PHOTO:ゆらぎ/PIXTA

前編では、来年10月からはじまる「インボイス制度」によって大家さんが受ける影響や、大家さんがとるべき対応について基本的な考え方をお伝えしました。

大家さんがインボイス登録をして消費税の納税義務がある「課税事業者」になると、賃料と一緒に得ていた消費税分の「益税」がなくなります。さらに、原状回復費や建物の売却代金などの「隠れ課税売上」が発生して、思わぬ税負担を課される可能性があります。インボイス登録をせずに、テナントへの値引きなどで対応した方が経済的な負担を抑えられる場合もあります。

後編では、実際にどれぐらいの賃料収入ならインボイス登録をした方がよいのかや、どのタイミングでインボイス登録をすればよいのかなどの疑問に、Q&A形式でお答えしていきます。

 

Q1 すでに課税事業者なのですが、インボイス登録をするデメリットはありますか?

A すでに課税事業者であれば、デメリットはありません。

免税事業者がインボイス登録をする場合、消費税の課税事業者にならなければなりません。このとき、今までは受け取った消費税を納税しなくてもよかった(=益税)ものが、納税することになるというデメリットが生じます。

一方、課税事業者であればそもそも消費税の納税義務があるため、インボイス登録をしても納税については何も変わりませんので、デメリットもありません。逆に、インボイス登録をしないと、テナントが仕入税額控除できなくなってしまいます。最悪の場合、値下げを要求されたり、退去されたりする可能性があるため、登録した方がよいでしょう。

前編でもお伝えしましたが、免税事業者の場合には、納税義務者になる方がよいか、値下げをした方がよいか比較検討したうえで、インボイス登録をするかどうかの判断が必要です。

 

Q2 インボイス登録事業者は、毎月、登録番号を記載した請求書(インボイス)を発行しなければいけないのでしょうか?

A 必ずしも毎月請求書を発行する必要はありません。

インボイスは借り主であるテナント入居者にとって、仕入税額控除をするために必要不可欠なものです。しかし、テナント入居者に毎月、家賃の請求書を発行している大家さんは少ないのではないかと思います。家賃の金額が毎月変わらないため、口座引き落としや口座振り込みがほとんどでしょう。請求書を毎月発行するのは、手間だと感じる方が多いでしょう。

そこで、毎月請求書を発行しなくても、「インボイス」の要件を満たす方法があります。賃貸借契約書をインボイスの一部として利用する方法です。インボイスは、請求書やレシートに限らず、必要事項が満たされている書類であればよいのです。

インボイスに記載されている必要があるのは、以下の6項目です。すべての項目が1枚の書類にまとまっている必要はありません。

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