3Dプリンターを使って積層した建物のパーツ(提供:株式会社ポリウス)

立体物を印刷できる「3Dプリンター」。フィギュアや模型などを印刷できる家庭用のものから、医療分野、自動車業界で活用される業務用のものまでさまざまな種類のプリンターが登場している。

そして近年、「建設用3Dプリンター」の開発も進んでいる。文字通り建物の建設に使用できるプリンターだが、いったいどのように建物を作るのだろうか。また、将来的に3Dプリンターを使ったアパートの建築などは可能となるのだろうか。

建設用3Dプリンターとは

建設用3Dプリンターでは、事前に入力された図面データに基づき、セメント系の材料を塗り重ねて立体物をつくる。こうしてつくられたパーツを組み立てて、1つの建物を完成させる、というのが一般的な流れだ。

建設用3Dプリンターを使うメリットはいくつかあるが、その1つとして人手がかからないことが挙げられる。

ポリウスが開発した建設用3Dプリンター。中央のノズルからペースト状のモルタルが吐出され、建物のパーツを形成する。(提供:株式会社ポリウス)

RC造や鉄骨造のように、基礎工事、屋根工事、内装工事などの工程に分けて工事を行う必要がない。人手もかからないため、建設業界の人材不足解消に役立つと期待されている。

確認申請をクリアした建物も

今年2月、3Dプリンターを使い、日本で初めて確認申請をクリアする建物が建築された。「MAT一級建築士事務所」と3Dプリンターメーカー「株式会社ポリウス」の共同開発で、横幅6メートル、高さ約3メートル、床面積は約18平米の倉庫だ。躯体は通常の建物と同様に鉄骨でつくり、3Dプリンターで印刷した壁を組み立てて建築された。

株式会社ポリウス、MAT一級建築士事務所が3Dプリンターを使って建築した倉庫。(提供:株式会社ポリウス)

「MAT一級建築士事務所」の田中氏は、「3Dプリンターにはコストや工期の短縮というメリットがあるが、確認申請が必要な規模となるとそう簡単ではない」と話す。

躯体の工事費は通常通りかかるため、コストや工期を大幅に圧縮することは難しい。さらに、断熱材や外壁の防水などの工事も必要になる。

田中氏は、3Dプリンター建築のメリットについて、コスト面でなく「自由な造形を作れる点」に着目している。

「3Dプリンターを使えば、従来の建築ではできなかった曲面の壁を自由に作ることができる。これまでにはなかったデザイン性の高い建物を作っていきたい」(田中氏)。

3Dプリンターでアパートはつくれる?

国内の大手ハウスメーカーや工務店の中には、コスト削減などの観点から、建設用3Dプリンターに期待を寄せるところも多いという。

前出のMAT一級建築士事務所と協働し、自社で開発した3Dプリンターで建築基準法に適合する建物を作った「株式会社ポリウス」の大岡氏は、「技術的には、より大規模な建物も建設できる」と話す。アパートやマンションの建築も充分可能だという。

実際、アメリカや中国などでは、2010年頃から3Dプリンター技術の開発が進み、5階建てアパートの建築や1000平米以上の住宅の建築などが行われている。

一方、日本においては、「3Dプリンターで個人向けにアパートやマンションを建築する段階にはない」と大岡氏は話す。

「日本は海外に比べ、建設用3Dプリンターの研究が遅れていると言われています。しかしそれは技術だけの問題ではなく、現状の法律面と適合させにくいなど、ルールや業界体制上の壁も大きいです。建築確認申請のルール等を柔軟にアップデートしていくなど、建設用3Dプリンターを使用する事業者様が安全かつ低コストで手軽に活用しやすいルールや体制を整えることが先決だと考えます」

ただ、建築事例を作り、社会にとってメリットが大きい技術であるとの認知が進めば、建築上のルールの変革や国の支援体制の充実を図れると大岡氏は考えている。

「サプライチェーンの構築などを含め、3Dプリンター住宅が物件種別の新たなジャンルとして確立すれば、収益物件として活用される可能性も大いに高まります」(大岡氏)

開発が進められる3Dプリンター建築だが、日本においては未だ障壁も多い。今後、3Dプリンターを活用した建築事例が増え、マーケットが確立していけば、いずれ3Dプリンターで作った家を収益物件として活用できる時代が来るかもしれない。今後の動向を見守りたい。

(楽待新聞編集部)