「私の投資スタイルは、いわゆる『王道』とは違うと思います」

「不動産賃貸業は、『金融賃貸業』と思って取り組んでいます」

そう語るのは、30代後半で北海道札幌市内を中心に11棟102部屋を保有し、満室時の年間家賃収入約6500万円の専業大家「もぎじゅん」さん。商社勤務時代に地方の1棟収益物件を購入して大家デビューし、時には年間3棟購入というペースで物件を買い進めた経験を持つ。

もぎじゅんさんは「キャッシュフロー重視」の一方で「指値と金利交渉を極力しない」ことを両立させてきた。一般的には手残りを増やすために、物件価格や金利を下げる交渉を行うだろう。もぎじゅんさんはあえてそれらをしない方針を取りながらも、着実に規模を拡大している。もぎじゅんさんの行動の背景にあるのが、「不動産賃貸業は金融賃貸業」との考えだ。

金融賃貸業とは、いったいどのような意味なのか。もぎじゅんさんの不動産投資との出会いや買い進めるために心がけてきたこと、今後の投資目標などについて伺った。

1棟目からオーバーローンで購入

もぎじゅんさんが不動産投資を知ったのは、大学在学中に友人の勧めでロバート・キヨサキ氏の著作『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んだときだ。家賃収入を得て暮らすことに憧れを抱いたものの、当時は具体的な行動を起こすことはなかった。

商社に入社して3年目の2009年に転機が訪れた。会社の語学研修プログラムに参加し、南米・チリで学生生活を送ったことだ。時間のゆとりが生まれ、将来を考えた際に不動産投資をしたいと思い始めた。

語学研修プログラムに参加し、南米・チリで時間的に余裕のある生活を送る中で不動産投資への思いが芽生えた

しかし帰国後は目の前の仕事に忙殺され、すぐにアクションを起こすことはなかった。数年が経ち気持ちにも時間にも余裕が出てきた頃、会社員をしながら不動産投資に関する書籍を読み漁った。学ぶだけでなく、実際に買い付けを入れたこともある。そのような暮らしを1年ほど続け、2015年、ついに1棟目を購入した。

当時から、もぎじゅんさんには「キャッシュフロー重視」という確固たる物件選定基準があった。

「東京に住んでいたので、自宅から近い場所にある物件を探しました。しかし首都圏の物件は価格が高く、利回りも低い。立地にこだわらず、価格が手頃でキャッシュフローが出る物件を求めて、検索する範囲を全国に広げました」

その頃、ポータルサイトでたまたま見つけたのが地方の築27年中古RCだった。稼働率が高く、表面利回りは12.9%であることも魅力的に映った。価格は約9000万円。諸費用込みのオーバーローンで購入した。金利は高めだったものの、もぎじゅんさんは「オーバーローンでお金を貸していただけたことがありがたかったです。物件の稼働力を考えると十分な家賃収入があり返済は問題ないだろうと思い、借り入れをしました」と振り返る。

初めての不動産投資で約1億円の借り入れをしても、「不安は全くなかったですね」ともぎじゅんさんは話す。

「商社では穀物の輸入を担当していましたが、何億、何十億円というお金が日常的に動くのを目の当たりにしてきました。対して私が金融機関から借り入れたのは1億円程度でしたから、金額が小さく見えたというか…。怖さは感じませんでした。仕事で多額のお金を扱っていたこともあり、借金に対する抵抗はなかったですね」

スピード購入で借入総額は3億円超に

その後、約1年の間にさらに3棟を買い進めた。購入価格は総額3億円超。いずれも自己資金を温存して買い進めた。当時のもぎじゅんさんの年収は約1400万円。貯蓄は2000万円ほどあり、属性がよかったことに加え、当時は融資環境も現在より良かった頃だ。そのため不動産会社から紹介してもらった金融機関から、順調に融資を引くことができたのだという。

普通なら1棟目で様子見してもおかしくない状況で、なぜ最初から攻めていったのだろうか。

「不動産投資は時間を味方につけて長期で資産を築いていくことが大切だと思っていたので、最初から買えるだけ買っていこうと思っていました。また、不動産は所有している数が多いほど、退去があった場合などのリスクヘッジができて安全性が高まると考えています」

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