2022年10月20日、レオパレス21の株価が急落、ストップ安まで売られ274円となりました。

株価急落の要因は、「週刊新潮」に、レオパレス21の記事が掲載されたことにあるようです。

ここでは記事の詳しい内容には触れませんが、取り上げられているのは、レオパレス21の幹部社員による告発です。同社が「入居率工作」を行っていること、それによって「家賃未回収額」が増加していること、そしてこれらが、株価引き上げを目指している経営陣の主導により行われている、といった内容の告発になっています。

また、投資ファンドのフォートレスから同社が受けたローンの条項に「入居率が一定レベルを超えると金利が低下する」内容が含まれていたことが、これらの背景にあるとされています。

報道内容の真偽は現在のところ不明ですが、仮にこうしたことが事実なら、確かに株価には悪い影響をおよぼすでしょう。

 

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レオパレスは報道内容を否定

今回の「週刊新潮」の記事を受け、レオパレス21は以下のプレスリリースを出し、報道の内容を否定しています。一部をここに引用します。

本日発刊の週刊新潮において、当社に関して報道がなされましたが、事実無根の内容であり、そうした事実はございません。記事の内容及び当社の見解は以下の通りであります。

・「入居率嵩増しの手口として審査不合格者の入居、家賃滞納者の居座りを容認」について
そのような事実はなく、審査基準については各種与信情報等を勘案し当社が独自に設定しております。また、家賃滞納者に対しての家賃回収は適時行っており、必要に応じて法的な手続きを取っております。

(中略)

・「3カ月以上の家賃滞納者には立ち退きを迫るはずなのに、2年近く放置していた」について
3カ月以上という期間を定めて、滞納者に対して退去手続きを行うことが必要であるかのような記載がされておりますが、そのような法令・諸規則あるいは社内スキームはそもそもございません。家賃滞納者に対しての家賃回収は適時行っております。

・「部屋の退室に関し解約処理をわざと翌月にずらし、契約状態の部屋とカウントすることで入居率の上乗せを図っている」について
そのような事実はございません。5月16日付の適時開示で記載の通り、入居率は機械的に算出するものであり、人為的に操作することはできない仕組みとなっており、オペレーション上、意図的な不正操作をしたことは確認されておらず、決算に影響するものとは認められません。

尚、入居率につきましては、法令上の定義はなく、法令上公表が義務付けられているものではございませんが、当社は、KPI指標の1つとして、目標入居率を設定し、前月末入居率について定例的に月初に弊社ホームページに掲載しているものです。

新潮社に対しては、報道倫理に則り公正な記事を掲載するよう厳重に抗議しておりましたが、再度このような記事を掲載したことについては、極めて遺憾であります。本件につきましては、当社としては法的措置も視野に入れ、断固として対応する方針です。(以下略)

(出典:レオパレス21「当社に関する報道について」2022年10月20日)

先に筆者の考えを述べると、いま分かっている情報を見る限りでは、週刊新潮に掲載された告発の内容には、気になる点が2つあります。

1つ目は、「入居率工作」はそう簡単にできることではないのではないか、ということです。上記のリリース文で、レオパレス21が「入居率は人為的に操作することができない仕組みになっている」と主張しています。上場会社であるレオパレス21が対外的に公表しているものである以上、これには一定の根拠があるはずです。

入居率の推移(レオパレス社のHPを基に編集部作成)

2つ目は、記事にあるような「家賃滞納者の増加」が、レオパレス21の決算上は見えない、ということです。記事では、レオパレス21の施工不良問題が表沙汰になる前は、個人向けの賃貸アパートにおける家賃の未回収額は8億円ほどに過ぎなかったのに対し、2019年9月には15億円と倍増し、2020年3月は20億、2021年2月に34億円、2021年8月には46億円超へと急拡大を続けていると報じています。

筆者がこの点について疑問に思うのは、決算書上でこの動きが見えないということです。もし家賃の未回収があれば、通常であれば決算書の貸借対照表に計上されます。

ここで、直近の数字として、2021年3月末と2021年9月末の連結決算を確認してみましょう。

<2021年3月末>
・売掛金 7,930百万円
・営業貸付金 86百万円
・(流動資産)その他 4,112百万円
・長期貸付金 1,096百万円
固定化営業債権 249百万円
(固定資産)その他 5,443百万円
(参考)流動資産における貸倒引当金 ▲182百万円

レオパレス21の決算において、滞納されている家賃の未回収部分が計上されているとすれば、通常は「固定化営業債権」だと思われます。もしくは、「(固定資産)その他」で計上している可能性も排除できません。滞納していないのであれば、売掛金に計上されていることが一般的でしょう。

その上で、2021年3月末時点と2021年9月末時点を比較してみましょう。

<2021年3月末→9月末>
・売掛金 7,930百万円→8,458百万円…+528百万円
・営業貸付金 86百万円→75百万円…▲11百万円
・(流動資産)その他 4,112百万円→4,494百万円…+382百万円
・長期貸付金 1,096百万円→1,099百万円…+3百万円
固定化営業債権 249百万円→不明(記載なし)…計算できず
・(固定資産)その他 5,443百万円→4,940百万円…▲503百万円
【参考】流動資産における貸倒引当金…▲182百万円→▲204百万円、固定資産における貸倒引当金…▲651百万円→▲864百万円

報道では2021年2月から8月までの間に、約12億円の家賃の未回収額が増加していることになっています。ところが決算を見る限り、未回収額がそこまで拡大していることを確認できないのです。

売掛金のような勘定科目もそこまで増加していませんし、貸倒引当金も急増していません。決算は監査法人がチェックしていることを考えると、12億円の家賃未回収額を隠しておくのは難しいものと思われます。

なお、週刊新潮の報道が事実だった場合でも、レオパレス21に与える影響は、決算上は限定的だと筆者は考えています。2022年4~6月までの営業利益は35億円であり、未回収額として報道されている46億円がすべて回収できなくとも、そこまで大きなダメージにはならないからです。

ただし、もし経営陣が主導して入居率を「改ざん」していたのだとすれば、投資家を欺く行為ですので、経営陣への責任は問われるでしょうし、再建に向けて外部からの協力も得ることは難しくなるでしょう。今後もレオパレス21の動向に注目したいところです。

(旦直土)