
和室のリフォーム前(左)とリフォーム後
中古で購入した物件や入居者が退去した後の物件は、新たな入居者を迎えるためにリフォームが必要な場合が多いだろう。不動産オーナーたちはいくらくらいかけて、どのようなリフォームを行っているのだろうか。
この企画では、投資家たちの多種多様なリフォーム事例を紹介していく。投資家の協力のもと、かけた費用や使った材料、工期などもなるべく詳細に公開してもらう。リフォームで重視する点ややり方は人それぞれ異なり、安さや早さで優れている点ばかりではないが、1つの事例として参考にしてもらいたい。
今回は、不動産投資歴5年の「ほりさきとうさん」さんが今年実施した築44年の戸建てのリフォームを取り上げる。
430万円の戸建て、リフォーム費用は
430万円で購入した戸建てを利回り12%ほどで賃貸に出すため、最低限のリフォームを実施したというほりさきとうさん。今年3月に定年退職して時間ができたため、給湯器の交換や和室の洋室化など一部の工程を除いて、基本はDIY。DIYは趣味でもあり、退職前の年初から半年ほどかけて進めたが、ほどなくして想定より高めの6万3000円で入居者を迎えることができた。
〇物件概要
・構造・種別:木造2階建て戸建て(間取り3DK)
・築年数:44年
・エリア:栃木県小山地域
・購入金額:430万円
・家賃:6万3000円
・リフォーム後の利回り:約14%
〇リフォーム概要
リフォームの目的:賃貸に出すため
工期:約6カ月間(2022年1~6月)
リフォーム費用:約110万円(交通費除く)
主なリフォーム内容:給湯器とガスコンロ交換、和室を洋室化、壁や天井の塗り替えなど
リフォームの効果:想定どおりの家賃6万3000円で入居付けできた
―この物件はどのような経緯で購入したのでしょうか。
ポータルサイト経由で出合った不動産会社からの紹介で購入しました。もとの所有者が亡くなり、相続人が処分に困って安く売り出されたケースです。家の中は前の住人が住んでいた時のままの状態で、家具などもたくさん残っていました。残置物処理費用として30万円を指値して、430万円で買いました。
私はすでに区分マンション2戸と戸建て2戸を持っていて、戸建てとしては3戸目になります。戸建てを購入したのは、最初に購入した区分マンションがオーナーチェンジ物件で退去がなく、持っている実感が湧かなかったからです。
一方で、今後退去があった場合に原状回復費用がどのぐらいかかるのか不安でした。そこで、リフォームの練習を兼ねて築古戸建てを買い始めました。DIYは趣味も兼ねているので、戸建てでは時間をかけて自分のペースでDIYに取り組んでいます。
―リフォームではどのような点を重視しましたか。
当初は、物件価格とリフォーム価格を合わせて500万円に収めようと考えていました。というのも、周辺の家賃相場を調べて家賃は下限で5万円くらいと想定しました。年間60万円として、利回りを12%以上を確保するためには500万円以内に収めたいなと。
この物件を内見した時は、築年数の割に状態がよく見えました。表面的な汚れや傷みはありましたが、磨いたり、簡単な補修をしたりすれば済むので、リフォーム費用はそれほどかからないだろうと思っていました。外壁がサイディングだったので、ひび割れや汚れが目立ちにくい点も気に入りました。
ところが、ふたを開けてみると、築年数相応にガタがきている箇所が見つかりました。このため、リフォーム費用が膨らみ、物件費と併せて500万円はオーバーしてしまいました。リフォーム費用は全部で110万円ほどです。ただ、家賃は下限とした5万円よりは高くできたので、リフォーム後の利回りは14%ほどになりました。
◇
想定よりも費用がかさんでしまったというほりさきとうさんのリフォーム。実際にどのようなリフォームを行ったのか、パートごとに見ていこう。
ダイニングキッチン
◇リフォームの内容:ビルトインコンロ設置、水栓の交換など
◇費用:約43万円

キッチンのビフォアー(左)とアフター。ビルトインコンロを新設した
―給湯器の配管が破損していたそうですね。
灯油式の給湯器が屋外にあったのですが、その配管が折れていました。内見時にテープが巻いてあることに気付いて少し怪しいなとは思っていましたが、まさか折れているとは思いませんでした。給湯器の交換となると出費がかさむので、これは痛いなと思いましたね。購入前に気付いていればさらに値引きの材料にできたのに、失敗したなと思いました。

配管が折れた灯油式給湯器。内見時はテープを巻いてあったため、折れていることに気付かなかったという
結局、給湯器の交換が必要になって、2業者に相見積もりをとりました。1社は灯油、もう1社はプロパンガスの業者です。給湯器のほかにも、台所のガスコンロを人気の高いビルトインコンロに替えたり、浴室に追い炊き機能を付けたりしたかったので、それらを合わせた総額がいくらになるか見積もりを出してもらいました。
結果的にプロパンガスの方は計25万円くらいで、灯油タイプより5万円くらい安かったので、そちらに決めました。入居者が払うランニングコストはプロパンガスの方が高くなりますが、灯油式は灯油を注ぐ手間がかかることも考慮すると、入居者にとってもプロパンガスの方がいいのではないかと考えました。
ダイニングキッチンは、ほかに水栓を交換しました。シングルレバーの水栓は新品にしても価格は8000円です。古いタイプのものより、新しくてきれいなものの方がよいと考えました。床は清掃しただけで、クッションフロアは交換していません。
―業者はどのように探したのでしょうか。
基本的に、電話帳で地元の業者を探すようにしています。1軒ずつ順番にかけていくんですが、電話に出ないとか、すでに廃業しているところも珍しくありません。10軒電話して、まともに連絡がとれるのは1~2軒程度ですね。インターネットで業者を探す方法もあるでしょうが、そういうところはエンドユーザー向けなので価格が高いと思います。実は、今回の灯油とプロパン業者は、家に大量にあった未使用の手ぬぐいで電話番号を見つけたんです(笑)。
私はDIYの経験から大体の相場がわかっているので、地元の業者の場合は、戸建てでDIYリフォームの経験があることをさりげなく伝えるようにしています。そうすると、業者の方も「適正な価格」を提示してくれます。

価格は税込み
和室・洋室
◇リフォームの内容:畳をフローリングに交換、ふすまの張替えなど
◇費用:約32万円

畳をフローリングにした1階和室のリフォーム前(左)と後
―戸建ては部屋数が多いですが、リフォームする箇所としない箇所はどのように決めていますか。
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全5話
投資家たちが実際に行った多種多様なリフォーム事例を紹介する。どのような目的でどのようなリフォームを行い、どのぐらいの費用や工期がかかったのか。家賃アップや入居付けにどのような効果があったのかや反省点など、投資家に直接話を聞く。複数の事例を参考に、リフォームで気を付けるべき点や自身のリフォームに取り入れられそうな方法などを学んでほしい。
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