物件購入を検討する際、多くの投資家は「物件資料」の確認から購入判断を進めていく。一方、資料に書かれた情報の判断方法がわからず、悩む人が多いことも事実。
この連載では、各回1人の不動産投資家に物件資料を見てもらい、物件資料チェックの仕方を確認していく。基準や判断の方法は人によってさまざまだが、参考の1つとしてほしい。
今回確認するのは以下の3物件だ。いずれも中古の区分マンションで、エリアは東京と札幌だ。販売価格は190万~750万円となっている。
今回これらの物件資料をチェックしてもらうのは、区分マンションを中心に1棟14室を運営する「強制脱サラ大家」さんだ。2016年より実践大家コラムニストとして活躍し、北海道、東京、大阪、福岡などさまざまなエリアで物件を保有。区分マンションオーナーとして6物件で管理組合の役員を務めるなど、事業運営にも積極的に関わっている。
区分マンションの購入にあたっては、管理費や修繕積立金など、一棟ものにはない項目の確認が必要になる。検討すべきポイントについて、実際の物件資料を見ながら教えてもらった。
※注:いずれも、実際の物件をもとに楽待新聞編集部が作成した架空の物件です
※動画でご覧になりたい方はこちら
■物件1:東京都練馬区の区分マンション
■物件2:東京都足立区の区分マンション
■物件3:北海道札幌市豊平区の区分マンション
今回は、物件概要書と間取り図を用意している。本編に入る前に、まずは、読者の皆さま自身でそれぞれの資料を読み込んでみてほしい。自分なりの基準で十分に検討した後、「答え合わせ」をするつもりで先輩投資家のチェック方法を確認しよう。
判断のポイントは?
普段物件を購入する際は、「区分所有したいマンションを事前に選んでおき、部屋が出しだい買う」という方法を取っているという強制脱サラ大家さん。購入価格の基準など細かい部分まで検討しておき、条件に合う物件が売りに出た際に速やかに購入できるようにしている。
スピード勝負に強くなるのはもちろん、「本当にこの物件が欲しくて、事前に情報を集めていたんです」と伝えると不動産会社からの反応もよいそうだ。
事前に購入判断を進めるためには、物件資料のチェックや現地見学といった情報収集が欠かせない。物件資料をチェックする際、強制脱サラ大家さんは次の3点を大切にしているという。
(1)高値づかみしない
「単純に物件の値段を見るだけでは、その値段が安いのか高いのか判断することはできません」と強制脱サラ大家さん。インターネットを使って過去の売出し価格や現在の家賃など、可能な限りの情報を集めて総合的に判断し、「本来の価値より高い値段で買わない」ことが必要だという。
例えば、とある物件の売出し価格が500万円とあった場合、その物件が過去に800万円程度で取引されていたのであれば「安い」、200万円程度で取引されていたのであれば「高い」と判断できる。
物件の相場と同等の値段か、できれば安い状態で買えるよう意識しているという。気になる物件があれば、部屋が売り出される前に得られる限りの情報を集めておくなど、タイミングを逃さないための事前準備も欠かさない。「含み益がある状態に持っていってから購入したい」と話した。
(2)リフォーム費込みで収支をシミュレーションする
見かけ上は高利回りの物件に、思わぬ落とし穴があることも。中古物件では特に、資料の情報を鵜呑みにせず、物件の本当の値段を冷静に見極めることが必要だと忠告する。
オーナーチェンジで購入する場合は、退去リスクを考慮に入れる必要がある。家賃の下落に加え、リフォーム費用がどれだけかかるかを忘れずに検討したいと話す。長期で入居していた場合は一度もリフォームが行われておらず、部屋内の傷みが激しい可能性もあるからだ。
空室で購入する場合も同様だ。特にお金がかかる水回りをはじめ、どこにどの程度のリフォームが必要なのかをよく見極めることが重要だという。物件価格にリフォーム費用などを足し、トータルではじき出された金額が適切かどうかを判断したいと話す。
(3)「勝てる物件」を選ぶ
「いくら安く買えても、埋まらなければマイナスです」。周辺の物件と比較されたときに「勝てる」力がある物件かどうかを必ず考えるようにしているという。
家賃や設備、立地、スーパーマーケットや大学が近いといった周辺環境などをあげ、「どのような要素でもよいですが、周辺物件と差別化でき、自分の物件を選んでもらえるポイントがあるかどうかが大切です」とまとめた。
逆に言うと、ライバルとなる物件が多すぎる物件はかなり難易度が高いと考えているという。「ライバル物件が並ぶ中で自分の物件を選んでもらうにはどうしたらよいか」という視点で普段から物件を見るようにし、買う段階で対策まで考えるように意識すると話した。
■物件1:東京都練馬区の区分マンション
1つ目にチェックしたのは東京都練馬区の物件だ。
新江古田駅から徒歩6分の練馬区の物件だとあるが、新江古田駅自体は中野区にある。これを見た強制脱サラ大家さんは、「練馬区と中野区のちょうど境目あたりにある物件かもしれません。そうすると駅の北側か西側になるでしょうから、武蔵大学や日本大学のキャンパスが近くにありそうです」と見当をつけた。
物件は5階建ての3階部分。このエリアは住宅の高さに制限がかからない第一種中高層住居専用地域であるため、本来は5階建てよりも高い建物を建ててもよいことになっているはずだ。
しかし、ポータルサイトで検索してみても、近辺には同じ階数の物件が並んでいる。これを見て、「条例か何かが出ていて、高さが制限されている可能性があります。あとから近くに大規模マンションができてしまうなどといった心配はなさそうです」と考察した。
◯階数の検討はエレベーターに注目
続いて、備考欄の「エレベーター付き」に着目。「投資用マンションの場合、5階建て程度の物件は階段のみであることが多い印象です。この物件はしっかりエレベーターがついているということで、競争力がありそうです」と話す。
物件にエレベーターがない場合、上層階の入居付けが厳しくなりがちだという。では階段を上らなくてすむ1階ならよいのかというと、そうとも言い切れない。「特にバブル期に建てたものだと、1階部分が道路より下に下がっている物件もよく見る気がしています」と強制脱サラ大家さん。そうした物件の場合、1階の部屋の中が丸見えになる可能性があるため、人通りが多いエリアでの投資は注意が必要だ。
しかし、道路に面しておらず専用の庭があるなど、プラス要素がある物件もあるという。「1階だから、上層階だからその物件は良くないということはなく、個別の確認が必要です」とした。
◯3点ユニットに入居はつく?
間取りを確認し、「クローゼットがやや小さいですが、洗濯機置場もありますし、全体的にはいいんじゃないですかね」と強制脱サラ大家さん。3点ユニット物件であることも課題だが、
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