%上昇した。
都道府県別では、20都道府県(前年7道県)で上昇。一方、下落は27県で、前年の39都府県から減少した。
都道府県庁所在地で見た場合、最高路線価が前年から上昇したのは15都市で、前年より7都市増加した。最も上昇率が高かったのは、千葉市のプラス5.1%。次いで札幌市のプラス4.8%、次いで広島市のプラス3.5%となった。横ばいの都市は16都市で、前年より6都市減少。そして下落となったのは16都市で、前年より6都市減少している。中でも最も下落率が高かったのは神戸市で、マイナス5.8%だった。
首都圏は、東京都プラス1.1%、神奈川県プラス0.6%、千葉県プラス0.8%、埼玉県プラス0.4%となり、1都3県すべてで上昇。千葉県では、「千葉駅前大通り」をはじめ、東京都心にアクセスしやすい地域で路線価が上昇した。
全国の評価対象地点のうち、最高額を記録した地点は、37年連続で東京都・中央区銀座5丁目の「中央銀座通り」(鳩居堂前)。この地点は前回から引き続き今回も下落したが、下げ幅はマイナス1.1%にとどまり、1平方メートルあたり4224万円(前年4272万円)という結果となった。
住宅の価格反映された「順当な結果」
今回の路線価について、不動産専門の調査会社「東京カンテイ」の井出武氏に見解を聞いた。
全国的に路線価が上昇したことに対し、「商業地ではインバウンド需要が依然として低く、価格が回復しきっていないが、住宅地では不動産価格が順当に反映されている」という見解を示した。「今後も戸建てやマンションの価格が反映される形で、都市部の路線価価格が回復していくだろう」と話す。
都道府県庁所在地の中で上昇率が高かった北海道札幌市については、「日本ハムファイターズの新しいスタジアムが建設されていることが要因」と見る。「スタジアムの周辺一帯で開発が進んでおり、今後もしばらく上昇が続くと考えられる」(井出氏)
また、半導体製造最大手、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の工場が建設中の熊本県菊陽町では、路線価が5%と大きく上昇している。井出氏によれば「(価格の上昇が)継続するかどうかは未知数で、注視する必要がある」という。「工場で働く人が定住した場合、工業地の価格が上がり、周辺の商業地や住宅地へも波及効果が期待できるが、短い期間で終わってしまう可能性もある」と述べる。
都道府県庁所在地の中で最も下落率が高かった兵庫県神戸市については、「大阪府や京都府と比べると人気が停滞している印象がある」と話す。一方で、「都市部で最も地価が下落するのは、駅前の百貨店などをマンションにするケース。だが神戸市は、2020年にマンションに規制をかけ、商業地がマンションになることを未然に防いでいるため、今後はある程度地価が回復するだろう」と語った。
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井出氏は、今後の路線価の推移について、「東京23区や埼玉県さいたま市、神奈川県川崎市などの路線価は、住宅価格に合わせて今後も上がっていくだろう」と予想する。
全国的に路線価は上昇する結果となったが、今後地価がどのように変動するのか、引き続き注目したい。
(楽待新聞編集部)
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