近年注目を集めている「戸建投資」について取り上げる本企画。第4回となる今回は、戸建投資のトラブル事例や失敗例を紹介する。

物件価格が高騰し、目線に合う物件が少なくなってきている現在、投資家の中には、多少のリスクを受け入れて購入する人も増えてきている。しかし、「物件の不具合を見抜けなかった」「想定外のリフォーム費用がかかった」など、知識や経験がなければ見抜けない問題は多い。

今回は、特に戸建投資に参入したばかりの投資初心者が陥りやすい失敗を、事例をもとに紹介する。事例から戸建投資のリスクを学び、自身の投資に役立ててほしい。

物件の不具合を見抜けず購入

Case1:電気・水道が使えず損切りへ(ワーママまりさん)

昨年から不動産投資を始め、すべて現金で7戸まで買い進めた「ワーママまり」さん。その中でも、価格の安さだけを理由に購入してしまった3戸目について、「大失敗だった」と振り返る。

物件は、群馬県桐生市にある築50年超の木造戸建。不動産会社から紹介されたものだった。

「空き家状態が長かったようで、内見をしたときはかなり傷んでいました。もともと80万円で売りに出ていましたが、瑕疵担保免責を条件に40万円で購入しました。当時、なかなかよい物件を見つけられず悶々とした日々を送っていましたし、この安さなら、リフォーム費用を抑えれば収益を生み出せるいい物件になると考えました」

内見にはリフォーム業者に同行してもらい、畳の交換やクロスの修繕など費用の見積もりも依頼。100万円以内で仕上がる見通しができた。「地域最安の家賃3万1000円で貸し出しても、利回りは30%を超える計算なので、購入を決断しました」。

購入後、さっそくリフォームに取りかかったワーママまりさん。ところがしばらくして、物件に電気の引き込みがされていないことが判明。また、配管が途中で切れており、風呂の水が使えないことが分かった。

物件の外観(ワーママまりさん提供)

「雨漏りや傾き、シロアリの被害がないかなどは、いつも必ず確認していました。ただ、水道や電気はあって当たり前という思い込みがあり、見逃してしまいました」

工事費の見積もりを取ると、水道の配管工事に約30万円、電気の引き込み工事に約20万円、合計約50万円の費用がかかることがわかった。

「物置として貸し出すなど、細々と収入を得る方法もありました。しかし、手間がかかる割に期待通りの賃料が得られません。もやもやが頭に残ってしまい、とにかく早く手放したいと考えました」。

結果、購入から約2カ月、損切り覚悟で売却を決断したワーママまりさん。売却が決まるまで物置として数カ月間貸し出し、少しでも収益を増やす努力もした。そして同年12月、初めて投資用物件を購入するという60代女性に80万円で売却が決まった。電気や排水管の問題など物件の現状を説明したうえで、買主は納得して購入したという。

結局、この物件にかかった費用は、購入費用40万円、先に進めていた畳の張替やフローリングの修繕などのリフォーム工事費用30万円、仲介手数料2万円、その他諸経費18万円で、合計90万円。対して収入は、売却価格80万円、物置としての賃料収入5万円で、合計85万円。最終的な損益はマイナス5万円となった。

これ以降、ワーママまりさんは、購入時に必ずライフラインの状況を確認するようにしている。「電気や水道に問題がないか、仲介担当者に必ず聞いています。確認が取れない物件は、絶対に買いません」と今回の経験を教訓にしている。

Case2:不完全な状態で賃貸し訴訟騒ぎに(橋本さん)

投資歴約2年、関西で戸建を2戸保有している橋本さん(仮名)。賃貸前に見過ごしていた物件の不具合や不完全なDIYが原因で、入居者とトラブルになり、訴訟騒ぎに発展してしまった。

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