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不動産オーナーなら毎年納めている「固定資産税」。前編では、この固定資産税がどのように決まっているのかを理解していただくための基本的なルールについてご紹介しました。

固定資産税が高いと感じていても、オーナーは役所から送られてくる納付書にしたがって納めるしかありません。それがどのように計算されたのか、ベールに包まれた部分も多い印象があるのではないでしょうか。

後編では、固定資産税を取られすぎていないかを確認する方法や、固定資産税に誤りがあった場合に修正してもらうための方法について、お話していきます。

なぜ固定資産税に誤りが発生するのか

固定資産税は、市町村が納めるべき金額を計算し、納税者に通知する「賦課課税方式」の税金です。

納税者が自ら納めるべき金額を計算する「申告納税方式」の場合、確定申告の内容が間違っていたために「修正申告」をするケースがあります。では、「賦課課税方式」の税金である固定資産税を、役所が誤って課税することはないのでしょうか?

少し古い資料にはなりますが、2009(平成21)年度~2011(平成23)年度の間に、固定資産税の「税額修正」をした納税者が1人以上いたと回答した市町村の割合は下記のとおりです。

《固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果》平成24年総務省資料

この表を見ると、全国の市町村の97%で固定資産税の課税にあたって何らかの「誤り」があったことがわかります。

この表からは、税額修正が実際に何件くらいあったのかはわかりませんが、少なくともほとんどの市町村で毎年発生していることがわかります。このほかに、誤りがあっても修正されていないケースや、誤りが発覚していないケースも考えられるでしょう。

ここからは、固定資産税の算定にあたって、誤りが発生する原因について考察していきたいと思います。

固定資産税は、各市町村が作成する「課税台帳」に基づいて課税されます。課税台帳とは、不動産の所有者や評価額などを記載した帳簿のことです。土地や建物を取得したり、建物を新たに建築したりした場合は所有者は登記をします。この登記された情報をもとに、市町村は不動産の情報を把握し、課税台帳を作成しています。

現在のように行政データの電子化が進んでいなかった頃は、人の手で登記情報を課税台帳に転記していたと思われます。

国内には、土地だけでも1億7000万筆があると言われています。これらすべてについて、役所の職員が誤りなく管理できているとは言い切れないのではないでしょうか。

たとえば、同じ市に住んでいる同姓同名の人が2人(仮にAさん、Bさん)いる場合もあります。このようなケースで、Aさんの所有している土地が、Bさんの課税台帳に載っていたということも珍しくありません。

役所から届く納税通知書が必ずしも正しいとは限らないのです。みなさんが提出した所得税や法人税の確定申告書が税務署にチェックされるように、市町村が計算した課税明細をみなさんがチェックする必要もあると思います。

そこで、土地の固定資産税の見直し方法をご紹介したいと思います。建物については、専門知識がないと難しく、個々の建物によっても異なるため、今回は専門知識がなくてもチェックしやすい、土地を中心に取り上げたいと思います。

納税通知書に記載ミスがないか

固定資産税の誤りの多くは、転記ミスなどの単純なミスです。

私のクライアントであるオーナーさんは、鉄骨造りのアパートを所有していて、登記簿上の表記も鉄骨造りになっていますが、固定資産税の課税明細書には10年以上もの間、「鉄筋コンクリート造り」と表記されていました。

「鉄骨造」よりも「鉄筋コンクリート造」の方が、固定資産税の評価額が高くなります。高い評価で固定資産税が課税され続けていたのです。

固定資産税の誤りを見つけるための最も簡単な方法は、納税通知書の課税明細をチェックすることです。

課税明細書のサンプル(出典:横浜市HP)

不動産の登記事項証明書と照らし合わせて、以下の項目に異なる部分がないかチェックしてみましょう。

・対象土地、建物

・名義

・面積(地積、床面積)

・地目

・建物の構造

なお、区分建物の場合、面積が登記上の面積と異なる場合があります。登記簿上の面積が専有面積なのに対して、固定資産税の「課税床面積」は、共用部分も含めた面積になっているからです。

分譲マンションを例に挙げると、1室の面積(内法面積)が専有面積です。これに廊下やエントランスなどの共用部分を1室ごとに按分した面積を足したものが「課税床面積」となります。

住宅用地の特例を活用できているか

前編でもお伝えしましたが、住宅用地は税負担が大きくならないように評価額を最大6分の1に減額する特例があります。この特例が正しく適用されているかどうかも、課税明細でチェックする必要があります。

例えば、店舗を経営していて非住宅用地として課税を受けていた人が、店舗を閉店したり規模を縮小して、その部屋を居住用に変更した場合です。今まで通り、すべてが非住宅用地として課税されたままのケースがあるので注意が必要です。

このような場合に特例を適用するには、東京都では「固定資産税の住宅用地等申告書」の提出が必要となります。ただ実際には、役所の担当者に来てもらって現況確認ですむ場合もあるようです。

このように特例が適用されるかどうかで、固定資産税評価額に大きな差が出ます。最大限に活用できれば、固定資産税が減額される可能性があります。以下の3ステップで確認していきましょう。

 

ステップ1.住宅用地の特例が適用されているか

固定資産税の課税明細には、住宅用地の特例が適用されている旨の記載や記号が付されています。東京都23区の場合、摘要欄に「小規模住宅用地」などの記載があります。住宅用地であるにもかかわらず、この特例が適用されていないこともあります。

ステップ2.小規模住宅用地を増やせないか

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