
PHOTO:Ushico / PIXTA
2021年10月に国土交通省が、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表しました。同ガイドラインは、単身高齢者が物件で孤独死した際の告知義務に関して参考になります。
近年、少子高齢化や人口減少などが問題となっており、不動産オーナーが入居率を上げるために、単身高齢者を入居させることを選択肢に加える人もいると思います。とはいえ、さまざまなリスクも抱えることになるでしょう。
1つの事例として、今回は「所有物件で入居者が孤独死してしまった場合、その物件の原状回復費用は一体誰に請求することができるか」ということを考えていきます。今後起こり得る問題でもあるため、不動産オーナーとして理解しておくことは大切です。
そもそも、原状回復義務とは
まず、「原状回復義務」について一般的な内容を確認していきましょう。
契約解除や期間満了などを理由として賃貸借契約が終了した後、賃借人が賃貸物件に必要な修繕をして、賃貸人に返還するというのが典型的な例です。
実際は、賃貸人が内装業者に依頼して修繕をしてもらい、その修繕費用を賃借人から預かっていた敷金で相殺します。その際に、敷金で相殺しきれなかった費用を賃借人に請求するというケースが多いでしょう。
しかしながら、原状回復義務は借りた時の最初の状態に戻す義務というわけではありません。賃貸物件に居住していれば、通常の使用での損耗は発生しますし、経年劣化も起こります。こういった通常損耗や経年劣化は原状回復の対象とならず、修繕する場合は賃貸人の費用負担になります。
また、賃借人の責めに帰すべき理由がない修繕についても、原状回復の対象とならず、賃貸人の負担になります。
これらは、2020年4月1日施行の民法第621条で定められており、今までの裁判実務を条文化したものと言われています。
民法621条
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。
原状回復費用は誰に請求?
では、所有物件で孤独死が発生した場合、室内の原状回復費用は誰に請求すればいいのでしょうか。2つの事例を見ていきましょう。
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