PHOTO: hiro Viewer / PIXTA

みなさんこんにちは。

前回は、私がこれまでに行政指導の現場で見てきた違反建築物の事例を踏まえ、増築によって建築基準法違反となってしまうリスクについてお話しました。

違反建築物は、不動産オーナーの不注意で生じてしまう場合があります。知らないうちにしてしまった違反であっても、それによって人やモノに損害を与えてしまったら、所有者が社会的な責任を問われる可能性もあります。また、違反建築となれば、将来的に物件を売却しにくくなることも考えられます。

この記事では、前回に続き、アパートの敷地内に新たな建築物を建てる場合に注意すべき、3つの違反を紹介したいと思います。また、敷地境界などに建てることも多いブロック塀の危険性についてもお話していきたいと思います。

事例1: 「延焼のおそれのある部分」の違反

敷地内に新たに建築物を建てる(増築する)場合、同じ敷地内の既存の建物で新たな防火措置をとる必要が出てきます。それを行わないと建築基準法違反となる可能性があります。

建築基準法では、隣接する建物が火災となった場合に延焼する危険性がある部分を「延焼のおそれのある部分」として、下の図のように定義しています。

「延焼のおそれのある部分」に面する外壁や窓は、建築物の周囲や隣地からの火炎が燃え移りにくいように、防火性能の高い窓(網入りガラスや防火シャッター)を設置するなど、防火上のルールが設けられています。

対象となる範囲は、隣地の境界線などから3メートル以内(1階部分)または5メートル以内(2階以上)とされています。同一敷地内に複数の建物がある場合、建物の外壁間の中心線からの距離で測る点です。

増築する場合に注意が必要なのは、アパートやマンションの延べ面積の合計が500平米を超える場合です。

下の図のアパートの黄色の部分は、水色の車庫を建てる前は「延焼のおそれのある部分」に含まれません。隣地境界から5メートル以上離れているためです。しかし、車庫を建てたことによって、車庫とアパートの外壁間の中心線から3メートル以内に入ってしまいました。このため、新たに防火上の措置が必要となります。

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