「私の1棟目」と題し、先輩大家の「物件購入」初体験について聞くインタビュー企画。今回、自身の1棟目購入の経験を振り返るのは安藤新之助さん。年収400万円のサラリーマン時代に不動産投資を始めて14年、現在は12棟195室を所有し、家賃年収1億5000万円超、年間CF6000万円超となった。

今では複数の金融機関と付き合いがある安藤さんも、1棟目を購入するまでには融資獲得の苦労も経験。なぜ安藤さんは不動産投資を始めたのか。どのような苦労があり、どのように購入に至ったのか。

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不動産投資「考えたこともなかった」

不動産投資を始めようと考え始めたのは34歳のとき。それまでは「不動産投資なんて考えたこともなかった」という。

「30歳の時にそれまでの忙しいIT系の会社から、大手ハウスメーカーに転職をしました。年収400万円とそこまで給料は高くなかったですが、大手なので安定はしていましたね。だから、投資なんてまったく考えていなくて、給料が少ないながらも堅実に生活していこうと思っていたんです」

ハウスメーカーでは、アフターサービスを担う部署に配属となった。1日に約5件、月にすると100件ほど家を買った顧客からの修繕依頼やクレームに対応。厳しい言葉をぶつけられることもあり「精神的に鍛えられた」時代だった。仕事はもちろん大変だったが、「不動産販売の裏方、脇役のイメージのあるアフターサービスですが、『実は主役だ』と思いながらやっていました。やりがいも大きかったですね」と振り返る。

「クレームとなったお客様でも、私たちの働きひとつで、マイナスの感情をプラスに転じることができます。家を売るのは一瞬ですが、お客様はその後長くお住まいになりますから、僕らの仕事は非常に重要だったんです。できるだけ快適に住んでいただけるように、一生懸命働いていました」

一方、ちょうど子供が生まれたばかりで、家族と過ごす時間も充実していた。当時の月のお小遣いは3万円。その大半を子供のお菓子や服などに使っており、自分のために使うお金は少なかったが「子供のものを買うのがとにかく楽しかった」と話す。

マイホームを買い、襲われた不安

仕事やプライベートが充実する中で、なぜ不動産投資家を志すことになったのだろうか。

実は、安藤さんが「不動産投資」という言葉を知ったのは20代半ば。当時働いていた会社の先輩から勧められた、実業家で「お金儲けの神様」とも呼ばれた邱永漢(きゅう・えいかん)氏の著書がきっかけだった。だが、その当時は「こういうものがあるのか」程度で、真剣に取り合うことはなかったという。

真剣に今後の人生について考え始めるのはその数年後。風邪で寝込んでいたとき、ふと目に入った同氏の書籍をもう一度読み直したのがきっかけだ。サラリーマンとはどういうものか、経済とはどういうものか、などがわかりやすく書かれていたといい、その教えに感銘を受けたのだと語る。

「『豊かに過ごすためには利殖が必要。そのために種銭を貯めなさい。そして、最初は株式投資で増やしなさい。最初は怖いかもしれないけど、少額でもチャレンジすると勉強するようになる。それである程度元手ができたら不動産投資が良い』―。簡単に言うと、そんな内容でした。それを読んで、自分も、今のままだったら絶対に豊かになれないぞ、と感じたんです」

大手ハウスメーカーに勤める前は、外資系IT企業で営業として働いていたこともある安藤さん。そこでも成績を出していたものの、ITバブルの崩壊で部署が閉鎖となって転職を余儀なくされたこともあった。

「自分もまだまだやれる」と別の会社に入社したが、新天地で思ったように活躍できず、悔しい思いをしたり、妻に「出勤する」と告げて図書館で1日過ごしたりした経験もある。「もし自分が勤められなくなったら、子供や妻はどうなるんだろう」という不安に襲われたことで、「何かやったほうが良いのでは」と考えたという。

決定的だったのは、マイホームを買ったことだった。「マイホームを買ったから不動産投資は無理だな、とは思ったんですが(笑)、余計に不安が募ってきたんですよ。ローンを返していかなくてはいけない。やっぱり何かやらなくては…と」。もう一度邱永漢氏の書籍を読み直し、さらにロバート・キヨサキ氏の『金持ち父さん 貧乏父さん』も読んだ。

「すごくショックでしたね。『金持ち父さん 貧乏父さん』の中には『マイホームは負債だ』とあるんですが、まさに自分は貧乏父さんだった(笑)」

そこから、あらゆる不動産投資の本を読み漁り、不動産投資セミナーに足しげく通い、本格的に不動産投資を勉強する日々が始まった。

「申し分ない物件」に買い付け、トントン拍子のはずが

一方、書籍の教え通り、元手となる種銭もしっかり準備していたと安藤さんは話す。家計には一切手をつけず、自分がコツコツ貯めた数十万円のへそくりを中国株に投じた。最初は損も多かったが、「損をするともっと勉強しよう、と思うし、含み益が出るともっと頑張ろうと」。損をしたら授業料だ、もう一度稼げばいい、と思いながら株式投資を続けて約2年、1000万円貯めたところで、いよいよ物件購入に踏み出すことにした。

物件を探すため、最初は不動産会社をインターネットで検索し、1件1件当たって回った。だが2007年当時、個人が行う不動産投資の認知度はそこまで高くなく、電話をかけても冷やかしだと思われたり、疑われたりしたという。そんな中で、知人のツテで不動産会社と知り合うことができ、物件情報を得た。「利回り7~8%が相場の中で、その物件は10%超。すごくいいな、と思ったのを覚えています」

安藤さんの1棟目は、愛知県内にある当時築17年のRCマンションで、購入価格は1億1000万円。表面利回りは11%強という物件だ。「市の中心部で賃貸需要が高く、めったに出ないだろう、という場所に建っていました。土地も整形地で、南北の道路に面している。出口も見やすく、環境も良く、『これを逃したら次はないだろう』と思うくらいの申し分のない物件でしたね」

迷う余地もなく、購入を即断してすぐに買い付けの電話を入れた。それまで、物件探しと並行して愛知県内にある60もの金融機関に融資を打診してきていた。「撃沈してばっかりだったんですが、その中でも数行、前向きに検討してくれそうな金融機関がありました。それで、買い付けを入れたタイミングでその金融機関に話を持っていったところ、『いい場所ですね、いいですね』と好感触だったんです」

無事買い付けも通り、いよいよ不動産投資家への第一歩を踏み出す―。そう意気込んだ安藤さんだったが、そう簡単に事は進まなかった。突如、購入の話が白紙になったのだ。

流れた購入話、数カ月後に戻ってくるも…

買い付けが通って数週間が経った時、売り主側の仲介会社を交えた打ち合わせの場が予定されていた。

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