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こんにちは。税理士の斎尾です。前回の記事も大きな反響をいただき、ありがとうございました。

前回の記事「盲点は「社会保険」、手取り金額で考える法人化の最適解」では、節税目的で法人成りした場合の損益分岐点について見ていきました。今回も前回の内容の続きとなりますので、読まれていない方は前回のコラムも(前々回のコラムも)ご参照ください。

【参考記事】盲点は「社会保険」、手取り金額で考える法人化の最適解
【参考記事】大家さんの手取りが最大化する「役員報酬額」はこれだ


【大家さんからの質問】
私は、すべての物件を個人名義で所有する専業大家です。不動産利益(生活費や税金を支払う前の利益)は1000万円程度となる見込みです。
不動産管理法人、いわゆる「マイクロ法人」を設立し、個人の不動産収入から不動産管理料を支払う形にしたいと思いますが、節税になるでしょうか?

【東大卒税理士の回答】
マイクロ法人を設立し、個人から不動産管理料を支払う場合、税金ではなく国民健康保険料を大幅に削減することができます。そして、ほとんどのケースにおいて、法人の売上が年間78万~98万円のとき、手取りを最大化することができます。


「マイクロ法人」とは?

個人で不動産を所有しながら、法人を設立し、管理を外注されている方もいるかと思います。このような小さな法人のことを「マイクロ法人」と呼ぶことがあります。正式な法律用語ではなく定義は人それぞれですが、本記事では「社長1人だけの非常に小さな法人」という意味で使用します。

さて、前回までの記事では、個人と法人のどちらが節税になるか? という観点で解説してきました。しかしこれらの他にもう1つ、「個人で不動産を所有しながら、マイクロ法人を設立する」という方法もあります。

マイクロ法人から少額の給料を受け取って社会保険に入れば、自動的に国民健康保険は脱退となります。高額な国民健康保険の支払いがなくなり、手取りが増えることになります。もし配偶者を扶養していれば、配偶者の国民年金の支払いも不要になります。

ではここで、今回の質問者さんの事例を基に、前回の記事で紹介した「法人成りして手取りを最大化する方法」と、「マイクロ法人を設立した場合」とを比較します。どちらのケースで手取りがどれくらい増えるか、計算してみましょう。

なお、不動産管理料は、高額になるほど税務署から過大経費として指摘されるリスクが高まるため、少なめに設定し年間78万円とします。これによって、個人の不動産所得は78万円減少し、マイクロ法人の売上は78万円となります。この場合の税金、社会保険料は以下の表のようになります。

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