
PHOTO: masa / PIXTA
不動産にかかる税金には、取得時にかかる「不動産取得税」、譲渡時にかかる「所得税(譲渡所得)」などさまざまあります。その中でも「固定資産税」は保有期間中、毎年払わなければいけない税金です。毎年4月から6月ごろに不動産オーナーのもとに納税通知書が届き、みなさんはそれに従って納付していると思います。
固定資産税は、市町村が納めるべき金額を計算し、納税者に通知する「賦課課税方式」です。自分で納める金額を計算して納税する「申告納税方式」の所得税などとちがって、計算方法がベールに包まれているという印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、固定資産税がどのように決められているのかについて、基本的なルールを紹介していきます。固定資産税の評価方法についての知識を身に付けることで、納得感を持って固定資産税を納めることができますし、万が一、固定資産税の算定に誤りがあった場合に気付くことができるかもしれません。
目次
固定資産税評価は「現況」が優先される
まずは、固定資産税の基本的な事項を整理しておきます。
固定資産税は、土地、建物を所有しているすべての人にかかる税金で、不動産の所在地の市町村が課税する「地方税」です。税率は、通常1.4%(このほか都市計画税が0.3%)で、「固定資産税評価額」に税率をかけて算出します。固定資産税評価額は、土地ごとに定められていて、公示価格の70%程度となっています。
固定資産税評価額は「宅地」や「畑」などの地目によって変わります。一般的に、農地は宅地と比べて安くなります。この地目は登記簿上のものと、現在どのような用途で使われているかの「現況」があります。固定資産税評価額の算定にあたっては現況が重視されます。
つまり、登記簿上の地目が現況と異なる場合には、現況地目が優先されるということです。例えば、登記簿上の地目に「畑」とあっても、現況が「宅地」であれば、宅地として課税されます。
では、その土地がどのように使われているかは、誰がどのように確認しているのでしょうか。
その調査方法について、都道府県や市町村の税目や徴収の手続きを定めた地方税法では、以下のように規定しています。
地方税法408条
「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査させなければならない。」
固定資産税を課税する市町村は、少なくとも毎年1回は各土地について、従来からの用途から変更がないかなどを実地調査しなければならない、とされています。この規定に基づいて、市町村は調査を行っています。未登記建物でも固定資産税が課税されるのも、この現地調査で確認されているからです。
ところで、本当に1年に1回現地確認をしているのでしょうか?
東京都の場合、新築や増改築された家屋に固定資産税を課税するため、原則として毎年1月1日時点で23区内全域の空撮を行っています。前年の航空写真と比較して、対象となる家屋を発見した後、職員による現地調査を経て、課税額を決める仕組みになっています。
国土交通省が実施した調査で、固定資産の現況調査のための空中写真を「撮影したことがある」 と回答した市町村は、全体の73%にあたる1062件でした。一方で、撮影周期についてのアンケートでは、毎年撮影しているところは約10%にとどまっています。空撮は過半数の市町村が利用しているものの、毎年の調査は行っていないところがほとんどという実態がわかります。

出典:国土交通省国土地理院「固定資産税調査用空中写真撮影の実態に関する調査業務」
評価額の見直しが「3年に1度」のワケ
上記のアンケートによると、3年ごとの周期で撮影している市町村が約45%を占め、最も多くなっています。3年ごとと回答した市町村が多い背景には、固定資産税評価額の見直しが3年に1回となっていることがあるとみられます。
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有しているオーナーに課税されます。毎年課税するのであれば、その都度評価をして、固定資産の価格を決定するのが公平性の観点からよいと言えるでしょう。
しかし、これらすべての土地を毎年調査していたら、評価事務に係るコストが莫大となってしまいます。土地は一筆ごとに登記されますが、その数は全国で1億7000万筆あるといわれています。
税金を課すために、多くの税金をかけるのは本末転倒と言わざるを得ません。ですから、土地及び家屋については、その課税標準である価格を、原則として3年間据え置くこととされています。
築古家屋でも評価額が下がらないのはなぜ?
一般的に建物は、年数が経つごとに価値が減少していくと考えられています。ところが、築年数が古いわりに固定資産税が高いと感じることもあるのではないでしょうか。その理由は大きく2つあります。順番に説明していきます。
理由1:再建築価額を基準として評価しているから
家屋の評価は、同じのものを新築する場合に必要な建設費(再建築価格)から求めます。再建築価格は、「屋根」、「外壁」、「天井」などのパーツごとに固定資産評価基準に定められています。パーツごとの評点数を積み上げることで求めます。
再建築価格は、評価時点で新築を建てるとしたらいくらで建築できるか、という金額です。建築費が高騰している状況では、家屋の評価額が高くなるのです。3年に1度行われる固定資産税の「評価替え」でこうした価格の変化を反映しています。
もちろん再建築価格から、経年による減点補正(価値が減っていく分を反映)があります。しかし、建築費が高騰していると、減点補正を考慮しても、前回の評価から減額しない場合があります。評価額が前年度を超えることとなる場合は、その評価額は前年度の価額に据え置かれ、増額されることはありません。
理由2:残存価額が2割残るから
この連載について
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大家さん専門税理士、渡邊浩滋総合事務所副所長の大野氏が、大家さんが知っておくべき税金の知識を「これ以上はムリ!」というくらいやさしく解説。小手先のテクニックではなく、「節税に必要な正しい知識」をイチから学ぶことができる連載です。
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