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日商岩井とニチメンを前身とする総合商社の「双日」が、J-REITの運用から撤退することを決定しました。

10月11日、双日の子会社「双日リートアドバイザーズ」の株式を、SBIグループに売却することを発表したのです。売却されるこの子会社は、J-REITの1つである「日本リート投資法人」において、資産運用の業務を行っている運用会社です。双日は、保有する株式の全部をSBIグループに売却します。

日本リート投資法人は、資産規模で2547億円、物件数106物件の中堅J-REITです。このREITを運用している会社を、双日は売却することにしたのです。言い換えるならば、日本リート投資法人のスポンサーが、双日からSBIグループに変更になったということです。

ご承知の方もいるかもしれませんが、商社業界では本年3月にも、三菱商事がJ-REITの資産運用会社を、米国の投資会社である「KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)」に売却しています。

双日や三菱商事のこうした動きは、何を意味しているのでしょうか? 総合商社は不動産マーケットに魅力を感じなくなったということなのでしょうか? 今回は、双日の動きから、日本の不動産マーケットにおいて相応の地位を占めるJ-REITの状況や、日本の不動産マーケット動向について考察していきたいと思います。

双日にとってのリート事業

「日本リート投資法人」は、資産運用を委託している「双日リートアドバイザーズ」の双日保有株式の全て(67%分)を、SBIグループに譲渡すると発表しました。前述の通り、これはJ-REITの運用から双日が撤退するということを意味します。

譲渡の理由について、日本リート投資法人のプレスリリースでは以下のように説明されています。

双日は、その前身であるニチメン株式会社及び日商岩井株式会社の時代より50年以上にわたる分譲マンションを中心とした不動産事業の実績を有しており、双日グループ全体で不動産投資・管理運営のネットワーク及び知見を蓄積してまいりました。また、2013年に株式の一部を取得した本資産運用会社(旧ポラリス・インベストメント・アドバイザーズ株式会社)を通じて、2014年に本投資法人を東京証券取引所不動産投資信託証券市場に上場させ、本投資法人のメインスポンサーとして、J-REIT市場における不動産運用事業に参画させ、本資産運用会社が運用を受託する本投資法人の運用資産残高(以下「AUM」といいます。)は上場時の703億円から2022年6月30日時点では2,547億円にまで拡大し、中期目標としてAUM3,000億円を目指してまいりました。一方、双日では、事業ポートフォリオの入替え・強化に継続的に取り組んでいるなか、今般、本資産運用会社の双日の保有株式の全てをSBIファイナンシャルサービシーズに譲渡することにいたしました

(出典:日本リート投資法人「資産運用会社における主要株主、親会社及び特定関係法人の異動に関するお知らせ」)

双日は、2014年に日本リート投資法人を上場させています。時はまさにアベノミクス、金融緩和政策がスタートして少し経った時期です。

金融緩和、金利低下の恩恵を受け、不動産マーケットやJ-REITには潤沢な資金が流れ、日本リートの資産運用残高も上場当初比で3倍超まで拡大しました。日本リート投資法人は、当初は順調に事業を成長させてきたと表現してよいでしょう。

そのようなJ-REIT事業から、なぜ双日は撤退するのでしょうか?

前述のプレスリリースでは、撤退の理由が「事業ポートフォリオの入替え・強化に継続的に取り組んでいる」としか示されていません。この文言を筆者なりに翻訳すると、「儲からない事業があれば、儲かる事業に入れ替え続けている」と説明していることになります。

すなわち、「J-REIT事業があまり儲からないから、売却して資金を回収し、その資金で他の事業に投資したい」と双日は考えていると想定されるのです。

J-REITは儲からないのか?

では、そもそもJ-REIT事業は儲からないのでしょうか?

日本リート投資法人は、年間で営業収益(≒売上高)185憶円、営業利益105億円、当期純利益91億円を計上しています。2500億円超の賃貸物件を保有しているのですから、表面利回りで7%超の運用をしていることになります。

十分に儲かっている事業のようにも思われますが、J-REITは多数の投資家のための「器」です。利益のほとんどは投資家に分配されます。

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