「戸建投資の今」をさまざまな角度から取り上げるこの特集。第1回では、楽待に蓄積されたデータや投資家アンケートの結果を基に、戸建投資の現状を探った。

安い築古物件を購入し、DIYなどで最低限のリフォームをして安い賃料で貸し出すことで高利回りを実現する―。一般的な戸建投資と言えば、このような手法をイメージする方が多いだろう。しかし、このような典型的な戸建投資は多くの投資家が集まり、競争も激しくなっているのが実情だ。

戸建投資の経験が豊富な投資家たちは、これからの戸建投資で勝つために、どのような戦略を練っているのだろうか。エリアや物件価格帯、リフォーム費用のかけ方などで独自のやり方を模索する6人の投資戦略を紹介する。

戦略1:競合しないエリアを選ぶ

投資歴20年で現在は大阪市を拠点に26軒の戸建を所有する「かーと」さん。以前は大阪府内でも物件価格が安い郊外エリアの戸建も購入していた。近年は郊外の物件を売却し、地域柄を熟知している大阪市内の一部地域のみにシフトしているという。

「ここ数年は戸建大家さんの大量参入から逃れるため、戸建賃貸のボリュームゾーンである家賃5万〜6万円の物件を売却しています。代わりに、競合の少ない家賃8万〜10万円の物件を実利回り10〜12%で、私が自信を持って運営出来ると思える地域だけで造ることに尽力しています」

かーとさん曰く、以前行っていた「安く買って、安く貸す」タイプの戸建投資は、地域にもよるが新規参入者の増加に伴い「レッドオーシャン化」している。

格安戸建が多いエリアは、そもそも戸建住宅の供給が過剰であったり、賃貸需要が弱かったり、人口が減少しているエリア。このようなエリアは、一定以上の家賃を取りにくいのだそう。そこへさらに新規参入者が増えればますます競争が激しくなり、客付けに苦戦する可能性が高まる。

かーとさんはこうしたレッドオーシャンを避けるため、賃貸需要などを熟知している大阪市内の一部地域で、あえてリフォーム費用をかけて高めの家賃で貸す戦略に投資法を変更してきている。

「最近は戸建ブームで全体的に物件価格が上がっていることもありDIYでリフォーム費用を安く抑えようという投資家が多いと思います。私も以前は下手くそなりのDIYでしたが、今はお客さんの安全と長く住み続けてもらうことを考えてリフォームを外注して差別化することを重視しています。賃貸需要や地域のクセを知っている自分のメインエリアなら家賃を高めに設定するコツが多少分かっているので、最低限の利回りもなんとか確保できます」

物件によっては、購入価格と同じくらいの額のリフォームを行うこともあるそうだ。そんなかーとさんが今年購入した物件の1つが以下の物件だ。

【かーとさんが今年買った物件】

エリア:大阪市
購入価格:600万円
リフォーム費用:300万円
家賃:8万円
リフォーム後利回り:10%強
築年数:35年
アクセス:地下鉄駅徒歩7分

「鉄骨3階建ての 1階がくり抜きの車庫になっている物件です。建物面積は75平米ぐらいとそれほど広くもなく、見た目が特別よいわけでもありません。ただ、私の所有物件を集中させているエリアにあり、賃貸需要やエリア特性も熟知している場所のため、間違いないと判断して買いました。売り値が800万円のところを売主さんの状況を聞きながら指値して600万円でまとめてもらってなんとか買うことができました」

この物件は信頼している職人に依頼して300万円でフルリフォーム。閑散期にも関わらずリフォーム完成前に家賃8万円で入居者が決まり、利回りは最低ラインとしている10%を確保できた。

300万円かけてリフォームしたかーとさんの物件

かーとさんがリフォームを重視するようになった背景には、賃貸戸建同士の客付け競争の激化があるという。

「賃貸ポータルサイトを見てもわかりますが、大阪で賃貸募集している戸建はものすごく多いです。私がメインとしているエリアでも以前は戸建賃貸を「5万~6万円」の家賃帯で検索してもせいぜい10件以下でした。しかし現在は、同じ家賃帯で検索すると軽く50件程度がヒットします。戸建というだけでアパートやマンションと差別化できていたのは遠い昔のことです。今は戸建同士でお客さんの奪い合いをしている状況です。 だから、しっかりとした物件を間違いの無い場所に仕上げないと、客付け競争に勝てないと思います」

リフォームを重視するかーとさんがいま頭を抱えているのが、リフォーム費用の高騰だ。円安などの影響も相まって資材価格が高騰し、物件価格とリフォーム費用の高騰でダブルパンチ状態なのだ。

「昔はリフォーム費用込みで500万円で1軒仕上げるのは簡単なことでした。今は築古物件を500万円くらいで買って、500万円くらいかけてリフォームして家賃10万円くらいで貸す、くらいの発想でないと長い目で見て負けると思ってますのでその前提で物件を選んでいます」

こう語るかーとさん。リフォーム費用がこれ以上高騰した場合を見据え、築浅のオーナーチェンジ物件を2000万円程度で買って長期で運用するやり方も視野に入れる。

「私のメインエリアでは、かなり立派な築浅戸建でもオーナーチェンジ物件の家賃は高くても12万円くらいが相場です。頭金を入れて融資を使い、月の手残りが6万円くらい取れるような買い方が出来ればと思っています。利回り的には7%程度でしょうか。退去時に付加価値を付けて家賃を1万円から2万円上げて募集出来ればと計算しています。苦肉の策ですが、そんなやり方を検討しなければいけないくらい、リフォーム費用が高騰しています」

戦略2:競合少ない高価格帯にシフト

購入基準とする価格帯を上げた投資家もいる。実践大家コラムニストでこれまでに11軒の戸建を購入した「地主の婿養子大家」さんだ。

かつては200万~300万円ほどの価格で戸建を購入することが多かったという地主の婿養子大家さん。最近は同じくらいのスペックの物件でも以前と同じくらいの価格では買えなくなってきたため、売り出し価格が1000万円以上の物件にまで検索範囲を広げて探しているそうだ。

「初めて投資をする人がいきなり1000万円の戸建を買うのは尻込みするでしょう。私自身もこれまでは1000万円以上の戸建には見向きもしてなかったんですけど、そこに目を向けるようにしたんです。あえて一般投資家が手を出しづらい価格帯を狙うことで、競争を避けて相場より安く買う狙いです」

今年購入した2軒の戸建は、いずれも売り出し価格が1000万円以上だ。

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