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昨年から国家資格となった「賃貸不動産経営管理士」。国家資格となってから2回目となる今年度の試験が11月20日に行われる。受験申し込みは今月15日から9月29日まで受け付けている。昨年度は3万2459人が受験し、合格率は31.5%だった。

賃貸物件のオーナーなら、この資格の名前を耳にしたことはあるという人も多いだろう。「賃貸不動産経営管理士」とはいったいどんな資格なのだろうか? 不動産系資格に詳しいKenビジネススクール代表の田中嵩二氏は「資格のための学習を通して、賃貸不動産の管理会社の義務や役割を体系的に学ぶことができる。不動産投資を有利に進める上でも役に立つことがあるでしょう」と話す。

不良業者の排除と業界の健全な発展が目的

「賃貸不動産経営管理士」は、そもそもどのような資格なのだろうか。まず、もともと民間資格だったのが、国家資格になった背景から確認していこう。

2021年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)が施行された。田中氏によると、法律が制定された背景には、いわゆる「かぼちゃの馬車事件」がある。同事件に代表されるサブリース契約では、管理事業者と賃貸オーナーとの間で家賃保証などの契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題化した。

この法律では、不良業者を排除し、業界の健全な発展・育成を図ることなどを目的に賃貸住宅管理業者の登録制度を創設。賃貸住宅管理業を営もうとする管理戸数200戸以上の事業者は、国土交通大臣の登録を受けなければならなくなった。

賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、管理業務を行う「賃貸住宅管理業」は、営業所または事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験などを有する業務管理者を1名以上配置しなければならない。そして、この「業務管理者」になるためには、賃貸不動産経営管理士または宅建の資格が必要とされる。

国家資格化で人気? 受験者数は2割増加

一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会によると、受験申込者数は、国家資格になってはじめての昨年、3万5553人と前年比約20%増加した。受験申込者数は年々増加傾向にあるが、「国家資格になったことで、不動産業界を中心に企業が社員の資格取得を促すなど、今後も受験者の増加が予想される」(田中氏)という。有資格者数は今年6月時点で7万3130人に上る。

賃貸不動産経営管理士の受験申込者数の推移(一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会のHPより)

不動産会社の社員などが必要に迫られて受験するケースも多いようだが、不動産投資家にとっても役立つ可能性が高いと田中氏は強調する。

「知識を持たずに不動産投資をはじめるとリスクが高くなります。不動産会社と契約する際に、不動産会社はどのような法律の縛りがあって、どういうことをしないといけないかを理解していれば、自分に不利にならないよう交渉を進めることも可能でしょう」

合格率は3割、今後は難しくなる?

では、賃貸不動産経営管理士の資格を取るためには、どのような対策をすればよいのだろうか。一般的に合格するのに3か月程度の勉強が必要といわれている。

近年の賃貸不動産経営管理士の合格率をみると、2013年度は85.8%だったが、昨年度は31.5%と年々低下傾向にある。受験者数と合格者数はいずれも増加傾向にあるが、受験者数の増加などを背景に合格率は低下傾向にあるようだ。一方で、合格のボーダーラインは上昇傾向にあり、昨年度は50点満点(50問)中40点だった。

田中氏は「試験問題は年々難しくなっているが、受験者のレベルも上がっているので、合格点が上がっている」と指摘。試験対策については「過去問は現行の試験よりも簡単なため、過去問だけでなく予想問題を解くなどの対策が必要になるでしょう」とアドバイスした。

今年度の賃貸不動産経営管理士試験の実施要領や申し込みはこちらから。

(楽待新聞編集部)