賃貸経営をしている大家さんが、税金に関するさまざまな疑問を税理士に相談するこの企画。大家さんと税理士の問答を通じて、読者の皆さんも一緒に税金の知識を身につけていきましょう。

今回相談に乗っていただくのは、税理士で公認会計士の黒瀧泰介さん。税理士法人グランサーズ共同代表として、1200社以上の財務コンサルティングを行い、不動産投資家の相談実績は400人を超えます。

相談者はサラリーマン大家のヒロさん。投資歴6年で、東京都23区内に区分マンションを8戸所有しています。昨年には太陽光発電も投資用に購入しました。

銀行からの融資を受けて順調に物件数を増やしているものの、全体の収支状況は芳しくなく…。節税を目的に不動産投資を始めるも、実際に節税効果があったのかも自信がない様子です。

ヒロさんの不安は払しょくできたのでしょうか。記事では、相談の様子を一部ご紹介します。続きが気になる方はぜひ動画をご覧ください。

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【相談内容】
1.節税効果はあった?
2.売却すべき物件はどれ?
3.今、法人化するべき?

節税効果はあったのか?

ヒロ

:不動産投資は将来への備えと節税を目的に始めました。ただ、現在区分マンションを8戸所有していますが、年間キャッシュフローは約20万円のマイナスです。

このような状況で、実際に節税の効果があったのか、ご意見を伺いたいです。

黒瀧

:過去3年間の確定申告書類を拝見したところ、節税効果はあったと言えます。節税できた理由は大きく2つです。

1つ目は、ヒロさんが短期間で複数の物件を購入したため、必要経費が集中したことです。

物件を購入する際に、不動産取得税や登録免許税、司法書士への報酬など、さまざまな経費が発生します。そうした経費が一時期に積み重なったため、結果的に所得税を下げる効果を生み出していました。

2つ目は、減価償却費の計上です。直近で購入した物件については、建物を躯体と付属設備に分けて、より多くの減価償却費を計上できるようになっていました。それにより、より税金を圧縮する効果はあったと思います。

ヒロ

:ひとまず節税効果はあったということで良かったです。

黒瀧

:机上の計算ですが、2021年の確定申告書をもとに計算すると、約188万円の税金圧縮効果がありました。詳細については、後ほど「法人化設立」に関する回答でお伝えします。

ここでは、早稲田に所有する区分マンションを例に、今後ヒロさんに注意してほしいポイントをお伝えします。

直近で節税できていたのは、多額の経費と減価償却費を計上できていたためです。しかし、この物件では2年後に減価償却費が大幅に減少してしまい、節税効果がなくなってしまう恐れがあります。

ヒロ

:つまり、どういうことでしょうか。

黒瀧

:この物件の2023年の収支表を確認すると、銀行への元金返済が約57万円、減価償却費が約90万円となる予定です。つまり、元金返済額よりも減価償却費が上回っていることを意味します。

※ヒロさんの場合、事業所得と不動産所得の赤字(損失分)は、給与所得で全額相殺できるため、損失繰越は発生していません。

黒瀧

:しかし、2024年を確認すると、元金返済額は変わらないのに対して、減価償却費が約24万5000円に減少しています。2023年の状況から一転し、元金返済額が減価償却費を上回ってしまいます。この時点で「デッドクロス」が発生してしまいます。

ヒロ

:デッドクロスという単語は見聞きしたことがありますが、あまり理解できていません。

黒瀧

:デッドクロスとは、減価償却費よりも元金返済額が上回る状態のことを言います。

黒瀧

:元金返済額と所得税率が将来的に一定であると仮定した場合、2023年までは約1万7000円の税引き前利益があります。

一方、会計上では減価償却費のマイナスによって、赤字として計算されます。そのため、税金はかからず最終的な税引後キャッシュフローはプラスになります。

しかし、付帯設備として減価償却していた費用が2023年を境になくなってしまいます。その結果、約90万円計上できていた減価償却費は、躯体分のみの約24万5000円に減少することになります。

経費計上できる費用が減少したため、帳簿上ではもともと赤字だった収支が黒字に転じ、税金が急増。結果、税引き後利益は約9万円のマイナスになり、手出しが発生してしまいます。

会計上、黒字になったことは良いことです。しかし、日本は超過累進課税なので、利益を出すほど税金も増えてしまうということになります。

ヒロ

:つまり、2024年を起点に経費計上できていた減価償却費が減少したことで黒字に転化。会計上で利益が出たことで税金の負担が増え、結果的に最終的な手残りが赤字になってしまう可能性があるということですね。

黒瀧

:その通りです。経費計上できる金額が減ることで、ヒロさんの場合は住民税込みで約20万円(約65万円分の利益×税率約30%)が税金として跳ね返ってくるようなイメージです。

ヒロ

:なかなかインパクトが大きいですね。

黒瀧

:今後物件を購入する際は、減価償却費を計上できる年数を意識することをお勧めします。年間でどれくらいの経費計上ができるのか、どのタイミングで償却期間が終わるのかをシミュレーションしておきましょう。

特に、元金返済額と減価償却費を比べてみて、元金返済額の方が大きくなるタイミングは要注意です。

ヒロ

:投資全体のシミュレーションだけでなく、物件ごとのシミュレーションも把握することが重要ですね。

黒瀧

:早稲田の物件は、現時点でキャッシュフローを得られているので投資としては成功だと思います。ただ、投資で利益を得ると税金が増えることは当然なので、所得税の負担は致し方ない面もあります。

最終的にどれほどの手出しが発生するかは、すべての物件を通算して計算する必要があるため、物件単体では結論が出ません。

総合的に判断したうえで、例えば早稲田の物件を売却して、新しい物件を購入して追加の経費を作る。不動産投資とは別の投資をして経費を新しく作るなど、対策を検討する必要があります。

では、続けてヒロさんの場合、早急に売却を検討するべき物件があります。売却の話に移っていきましょう。

◇ 

今後も不動産投資を続けていくうえで、年間キャッシュフローがマイナスな状態に懸念を感じているヒロさん。税金面から見て、どの物件を売却すべきなのか、保有するべきなのかを黒瀧税理士に相談しました。

さらに、ヒロさんは個人事業主として物件を購入しているものの、将来的には法人化も視野に入れているようです。黒瀧税理士からは、「サブリース方式」での法人化を行った際にどれくらい節税効果があるのか、シミュレーションを用いた具体的な説明をしてもらいました。

※相談の続きをご覧になりたい方はこちらから

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 (楽待新聞編集部)

○取材協力:黒瀧泰介税理士(社長の資産防衛チャンネル