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 今年10月に火災保険料率と制度が改定されました。火災保険料の値上げや最長契約期間の短縮など、加入者にとっては「改悪」とも言える内容でした。火災保険は近年値上げ傾向にあり、補償の内容も変更されています。

保険料を抑えるため、保険を見直したいと考える大家さんもいらっしゃると思います。そこで今回は、火災保険に加入したり、保険金を受け取ったりした場合に税金面でどのような影響があるのかを前編と後編にわけて解説していきたいと思います。

前編のテーマは、火災保険の加入時に支払う保険料と税金の関係についてです。火災保険料を一括払いすると経費を大きくできるのかや、火災保険の解約時に発生する「解約返戻金」が収入扱いとなるのか、といった疑問にお答えします。火災保険に似た制度であるJA共済の「建物更生共済」についても、火災保険とのちがいやメリット・デメリットを紹介していきます。後編では災害に遭った場合に受け取る保険金と税金の関係について取り上げます。

一括払いした火災保険料は全額経費になる?

Q1:火災保険の5年一括払いと年払いはどちらがよいでしょうか?

火災保険料の払い込み方法には、契約期間中の保険料を最初にまとめて支払う「一括払い」と、1年ごとに支払う「年払い」があります。一般的に、一括払いでは割引が適用されるため、保険料の総額は年払いより一括払いの方が安くなります。しかし、税金の面からみると、実は大きな違いはありません。

火災保険は一括払いであっても、支払った保険料を単年度で全額経費に計上できるわけではないからです。火災保険料は経費として計上できるため、多く支払うと収入から経費を引いた利益が減り、所得税を減らせるのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、一括払いの火災保険料は、契約期間で按分して経費計上する必要があります。

よくある一棟アパートを例に、契約期間が5年と3年の火災保険料を比較してみました。

構造:H構造(木造)

延床面積:260平米

所在地:東京都

共同住宅戸数:4戸

築年数:40年

保険金額:5000万円

支払い保険料の総額は、一括払いの方が年払いより5年契約で約3万円、3年契約で約1万5000円安くなります。ただ、一括払いの場合、支払った保険料のうち、1年間に計上できる経費は保険料総額を契約期間(5年または3年)で按分した額のみとなります。一方、年払いの場合はその年に支払った保険料全額を経費に計上できます。1年当たりに経費計上できる額は、一括払いと年払いで大差はないということです。

保険料の総額でみると、一括払いで契約期間をより長くするのがよさそうですが、賃貸物件を保険契約期間の途中で売却する可能性もあると思います。そのような事情で火災保険を途中解約することになった場合はどうでしょうか。

5年一括払いで加入して、ちょうど3年経ったところで解約した場合を考えてみます。この場合は解約時点で、3年一括払いと同じ保険料に引き直しされます。解約時に払い戻される解約返戻金は5年一括払いとの差額の約21万円となります。つまり、途中で解約したとしても実質的な負担額は一括払いの方が年払いより多少なりとも安くなります。

資金繰りに問題がなく、少しでも保険料を安く抑えたければ、いったん5年一括払いにしておいて、実際に途中で売却したときに解約する方法をとるのもよいでしょう。

火災保険の解約返戻金は収入扱い?

Q2:火災保険を別の保険会社に切り替えた際に、元の保険会社から解約返戻金が振り込まれてきました。返戻金は収入扱いになるのでしょうか?

保険料を一括払いした火災保険を契約期間の途中で解約すると、契約者に「解約返戻金」が支払われます。一括払いでは、保険料を前払いしたことになるため、途中で解約した場合は、残りの契約期間分(未経過分)の保険料が払い戻されるのです。すでに払った分が戻ってくるだけなので、収入扱いにはなりません。

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