土地を仕入れて新築物件を建てる、いわゆる「土地から新築」。この投資手法の基本的な考え方をまとめた連載企画「土地から新築」の番外編として、本編に登場した一級建築士の「わん」さんと、土地から新築を専門に行う「ひーやん」さんに加え、お2人と親交のある投資家「黒神様」を招いた座談会を開催しました。
前編につづき後編では、どのような目線で土地を探せばよいのかについて語っていただきます。土地を探す際、「歪み」に着目するという黒神様。楽待で見つけた「ひと癖ある土地」にアパートを建てたこともあると言います。ベールに包まれた黒神様の投資手法の一端も明らかになっていきます。
【参考記事】本編で「土地から新築」の基本を学びたい方はこちら。
土地探しで注目すべき「歪み」とは
―価格高騰や競争相手の増加で、東京近郊で目線に合う土地を見つけるのが難しくなっていると思います。どのように土地を探せばよいのでしょうか?
わん:限られた敷地面積でなるべく戸数を多く入れるには、前面道路の幅員が広いとか、敷地の間口が広いとか、高さの制限が厳しくない土地が理想ではありますよね。
でも、そういう条件のいい土地はすぐに売れてしまいます。階数の高い建物を建てられるのでRCとも競合しますし、土地の値段も高くなります。木造アパートを建てるなら、RCを建てにくい土地を狙うのがいいと思いますね。
黒神:私が最近建てた木造アパートも「RC向きでない土地」を探して建てました。横浜市のJR駅から徒歩2分の土地なんですが、前面道路幅員が4メートル以下と狭いので、道路斜線の影響で4階以上は建てるのが困難です。
さらに、道が狭いからRCや鉄骨で建築するのに必要な柱や大型の重機も入れられないので、競合が少なく、手に入れることができました。
わん:RCは木造より建築費が高いので戸数を増やさないと利回りが確保できませんからね。敷地面積が広いわけでもなく、高さが制限されてしまう土地にRCの賃貸住宅を建てようとする人は少ないですね。
―横浜市の駅周辺だとマンション需要も高そうですが、道路幅員が狭くてRCが建てにくい場所もあるんですね。
わん:そうなんです。ただ、都市部の駅前エリアなどの建物が密集したエリアは、大規模火災を防ぐために「防火地域」に指定されていることが多いです。防火地域では原則、階数が3階以上または延床面積が100平米を超える建物は、火災で倒壊しない「耐火建築物」にする必要があります。
木造アパートを耐火建築物にするには、不燃材料の部材を使用したり、窓やドアなどの設備を防火性能の高いものにしたりする分、建築費がかさむので、防火地域にわざわざ木造の耐火建築物を建てるケースは少ないです。
―駅前の立地だけど、RCも木造アパートも建てにくい、というわけですね。黒神様が建てたエリアも駅前なので「防火地域」だったんですか?
黒神:その通りです。防火地域なので、耐火建築物で建てました。一般的な木造アパートを建てるより、コストは高くなりますが、好立地の土地を割安に取得できるメリットの方が大きい場合もあります。
わん:一般的に耐火は準耐火に比べて1.5倍くらい建築費が高くなります。耐火の4階建てとなると割高感が出てきますが、耐火の3階ならそれほどコストアップはしないかもしれませんね。
―なぜこの土地にあえて耐火の木造アパートを建てることにしたんでしょうか。
黒神:RCも木造アパートも建てにくいという土地は、駅前でも意外と土地値が高くならないんですよね。私は以前からこういうひと癖ある土地を狙っているんですが、今回は諸条件がうまくはまって実現できました。
―黒神様が不動産投資をする上で重視している「歪み」とは、こういうことなんですね。
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