物件に至るまでの私道。他人の所有地で、通行するためには所有者に交渉する必要がある(読者提供)

「私道トラブル」について解説するこの企画。前回の基礎編では、「通行権」「掘削承諾」などトラブルに発展しやすい内容について理解を深めてきた。

今回は、「通行権」や「掘削承諾」で想定外のトラブルに遭った投資家の実例を3つ紹介する。中には、私道が原因で数千万円の損切りを余儀なくされた投資家もいた。なぜそのようなトラブルになってしまったのか、詳しく見ていきたい。

Case1:掘削承諾得られず、3カ月工事ストップ

私道の掘り起こしなどの工事をするには、私道所有者の承諾が必要になる。その承諾が一向に得られず、入居付けができずに困ったという経験をした人もいる。

神奈川県郊外に約600万円で賃貸用の戸建てを購入した「げんた」さんもその1人だ。3LDKのファミリータイプの物件で、公道と公道を結ぶ私道に面している。この私道は6人の共同持ち分になっている。

げんたさんは物件購入時、「持ち分がなくても、トラブルに発展することはないだろう」と考え、私道持ち分の購入は打診しなかった。さらに「通行・掘削承諾書」も必要性を感じず、なくても問題ないだろうと考えたという。

購入から約6年後、入居者が退去したタイミングで物件の状況を確認したげんたさん。物件の隅々まで点検していると、ガス管の異常が発覚したという。業者に詳細を確認してもらうと、ガス管を一度掘り起こし、異常個所を確認する必要があると判断された。しかし、ガス管は共同持ち分となっている私道の下に埋設されている。

そこで、げんたさんは初めて私道の共有持ち分者全員から「通行・掘削承諾」を得る必要に迫られた。「修理業者からは、共有持ち分者全員から掘削の承諾を得ていない限り、工事に着手できないと言われてしまいました」と話す。そこで、承諾を得るために共有者巡りへと動き出した。

近隣に住んでいた共有持ち分者5人には、特に問題なく口頭で承諾を得ることができた。しかし、問題は残りの1人。この共有持ち分者は法人だったが、担当者は遠方の支店にいて、常に忙しく全く連絡がつかない。

「その法人から承諾をもらえない限り、掘削工事は進められません。何度も何度も連絡しましたが、担当者には全く連絡がつかず、手の打ちようがありませんでした」とげんたさんは振り返る。

連絡を取り始めて3カ月ほどが経過したある日、やっと担当者と話をすることができた。「担当の方に事情を話すと、すんなり許可をもらえました。すぐに作成した承諾書に捺印をもらいました」。

3カ月の間に、その他の共有持ち分者と書面でのやり取りを済ませていたげんたさん。その後の工事は滞りなく進めることができたそうだ。

承諾書の取得に非常に苦労したことをきっかけに、げんたさんは物件の売却を決めた。「手間がかかるわりに、家賃は約5万円とそこまで利益は得られない状況で、バカバカしいなと正直思いました」。

今回の騒動の結果、通行掘削の承諾書を取得できたことが売却への大きな後押しになったという。売却価格は約600万円で、諸費用などの支出を除けば、最終的な収支はトントンくらいだったと話す。

承諾書の取得が遅れれば、物件の空室期間は延び、機会損失はさらに膨れ上がってしまう。購入を急いでいないのであれば、売買契約前に共有持ち分者全員から通行掘削の承諾は取っておくことでトラブルは回避したい。

Case2:多額の金銭要求され…約2000万の損切り

掘削の承諾をお願いすれば、大半の人は問題なく承諾してくれるかもしれない。しかし、共有持ち分者に承諾を反対され、さらには多額の金銭を要求されたというケースも実際に存在する。

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