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「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」をご存じでしょうか。一般的に、法人の節税で使うならコレ! という感じで言及されることが多いですね。

私としても、特にそれを否定するつもりはありません。なぜなら現状、あまりにも「倒産防止共済=節税」というイメージが浸透してしまっており、かつ、そのイメージを覆すために必要な説明が非常に膨大であるためです。

ただしよくよく考えてみると、倒産防止共済は本当に節税になるのか、仮に節税になるとして、投下したさまざまなコストに本当に見合うものなのか、という点は常々疑問に感じています。

そこで今回は、倒産防止共済の効果の本当のところを深掘りしてみようと思います。

なお、個人の場合、倒産防止共済の掛け金は事業所得の経費にはすることができる一方、不動産所得の計算上必要経費に算入することができません。個人の不動産オーナーとして加入されている方は想定できないので、今回は法人で加入していることを前提として解説します。

倒産防止共済はなぜ「節税」に使えると言われるのか

「倒産防止共済」の本来の趣旨は、企業の連鎖倒産を避けるための保険的制度です。取引先が倒産した場合、その取引先に対する売掛金などの金銭債権を回収できないと、資金繰りに行き詰まり、連鎖的に倒産してしまう、ということが起こりえます。そういうケースで運転資金の融資を共済から受けることができ、資金繰りによる連鎖倒産を防ぐ、というのが倒産防止共済の本来の趣旨です。ですから「倒産防止」なわけですね。

ただ、このような制度本来の趣旨を目的に、倒産防止共済に加入する方は、不動産オーナーとしてはほとんどいません。基本的には、節税商品として加入を検討する方が大半です。なぜ節税商品として使えるのかというと、次の2点があるからです。

(1)倒産防止共済への掛け金(最大月20万円)の全額を経費にすることができる(申告書に別表添付必須)

(2)40か月程度の継続加入を前提に、解約返戻率が100%となる

解約返戻率が100%ということは、解約しても払い込んだ掛金の全額が戻ってくるということです。これなら損はしなさそうだし、経費が増加すれば「その年の税額が減る」のも確かですから、まあとりあえずこれに加入しておくか、という感じで加入している人も多いように思います。

ちなみに倒産防止共済には12カ月分の前払い制度があり、都合24カ月分、最大480万円を1年間で積み立て、経費計上することもできます。不動産売却益が出たタイミングで加入を検討される方も多いように感じます。

ただ、倒産防止共済は本当に「節税」と言えるのでしょうか? これについて、ここからは4つのパターンで比較しながら検証していきます。

検証1.共済に加入した場合と加入しなかった場合

まずは、単純に倒産防止共済に加入した場合としなかった場合で見てみましょう。

10年間、毎年売上が100あるものとし、倒産防止共済に毎年50の掛け金を払うケースで考えてみます。簡便化のため、経費は倒産防止共済の掛け金のみとします。税率は一律25%としています。比べると、どうなるでしょうか。以下の表をご覧ください。

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