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東京の新築マンション価格は、平均年収の13.4倍─。
東京カンテイが昨年発表した2020年のマンションの年収倍率(新築マンション(70平米換算)の平均価格が平均年収の何倍かを示す)は、東京や埼玉、神奈川などで10倍を超えました。それでもなお、売れているのです。
また同じく東京カンテイが発表した、2022年6月の三大都市圏における中古マンション価格(70平米換算)の推移では、首都圏の既存マンション価格は4705万円(前月比0.1%上昇)と、14カ月連続で上昇しています。
マンションや戸建てなど、住宅の売れ行きが好調である要因の1つが「低金利の住宅ローン」にあることは間違いないでしょう。ただし、住宅ローンの現状には少し気になる点があります。それは、「金利上昇のリスク」です。
世界各国でインフレが問題視され、金利が上昇してきている中、日本の低金利はいつまで続くのでしょうか。そしてひとたび金利が上昇となれば、どのような影響が生じるのでしょうか。今回は、住宅市場の弱点になり得る住宅ローン金利について見ていきたいと思います。
住宅ローンはこれからも「変動金利」が主流
まずは、住宅ローンの現在の動向について把握しておきましょう。これを知るには、「住宅金融支援機構」の資料が役に立ちます。
同機構は、民間金融機関と提携して「フラット35」を提供することを主な業務としています。それに伴い、住宅ローンの貸出実績や取り組み姿勢、営業戦略、審査、リスク、証券化の動向などについて、住宅ローンを取り扱う金融機関を対象にアンケート調査を実施しています。
この調査には、都市銀行・信託銀行のような大手行のみならず、地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫も回答しています。回答率は95%程度です。そのため、日本において最も幅広い金融機関まで網羅された住宅ローン調査と言えます。
この調査結果から、住宅ローンの現状を探っていきましょう。まずは、金利タイプについてです。
「2020年度住宅ローン貸出動向調査(調査実施期間2020年7~9月)」によると、「住宅ローンの貸出実績/金利タイプ別構成比(新規貸出額)」は以下の通りとなっています。

住宅金融支援機構「2020年度住宅ローン貸出動向調査」より
2019年度において、新規貸出額の金利タイプ別構成比は、「変動金利型」の割合が最も多かったことが分かります。住宅ローンの新規実行額の75%が変動金利なのです。特に都銀、信託銀における変動金利型の割合は高く、9割弱に達しています。
新規貸出の割合が変動金利型偏重となっているため、貸出残高に占める変動型の割合も増加してきています。以下のグラフのように、住宅ローンの変動金利型は、2019年度において全体の7割弱を占めているのです。

住宅金融支援機構「2020年度住宅ローン貸出動向調査」
なお、最新調査である2021年度住宅ローン貸出動向調査には、2020年度の貸出残高金利タイプ別の構成比は掲載されていません。ただし最新調査では、金融機関の住宅ローンにおける営業戦略がまとめられています。以下のグラフをご覧ください。

住宅金融支援機構「2021年度住宅ローン貸出動向調査」
このグラフにある通り、今後重視する(伸長が期待される)住宅ローンの金利タイプは、「変動型」が最も多く、次いで、「固定期間選択型(10年)」となりました。前回調査との比較では、「変動型」、「全期間固定型」が増加し、「固定期間選択型(3・5・10年)」は減少しています。
したがって、日本の金融機関が貸し出しを行う住宅ローンはこれからも変動型が大きな割合を占めることになると言えるでしょう。
貸出期間は伸び続けている
次に、貸出期間はどうなっているのか見ていきましょう。以下のグラフをご覧ください。

住宅金融支援機構「2020年度住宅ローン貸出動向調査」
新規住宅ローン貸出の約定貸出期間は伸長してきていることが分かります。2019年度において、単純平均の年数は27.0年となりました。
またグラフの下段、「完済債権の貸出後経過期間」も、2019年度において16.0年まで伸長しました。これは少し分かりづらいかもしれませんが、新規に住宅ローンが貸し出されてから、全額返済となった期間を示しています。住宅ローンは繰り上げ返済がなされたり、借換がなされたりします。そのため、当初の貸出期間が長かったとしても、実際の貸出期間は短くなるのが一般的なのです。この実際の貸出期間が16.0年になっているということになります。
このグラフが示していることは、日本における住宅ローンは、貸し出されてから返済するまでの期間が長期化してきているということです。結局のところ、住宅ローンという家計の債務は増加傾向にある(なかなか減らない)と言ってもよいでしょう。
日本の住宅ローン金利は上昇する?
そして、金利です。日本の住宅ローン金利はどのように推移しているのでしょうか。まず、住宅金融支援機構が発表している金利推移は以下となります。
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