「分譲マンションコレクター」を自称し、ファミリータイプを中心に分譲マンションのみ41戸を保有する不動産投資家がいる。「ひろしま大家の会」の代表でもある横山顕吾さんだ。

分譲マンション専門の管理会社に勤めるサラリーマンだった2012年、最初の物件を購入。10年で現在の規模まで拡大した。地元である広島市を主な投資エリアとし、総投資額は3億8000万円、保有物件の表面利回りは平均10%以上という。

「分譲マンションは、古いものこそ安心」と語る横山さん。管理状態の良い中古マンションをメインで購入し、保有物件の平均築年数は30年近い。だが融資は「最低でもフルローン」という方針で、自己資金を投入しないで投資規模を拡大してきた。

築年数が古い区分マンションでも、横山さんが融資を受けて規模拡大し続けられる理由は何なのか。その秘訣は、管理会社で磨いたノウハウを結集した独自の分析ツールに隠されているようだ。その項目は、200以上におよぶ。

「自分が住みたいと思える物件」にこだわり、この分析ツールを駆使して購入前に徹底的に物件を調査するという横山さん。なぜ分譲マンションという特殊な投資スタイルを貫くのか、その実情はどのようなものなのか、話を聞いた。

管理会社社員が不動産投資を始めたワケ

不動産投資をはじめる前はマンション管理会社に勤めていたそうですね。

分譲マンション専門の管理会社に2003年から14年間勤めました。社員が少ない会社だったので、その会社でマンション管理業務をひと通り経験することができました。それと同時に、マンションの管理状態のちがいも分かるようになりました。

管理が行き届いている物件もあれば、そうでない物件もあります。管理状態の悪い物件は、見た目もさることながら、建物の躯体も老朽化するのが早いです。逆に管理状態がよければ、実際の築年数よりも見た目・躯体ともに良好な状態に保たれます。中古マンションは新築とちがって、それまでどのような管理が行われてきたかが顕著に表れるのです。

管理状態が良いマンションでも、築年数が古いために安く売られるものもあります。そういうのを見て「こんなにいい物件がこんなに安く手に入るのか」と思っていましたね。売買される値段と、物件の状態にギャップを感じていたわけなんですが、最初はあくまでも感覚的なものだったんです。その感覚的なものを「見える化」できたらいいなと考えるようになりました。

いつ頃から不動産投資に関心を持ったのでしょうか?

以前から著名な不動産投資家の著書を読んで興味を持っていたんですが、仕事でも投資家と関わる機会が増えていくうちに本格的にやってみようと思いました。

2012年に1戸目を購入しました。最初はスロースタートでしたが、だんだん1年に購入する物件数が2件、3件、4件…と増えていきました。一番多い年で10戸買いました。あの頃は毎月のように買っていましたね。

これまでの総投資額は3億8000万円、保有物件の表面利回りは平均10.4%です。月間CFは最初の目標が50万円でしたが、今では80万円くらいになりました。

分譲マンションにこだわる理由

なぜ、ファミリー向け分譲マンションに絞って投資しているのでしょうか?

不動産投資を始めるにあたって、いろいろな物件を検討する中で、「自信を持ってお客様に貸せる物件、自分が住みたいと思う物件は何か」ということを考えました。その答えが分譲マンションだったんです。

分譲マンションは、賃貸マンションに比べてエントランスなどの造りも立派な場合が多いです。賃貸マンションはそもそも、安く造って高く貸そうという発想なのに対して、分譲マンションは、そこに永住しようという人に売るために作られていますからね。

日常的な共用部の管理にしてもかなりちがいます。分譲マンションは管理人がいて毎日清掃するところが多いですが、賃貸マンションの場合は管理会社が多くても週1回くらいしか清掃しません。また、分譲マンションは修繕計画に沿って修繕積立金を1年目から積み立てて、修繕履歴もしっかり管理されているケースが多いです。

自分が住みたいという観点では、戸建ても良いと思いましたが、投資でやる場合は立地が悪いボロ戸建てになってしまうのがネックでしたね。立地が良くて建物の状態も良い戸建てとなると、値段が上がるので継続的に良い物件を購入し続けるのは難しいなと思いました。

「自信を持って貸せる」ことを重視したのはなぜでしょうか?

マンション管理会社に勤める前にやっていた営業職の経験が影響していると思います。20年以上前の話ですが、英会話教材の訪問販売の仕事をしていたんです。

その教材は「英語を学ぶ」ではなく、「英語で学ぶ」という、当時では珍しいコンセプトを掲げていました。私自身も最初は「これはすごい教材だ」と思って売っていたので営業成績もよかったのですが、「一般的な英語教材と同じだ」と気づいた瞬間に、一気に売る気がなくなってしまいまして…。結局その会社はすぐに辞めることになったんですが、その時に「自分が良いと思わない商品は売れない」と痛感しましたね。

不動産投資を始めるときも同じことを考えました。不動産賃貸事業として考えた時に、儲かることも大事ですが、サービス業としてお客様に良いものを提供したいと。もともと、この業界は「お客様目線」があまりないと感じていて、私はそれが嫌だったんです。だから、お客様目線で考えた時に、投資するならファミリー向け分譲マンション一択だと思ったんです。

―分譲マンションは実需向けが多いと思いますが、どのように探すのでしょうか?

物件は基本的にマンション売買のポータルサイトで探しています。自宅用として購入する人向けのサイトですね。

エリアは主に広島市内で、自宅から車で30分圏内を目安にしています。自宅に近い物件に絞っているのは、物件で何かあった時にすぐ駆け付けられるからです。

物件購入の基準は、床面積30平米以上のファミリータイプで物件価格1000万円以下、表面利回り12%程度です。広島で家賃10万円以上をとるのは難しいのと、管理費と修繕積立金を払ってCFを出すことを考えて基準を設定しています。

ほかの投資家や実需の買い手と競合することはありますか?

競合することはほとんどありませんね。そもそもファミリータイプの分譲マンションを投資対象としている投資家は少ないです。狙った物件でほかに買い手がいたということはあまりなかったですね。自分では時間をかけて良い物件を買っているので、ほかの買い手と競合しないのが不思議なくらいですが(笑)。

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