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10月5日、違法なわいせつDVDの販売店と知りながら、大阪市の雑居ビルの部屋を店に貸していたとして、ビルの実質的オーナーが逮捕されたとの報道がありました。

この報道を見て、「入居者が犯罪を行った場合に、部屋を貸していたオーナーまで逮捕されることはあるのか?」と驚かれた方もいるかもしれません。

実は、このように部屋を貸していただけのオーナーにも、入居者の共犯として犯罪が成立することがあり、過去に多くの摘発例があります。今回は、入居者が犯罪を行った場合のオーナーの法的責任・逮捕リスクについて説明します。

今回の逮捕容疑は?

まず、本件の逮捕容疑を見てみましょう。

逮捕容疑は2つあります。1つ目は「わいせつ電磁的記録媒体有償頒布目的所持の幇助(ほうじょ)」です。わいせつ電磁的記録媒体(ここではわいせつDVDのこと)を販売目的で所持していた店の経営者を、共犯として助けた(幇助した)という容疑です。なお、経営者らの方はすでに逮捕されていたようです。

この「幇助」とは、他人の犯罪を容易にさせることをいい、典型的には犯罪行為の手伝いや道具の提供、見張り行為などが幇助に当たりますが、場所の提供もこれに含むとされています。ただし、故意(他人の犯罪を容易にさせるという認識)がなければ幇助は成立しません。

本件では、オーナーが、このビルで違法DVD販売の疑いがある旨の警告を以前に何度も受けていたようです。そのため、オーナーには幇助の「故意」があるとして、警察が逮捕に踏み切ったと思われます。

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なお逮捕容疑の2つ目は、「組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)」です。こちらは、わいせつDVDの販売という犯罪行為により得られた収益を、それと知りながら(家賃という形で)受け取ったという容疑です(本記事では詳細は割愛します)。

過去の摘発事例・オーナーの逮捕リスク

入居者の犯罪行為のための場所を提供したとして、オーナーが逮捕された事例は過去にもあります。本件のようなわいせつDVDの販売店のほか、入居者が次のような営業を行っていた事例が報道されています。

・違法風俗(風俗営業法違反・売春防止法違反
・違法カジノ(賭博罪)
・違法民泊(旅館業法違反)

※売春防止法では事情を知って場所を提供する行為が(共犯ではなく)独立の犯罪とされており、最高刑は懲役7年(業務上の場合)と重い刑が定められています。

そのほか、ハプニングバーや乱交パーティー会場(公然わいせつ罪)、違法薬物の製造・販売(大麻取締法違反など)、投資詐欺や特殊詐欺の事務所(詐欺罪、組織犯罪処罰法違反)などの場合でも問題となり得ます。

もちろん、単に入居者が上記のような違法営業などの犯罪を行ったというだけでオーナーが共犯となるわけではありません。

共犯となるのは、前述のとおりオーナーに故意がある場合に限られます。具体的には、入居者が違法営業などを行うことを知りながら、そのために場所を提供したような場合です。

ただし、最初から分かっていて貸す場合に限りません。貸した後に違法営業などが行われていることを知ったにもかかわらず、そのまま何もせずに貸し続けたような場合も含みますので、注意が必要です。

なお、違法営業などの事実を確実には知らなかったとしても、極めて疑わしい状況証拠があるのにあえて調査をせずに貸し続けたような場合は、状況によっては未必の故意が認められる可能性があります。「知りさえしなければOK」というわけではありませんのでご注意ください。

その他の規制

なお、以上の刑事罰(犯罪)とは別に、各地の条例でオーナーに特別の規制がされている例もあります。

例えば東京都では、いわゆる「ぼったくり防止条例」(性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例)において、オーナーが違法風俗などに場所を提供することを禁止され、また違法風俗などの営業が発覚した場合は賃貸借契約を解除し明渡しを求めるようオーナーに義務づけられています。

オーナーがこれに違反し、反復して物件が違法風俗などに提供されるおそれがある場合は、公安委員会は当該物件に警告の標章を貼り付けることができるとされています。

また、東京都安心安全まちづくり条例においては、物件が特殊詐欺に使用されないために必要な措置を講じるようオーナーに義務づけられています(罰則のない努力義務ではありますが)。

オーナーの心構え

オーナーとしてもさまざまな事情はあるでしょう。なかなか埋まらなかった物件に申込みが入り、怪しいと思いつつも貸してしまったというケースや、入居後に違法営業が行われていることを知ってしまったものの何もできずに放置してしまったというケースもあるかもしれません。

しかし、以上説明したとおり最悪の場合オーナーが共犯とされるリスクがあります。そのためオーナーとしては毅然と対処することが求められます。

具体的には、入居時の審査や入居後のチェックを怠るべきでないことはもちろんですが、違法営業が疑われる場合には直ちに調査を行い、発覚した場合は速やかに賃貸借契約を解除するなどの対応を行うべきです。

違法営業などが行われている場合は用法違反となることが通常ですから、その旨を指摘して解除通知を行う(契約条項によっては、用法違反を止めるよう通知したうえで、是正されない場合に改めて解除通知を行う)ことになります。

また、このような場合に問題なく契約を解除できるよう、普段使用している契約書ひな形の条項を見直すことも必要かもしれません。くれぐれも犯罪に関与してしまうことのないよう、日頃の警戒を怠らないようにしましょう。

(弁護士・関口郷思)